先日の米軍基地へのミサイル攻撃で死傷者が皆無だったのはイランの巧妙な作戦の結果...との見方です。イランが技術的に遅れていると先入観を持つと実態が見にくくなります。デュアルテクノロジーで今までとは異なる軍事作戦を見せつけられる事態がこれから増えるのでしょうか。
イランがイラク国内の米軍基地数カ所を攻撃したが米軍関係者に死傷者がでなかったのは偶然ではない。
イラン軍装備の性能不足や運用が未熟だったから死傷者が出なかったと考えたら大間違いだ。事実は反対である。イラン軍司令官は死者を出さなかったのは意図的と述べており、政策決定層はこの発言を信じるべきだ。
カセム・ソレイマニ司令を殺害した米国へのイランからの初の報復攻撃となったが、その意味を理解するには昨年9月のサウジアラビア石油施設への攻撃を思い起こす必要がある。
イランはサウジ王国最大の国営石油精製施設へ無人機多数、巡航ミサイルを投入した。
この作戦は奇襲攻撃の長距離作戦となった。「復旧が困難な高価値設備」を狙った背景に巧妙な調整と二種類の装備の同時運用が注目される。
サウジを攻撃したイランの行為から軍事立案部門はあらたな視点を得た。元UAE空軍司令官ハレド少将によればイラン初の精密大量投入攻撃は同国が実施してきた新兵器の長距離運用実験の成果が現れた格好だという。更に重要なのは非対称戦闘の考え方だ。
同少将はイランの標的設定が極めて精密だったことに注目している。さらに興味を呼ぶのは暗号が使われていないことだ。各国は民生技術でGPSをさらに正確に運用しており、誤差はセンチメートル単位に向上している。「サウジでイランが加えた攻撃がまさしくこの例だ」(ハレド少将)
だが精密度だけでなくイランの狙ったサウジ標的の高さも注目される。イランがどこでも狙えるだけでなく、いかなる高さの標的にも照準を合わせられるということだ。
新しい時代には新しい体制の防衛が必要とハレド少将は述べている。単純な対策では不十分となり、一正面作戦では足りないという。戦場は今や360度で多数の国を一度に巻き込む。同盟国や協力国との共同作戦体制では不十分だ。安全に情報を共有する体制が必要だ。
イランのイラク内米軍基地攻撃で米軍関係者に死傷者が出なかったことでトランプ大統領や安全保障チームに「安堵の反応」があったとウォール・ストリート・ジャーナルは伝えた。死傷者がでなかったことはありがたいが、イランの軍事力の成長ぶりに目をつぶってはならない。■
この記事は以下を参考にしました。
It Wasn't Luck That No U.S. Soldiers Were Killed In Iran's Strikes On Iraq
It was intended.
ミサイル攻撃が予測されたら航法衛星の電波は妨害されミサイルの精度は落ちると言われていましたが結局そんな事が起きなかった点には注目したいです。
返信削除イランのミサイル発射は、革命防衛隊(IRGC)が行ったと言われており、その精度は非常に高いようだ。米軍のミサイル迎撃は、無かったか、有効でなかった。また、攻撃の対象は通常ならば米兵が作業する施設を狙っているように見える。これらのことはいくつかのことを示唆する。
返信削除① ミサイルは恐らくGPS誘導である
② 米軍基地の施設、及び米兵の作業パターンを把握している
③ 米軍の迎撃能力を事前に評価している
結論として、IRGCは、米軍の施設と人員殺傷を目的としていたと考えるべきなのであろう。
米軍は、衛星などによるイランの監視によりミサイル発射の兆候を見つけ、攻撃時の防衛策を準備していた。その結果、幸運にも死者はでなかった、ということあり、イランが死傷者を出さないように配慮したものではない。
直前に間接的に攻撃を通告したとの情報があるが、これはイラン政府が行った可能性があるが、これは米軍との紛争の拡大を恐れるハメネイの指示によるものであろう。
ミサイル攻撃やウクライナ機撃墜よりも重要なことは、ソレイマニ殺害後のどさくさに紛れイランが核開発をさらに一歩進めたことである。もしかすると年内に核兵器級のウラン濃縮を行い、近い将来、核兵器を取得する可能性が一段と高くなったことである。これはソレイマニ殺害よりも深刻な危機を生むだろう。
それにしてもイランの核兵器開発の経緯は、北朝鮮と手口が似ている。イランと北朝鮮は「北京ブロック」のメンバーであり、いずれも中国の関与が無ければ核兵器開発を達成できない。中国は、経済戦争で米国に追い込まれており、交渉を有利にするため、また、米国の中露主敵の戦略転換を遅らせるため、これらの国に対する核兵器、及びその運搬手段の支援を強めることになるだろう。