お正月で頭がボケそうになっている日本ですが、世界はどんどん動いています。ゴーンが逃げ帰ったレバノンもこうやってみると随分危険な国ですね。イランの出方を固唾を呑んで見守るしか無いのですが、ひょっとすると長い混乱のはじまりかもしれません。攻撃の実際についてはそのうちに情報が出るのでお伝えできると思います。
Iran has vowed revenge on the US after Trump's airstrike killed its top military commander. Here's how it could do it.
Alexandra Ma 15 minutes ago
トランプ大統領の写真を燃やす抗議者。テヘランの旧米国大使館の外で。2018年11月。 (Photo by Majid Saeedi/Getty Images)
- イランの精鋭部隊クッズ部隊Quds Forceの司令官カセム・ソレイマニがドナルド・トランプ大統領の指令で実施された空爆で死亡したと国防総省は1月2日発表した。
- イラン指導部は米国への報復を誓い、死亡した司令官を英雄扱いしている。
- イランは軍事力で米国に劣るものの、ソレイマニの指導の下で通常兵器各種を開発し、米軍に打撃を与える装備もある。
- 米国へのサイバー攻撃、テロ攻撃の他、域内の協力勢力を使い米軍基地を攻撃する可能性もある。以下、イランが実行する可能性のある攻撃内容をまとめた。
イラン指導部は米軍の空爆による損害と同等の報復を誓っている。ドナルド・トランプ大統領の命令によりイランはもっとも有能かつ広く慕われた軍指導者カセム・ソレイマニQassem Soleimaniを殺害された。
イラン外相モハマド・ジャヴェド・ザリフMohammad Javad Zarifは米国による行為を「国際テロ」と呼び、最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイAyatollah Ali Khameneiは「残酷な報復が控えている」と警告している。
今回の空爆はトランプによるイランへの宣戦布告と複数の外交専門家がとらえている。
イランに米軍と同等の軍事力はないが、ソレイマニの指導力のもとで通常兵器各種を開発しており、米軍に損害を与える可能性がある。以下考えられるイランによる報復攻撃の内容だ。
革命防衛隊カセム・ソレイマニ将軍、2016年9月テヘランにて (Office of the Iranian Supreme Leader via AP)
中東地区の米国人への攻撃
国防総省によればソレイマニは「イラク国内にとどまらず地域全般の米外交団や軍関係者を襲撃する案を積極的に進めていた」。
イランに米国民を襲撃する動機が増えたことになる。
「喫緊の課題はラク、シリア、レバノン、湾岸地区で大使館、部隊、人員の生命の安全をイ確保すること」とイスラエル駐在米大使を務めたダン・シャピロがツイッターで述べている。
バグダッド国際空港付近の道路上で燃え続ける攻撃の跡。イラク民兵組織によればロケット弾三発によるものという。2020年1月3日。 Iraqi Security Media Cell via Reuters
イスラエル、サウジアラビア、UAEへのロケット攻撃
別の対米攻撃方法に中東・湾岸地域の米及び米同盟国の部隊、軍事基地を攻撃することがある。
イランによる報復には「数波に渡るロケット攻撃をイスラエル、サウジ、またUAEに向けることがあり....域内基地に駐留する地上部隊も標的になる」と対テロ専門家デイヴィッド・キルクレンがコメントしている。キルクレンはデイヴィッド・ペトレアスCIA前長官と2007年から2008年にかけてイラク戦に関与していた。
サイバー戦、テロ攻撃、誘拐
イランによる攻撃には「非対称的かつ非通常型の攻撃をヨーロッパ、アフリカ、南アメリカや米本国で仕掛ける可能性」があるとキルクレンは見る。
考えられる形態にサイバー攻撃があり、ソレイマニ自身がその可能性を以前ほのめかしていた他、テロ襲撃、暗殺、誘拐がある。
