高性能ステルス戦闘機は大型化する、というのが当方の予測で、以前は重武装機構想もあったのですが、ここに来てあらためてB-21レイダー(B-2よりやや小型程度の大きさとなりそう)で空対空任務に当たらせようという構想が現実のものになりそうで、持論が実現に向かうのではと興奮しています。現実はそんなに簡単ではないようですが、ひょっとすると単座戦闘機という伝統が終わりに近づいているのかもしれませんね。
ハイテク戦略爆撃機を敵国奥深くまで侵攻させたい米国政府だがこのミッションを実施すれば敵戦闘機を撃破する性能が必要となる。
最近の報道によればB-21レイダーは空対空戦闘任務も実施になるようだ。このまま進めば、航空黎明期の空軍力理論が復活する。B-21が「バトルプレーン」として実用にたえるか、あるいは爆撃機の残存性に疑問がつく中でご都合主義から生まれた発想なのか今は判断できない。
歴史を振り返る
爆撃機に武装を与えると代償が生まれる。まず重量増のため航続距離、速力、ペイロードが犠牲となる。防御兵装から空力学的が不利となり、速度低下、操縦性悪化につながる。にもかかわらず各国の空軍部隊は爆撃機に武装を与えてきた。第一次大戦でロンドンを恐怖に陥れたゴータ爆撃機には試験的に各種武装がつき、英軍戦闘機からの防御を目指した。大きな展開となったのはマーティンB-10で機関銃座3箇所がつき、B-10編隊は理論上は敵機を排除できるはずだった。
大戦間に米国、英国では重武装爆撃機が編隊を組めば敵機の迎撃を排除できるとの理論が生まれた。爆撃機編隊が目標地点に到達し、爆弾を投下しつつ防衛側の戦闘機を消耗させる二重の効果があるとの主張だった。
米空軍はドイツ空襲の初期段階で理論を試したが結果はとても良好と言えなかった。ドイツ戦闘機の高速性能と操縦性と対空砲が加わり、編隊はばらばらにされ単機で狩られていった。さらに爆撃機搭載の機関銃ではドイツ戦闘機の撃退に不十分と判明した。ドイツ機は20ミリ機関砲で遠方から米機を狙った。米空軍はついに援護なしでの昼間空爆を断念し、長距離援護戦闘機のP-51マスタングを随行させた。
衰退
戦後まもなくの爆撃機はまだ自機防御装備を維持していた。B-36ピースメイカーは尾部に20mm機関砲を搭載し、B-47やB-52も同様だった。米空軍はB-36を母機とし防衛用戦闘機を運用する実験もした。だがジェット時代に防御兵装は無意味となった。B-58ハスラーは非武装でXB-70ヴァルキリーも同様だった。迎撃機が銃による攻撃をミサイルに切り替えると、機関銃の効力はなくなり、速力で自機を守るしかなくなったが、SAMから逃げられないと判明した。対戦闘機用に防御兵器を搭載した最後がB-52で20ミリヴァルカン砲を尾部に搭載した。真偽は分かれるが、ヴィエトナム人民軍空軍のMiG-21を2機、ラインバッカーII作戦中に撃墜したとされ、ヴィエトナムによれば1972年にも別のMiGがB-52の機関砲で撃墜されたという。
構想の再誕生
一時はB-1Bに空対空ミサイルを搭載する構想が真剣に検討された。ただしミサイル誘導用のレーダーシステムが不明だった。同様にB-1Bをミサイルトラックに転用する案もあり、「重武装機」としてミサイル多数を搭載しつつ、他機のセンサーを利用する構想だった。B-1Bは高速かつ大ペイロードのため、最適の機材だった。ただし当然ながら空軍は無人機なら同じ任務を人命を犠牲にせず実施できると考えた。
B-21を空対空戦に最適化する構想は理にかなっている。B-21ほどの大型機なら空対空ミサイル多数を搭載可能で、しかもステルス性能を保持できる。強力なセンサーで空の戦場の様相をは把握しながら戦闘機にも指揮統制機にもなれる。爆撃機はステルスを重視し速力を犠牲にする傾向が出てきた。反対に戦闘機は今も速度重視で運用されている。ミサイル発射でステルス効果が減るのはミサイルが探知されるからだ。ミサイル発射が探知された場合、戦闘機は全速力で退避行動に移る。B-21ではこれまでと異なる戦術を採用するか、敵戦闘機では対応不可能な地点で超長距離ミサイルを発射すればよい。
まとめ
爆撃機を戦闘機任務につける構想が生まれた背景に関連課題がある。米空軍は深度侵攻任務をステルス機に任せていいのかまだ決めかねている。まず実施の難易度があり、ステルス機でも大型機はまったく不可視にはできない。またセンサー技術の向上もある。このため自機防御能力をもたせることに一定の訴求力がある。さらに戦闘機の機体価格が劇的に上昇しており、爆撃機で防御側に損傷を与えられれば効果が高くなる。最後に新型機での「要求性能の変化」は大規模調達事業では不可避といってよい。つまり性能やミッションで過大なまでの公約がよく生まれる。B-21が実際に敵戦闘機を撃墜できるかは未解決の疑問だ。実現すれば1972年以来久しぶりに敵戦闘機が狩られる立場に変わる。■
Robert Farley, a frequent contributor to The National Interest, is a Visiting Professor at the United States Army War College. The views expressed are those of the author and do not necessarily reflect the official policy or position of the Department of the Army, Department of Defense, or the U.S. Government. This first appeared earlier in 2019.
この記事は以下を参考にしました。
What If the New B-21 Stealth Bomber Could Also Fight Other Aircraft?
A battle plane could be born.
January 25, 2020 Topic: Security Region: Americas Blog Brand: The Buzz Tags: B-21B-2Stealth BomberStealth FighterBattleplaneAir-to-Air Missiles
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。