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オーストラリアもF-35B運用のため揚陸艦を空母に改装すべきか

中国、ロシア、北朝鮮、イランといった勢力に対抗する自由と民主主義を信奉する各国の対立が鮮明となる中、日本にとってオーストラリアは米国と並んで重要なパートナーとなってきました。今回は日本の「空母」が同国にどんな影響を与えるのかの考察です。

Should Australia Follow Japan and Take the F-35 to Sea? 

日本にならってオーストラリアもF-35を海上で運用すべきか。

Or is this a bad idea? それともまずい選択になるのか。
January 23, 2019  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: AustraliaJapanF-35NavyAircraft Carrier
本が短距離離陸垂直着陸型F-35Bをいずも級に配備し同艦建造時点から出ていたとおりに小型空母へ改装を決定した。対象はJSいずも、JSかがの二艦でF-35Bは空中給油能力を付与せず短距離運用に限られる。
十数機程度の配備では通常の空母航空戦力としては規模が小さいが琉球諸島さらに尖閣諸島の防衛には寄与できそうだ。
ただし日本は「空母」を中国の接近阻止領域拒否圏内に前進させることは及び腰だろう。中国のA2/AD圏がグアムに届くまで拡大している中ではこれは問題となる。中国はDF-26対艦弾道ミサイルや潜水艦発射巡航ミサイルのほか長距離空軍力を整備している。
日本さらに米国にも課題となるのは厳しい環境の中で空母が生き残れるかどうかだ。同じことはオーストラリアにもあてはまり、F-35Bを同国のキャンベラ級ドック型揚陸ヘリコプター艦(LHD)に搭載すべきか。
LHD艦からのF-35B運用構想は2014年にASPI や The Strategist が提起し、2016年度国防白書が取り上げた。次回の白書は2020年刊行予定で、それまでに日本の新方針が刺激となりオーストラリア国内で議論を呼ぶのは必至だ。今回はオーストラリアが日本の後を追うべきか考えてみたい。
議論の背景にオーストラリア防衛軍(ADF)の装備を整備し陸上運営航空力の範囲外へ兵力投射ならびに遠征部隊支援を進めるべきかとの問題提起がある。オーストラリアの有するHMASキャンベラ、アデレイドの二艦は退役ずみ空母HMASメルボルン(中国へ売却され浮かぶカジノに改装)より大きく、ともにスキージャンプを設置済みだ。通常型F-35A調達が先行しているが、F-35Bも28機程度調達しLHD二艦で運用すればAIR 6000構想の2C段階が実現する。
F-35Bで確かに作戦上の利点を生まれる。LHDから小規模飛行隊を運用すれば限定的とはいえ遠征統合任務部隊に航空支援を提供し、艦隊防空、近接校区支援、情報収集監視偵察任務も実行できる。
F-35に代表される第5世代戦闘機の大切な機能はステルスモードと「システムのシステム」ネットワークだ。F-35Bにより防御側のネットワークに「協調型交戦能力」が加わり、オーストラリアのホーバート級駆逐艦、ハンター級次期フリゲートは残存性を高めつつ戦闘能力を高めることができよう。
またF-35Bの運用国、米・英・日の各国ならびにF-35Cを飛ばす米海軍への支援も可能となる。
ただF-35B運用はオーストラリアにも課題となる。キャンベラ、アデレードの両艦をそのまま同機運用に改装する可能性は低い。というのは予算と工期の一方で両艦の揚陸力が減るためだ。2014年時点の専門家報告書ではLHD改装費用を5億ドルと積算し、飛行甲板の耐熱強化などを盛り込んでいた。
報告書は以下問題提起していた。
STOVL機の搭載は可能だがLHDはそもそも多用途揚陸艦であり空母として最初から想定しておらずヘリコプター、揚陸部隊、車両装備とSTOVL機ならびに支援機材を同時搭載は不可能だ。「STOVL限定」にしてもLHDで課題が残る。F-35Bのソーティー数を継続維持し敵戦力の前に十分な防御が実現できるだろうか。
LHDで12機ないし16機を搭載できるが、全機が同時に発進することはない。STOVL機の設計上の制約からF-35各型の中で「B」が速力、航続距離、兵装ペイロードの各面の性能が劣る。
性能面の制約は通常の空母航空作戦では大きな不利になるがF-35BとLHDの運用は別の側面から考えるべきだろう。F-35のデータ統合ネットワーク機能で自軍に有利な状況が生まれる。第5世代機の運用はRAAFに限るべきでなく、海軍でもネットワーク機能向上は大きな効果を生むはずだ。
F-35B搭載のLHDを水上艦で防御する必要があるのは明白だ。多国籍軍部隊の一員としてオーストラリは同盟国海軍部隊とLHDを防御するはずだが、オーストラリアが域内紛争に単独で関与するシナリオもありうる。その場合はLHD防御に艦艇をさく必要が生まれホーバート級駆逐艦(3隻)やハンター級次期フリゲート艦(9隻)を配備するだろう。
F-35BでLHD護衛部隊の戦力を引き上げるのは興味深い課題でこれ自体で別途検討が必要だ。F-35BをE-7Aウェッジテール他無人機と組み合わせて戦力増強効果が期待でき、ISR機材や情報ネットワークとも効果が上がる可能性が高い。さらに無人機をLHDに搭載すれば興味を引く選択となろう。
現時点の戦略見通しは2016年版国防白書の内容より遥かに危険な状況だ。このためオーストラリアの戦力整備と国防予算支出規模で見直しが必要だ。GDP比2%支出を2016年白書は選択肢のひとつにとりあげていたが今こそこれを実施すべきであり、場合によっては規模拡大も求められそうだ。
予算追加が実現すれば2016年時点の想定を上回る大規模海軍力が整備できる。LHD三番艦の建造も道が開け、護衛艦艇を増強する選択肢も今後の戦力整備計画で出るはずだ。
F-35B導入の検討では、オーストラリアは危険度を増す戦略環境の中で敵対勢力戦力が急速に伸びている現実を日本や米国同様に認識すべきだ。そうなると中国やロシアのA2/ADの中で西側各国の空母が生き残れるのかという質問に戻る。■

Malcolm Davis is a senior analyst at ASPI. This first appeared at ASPI's The Stratgist here.

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