ソレイマニに共鳴し報復したくてたまらない連中が多数ある
クッズ部隊はイランのイスラム防衛隊でも最精鋭でソレイマニは中東全域の各種戦闘員部隊を訓練して強い関係を培ってきた。
その一部が米ソレイマニ暗殺の仇を取ると早速公言している。
中東に分布するクッズ部隊の協力勢力は以下の通りである。
- イラクのシーア派戦闘員組織は2003年の米軍侵攻以来一貫して米軍と戦闘を繰り広げている。アサイブ・アール・アルハクAsaib Ahl al-Haq、カテブ・ヒズボラKataeb Hezbollah民兵組織の他、バドル組織Badr Organizationがある。
- レバノンに本拠地をおくヒズボラ民兵組織はクッズ部隊の支援を受け1980年代に発足した。同集団は数々の事件を引き起こした他、ロケット弾数万発を保有しており、米同盟国のイスラエルを容易に攻撃できる。現在のレバノン政府の要職はヒズボラが占めている。
- シーア派フーシHouthi反乱勢力がイエメンにあり、サウジ主導の有志連合が代理戦争を展開している。昨年9月にフーシはサウジアラムコの石油精製施設攻撃を実行したと主張したが、サウジアラビアと米国はイランの犯行と断定した。イランはこれを否定した。
- スンニ派の民兵組織ハマスHamasがガザ回廊に陣取っている。イランはハマスへの財政支援を2011年中止したが、実は軍事支援をその後も続けている。
ヒズボラ指導者ハッサン・ナスララHassan Nasrallahは1月3日午前の訓話でソレイマニの「道を引き継ぎ」、全世界の戦闘員に今回の攻撃の首謀者を罰するよう求めた。
なおソレイマニ襲撃でカテブ・ヒズボラ指導者のアブ・マーディ・アルムハンディスAbu Mahdi al-Muhandisも死亡したとAPが伝えている。
ソレイマニへの米軍攻撃は同人が率いる集団がバグダッドの米大使館を襲撃した直後に実行された。大使館への攻撃自体が前週のイラク、シリアへの米軍空爆でカテブ・ヒズボラの25名が死亡した事件への報復だった。
言い換えれば、イランが単独で米軍に挑戦しなくても、域内の協力勢力多数を使えばよい。
「今回の戦略的な影響は数ヶ月、数カ年にわたり残る」とシャピロ元大使はツイートした。「気を確かにし、深刻な状況に備え、我が方の人員や同盟国に必要な支援を与えるべきだ」■
ソレイマニの喪失はイランにとって大きな損失になる。ソレイマニはイランの対外戦略の先兵であり、カリスマ性のある象徴的人物あったから、イラク、シリア、レバノン等での親イランの勢力を損なう可能性がある。
返信削除現在、イランは、経済的制裁により疲弊し、昨年のイラン国内での反政府行動により1,000人を超える死者を出し、さらにイラク内の複数の領事館が襲われるなど、国内や中東での支配力が低下している。これを巻き返そうと排外的な反米行動を起こそうとしていた矢先だったようだ。米国は、イランの出鼻を挫いた形になる。
今回のイランの反米行動は、昨年のサウジ石油施設攻撃の際の米国人や民間人の人命への配慮を捨て、米国人を狙った一歩過激化した攻撃を計画していたと思われる。今回のソレイマニ殺害により、対米攻撃を行う革命防衛隊(IRGC)か、その配下の親イラン武装勢力は、さらに過激化した攻撃を行うと予想される。これにより米イラン間は極度の緊張状態となる可能性が高く、記事の様々なリスクや、もしかすると全面戦争となる可能性もある。
米国にとってイランとの長期的緊張、小競り合いの深刻化、あるいは戦争は、対テロ戦争から対中露戦略への転換を遅らせるものとなるだろう。これは中露に好都合な状態になる。よって米国は、防衛を主とする体制をとることになるだろう。
他方、イランは、国内の反政府行動の再燃や、それに伴うIRGCによる暴力的弾圧を避けたいだろう。すでに資金力は細り、親イラン武装勢力への援助も減り、この状態ではいつまでも親イラン武装勢力をつなぎ留められないかもしれない。この辺りがイランの行動限界になるだろう。