スキップしてメイン コンテンツに移動

シンガポールがF-35導入に近づいている理由とは

Singapore Moves Closer To Joining What China Calls The 'U.S. F-35 Friends Circle' シンガポールが中国が言うところの「米F-35お友達サークル」加入に近づく

The short and vertical takeoff and landing F-35B could be especially valuable for the tiny Southeast Asian country during a crisis. F-35Bが東南アジアの小国であるシンガポールの有事で役立つのではないか


BY JOSEPH TREVITHICKJANUARY 18, 2019

F-35 Heritage Flight Team performs in Bell Fort Worth Alliance AirShowAIRMAN 1ST CLASS ALEXANDER COOK—56TH FIGHTER WING PUBLIC AFFAIRS
ンガポール国防省が現行のF-16C/D型の後継機種としてF-35ステルス戦闘機を正式に検討中と発表した。特に垂直離着陸が可能なF-35Bが同国に意味があり滑走路に依存せず運用でき、今後同国が取得予定の大型揚陸艦からも稼働させられる。ときあたかも南シナ海で中国がこれまでより大胆な動きを示し領有権を主張している。
シンガポール共和国空軍 (RSAF) が国防科学技術庁 (DSTA) と行った調査でF-35共用打撃戦闘機(JSF)がF-16C/Dの後継機種として「最適」と判明したと国防省が1月18日に発表した。シンガポールにはヴァイパーが60機ほどあり更新は2030年ごろに必要となるという。
「ただし技術評価からRSAFは少数のF-35を導入し完全評価を性能、維持でしてから全機導入するのが望ましいとの結論が出た」と声明は述べており、「次の段階でMINDFE(国防省)は米側と詳細を協議してからF-35をシンガポール国防装備として調達する決定を下したい」
簡単な発表内容で導入対象の型式は不明だ。米国はF-35のシンガポール向け販売をまだ未承認で、型式とか機数は今後判明するだろう。
米政府は反対しないだろう。シンガポールは2003年以来いわゆる安全保障協力参加国としてF-35事業に関与している。さらに米シ両国は長年に渡り防衛協力関係を維持し、シンガポールは米製戦闘航空機、ヘリコプター他装備を大量導入している。
米国がシンガポールと連携を強めているのは中国が南シナ海で領有権主張を強めその立場を強化する動きを示しているためだ。シンガポールは領有を主張しておらずあくまでも地域間、国際間の仕組みを通じた解決を求めてきた。

DOD
南シナ海で中国が構築した人工島の場所を示す地図


だがシンガポールがF-35に改めて関心を示す背景に南シナ海更に中国の存在を無視できない。シンガポールは海運交易に大きく依存する。近隣海域のマラッカ海峡など危機状態になれば簡単に封鎖されてもおかしくない地点が多い。
「直接の関与国以外も平和安定、航行の自由、上空飛行の自由が南シナ海で守られることに大きく依存している」とシンガポール外相ヴィヴィアン・バァクリシュナンが2018年8月に記者会見で語っている。「対立がなくても、緊張が高まれば船舶経費、保険料が上がるので各国の経済面へ影響が現れる」
中国は接近阻止領域拒否体制を南シナ海で強化中だ。人工島に長距離地対空ミサイルや対艦ミサイルを設置すれば有事の際に敵対勢力には大きな脅威になる。
中国はH-6中型爆撃機初め航空機を人工島から運用し誇示しており、兵力投射の新しい可能性を試している。人民解放軍海軍の水上艦、潜水艦の着実な増強は言うまでもない。
こうした中でステルス戦闘機が域内各国で必需品となりそうだ。F-35の有する脅威の前に中国はJSF運用国のオーストラリア、韓国、日本を「米国のF-35お友達サークル」と呼んでいる。
そのため同機の性能評価をしたのは米国との関係を考えればシンガポールとして当然である。同時に「買う前に飛ばしてみる」対応からシンガポールが時間かけて結論を出す動きが見える。シンガポール空軍のF-13C/Dはブロック52または52+仕様の高性能機材であり改修も相当受けている。さらにF-16V仕様に改修しようとしており、2030年時点でも十分戦力を発揮できるはずだ。

RAF-YYC/WIKICOMMONS
シンガポールのF-16Dが米国内で訓練を受けていた

RSAFはF-16をF-35に交替させる検討に入っているが、F-15SGイーグルは当面退役の予定はない。米空軍のF-15Eストライクイーグルの派生型である。
F-35とF-15SGの組み合わせ、あるいは高性能版F-15との組み合わせでステルス機の運用整備経費を抑えることができるはずだ。同時に同時運用で各機の特徴を活かした効果が期待できる。

USAF
RSAFの F-15SG イーグル.

F-15はF-35を上回るペイロードと航続距離を誇るが、有事にはステルス機が敵防空網に突破口を開き、非ステルス機がミッションを展開する構想だ。JSFはセンサー能力とデータリンクを生かして標的情報を後方のイーグルに送り、スタンドオフ兵器で攻撃させる。
イスラエルがこの戦術で進んでおり、米空軍も高性能版のF-15X少数機を導入するようだ。
さらにF-35Bが入るとシンガポールに重要な利点が生まれる。同国の面積は280平方マイルとロードアイランド州の4倍に過ぎず通常型機だと敵攻撃に脆弱性を露呈してしまう。
F-35Bなら補強道路や小型コンクリート敷地で運用できる。滑走路を使わずに運用できるため攻撃があっても同機なら比較的早く作戦再開できる。
2018年7月にはシンガポールのゥ・エン・ヘン国防相からエンデュランス級ドック型揚陸艦4隻を新型共用多任務艦(JMMS)に2020年以降に交替させるとの発表があった。
JMMS候補の最右翼はエンデュランス-160および-170設計案であり、シンガポールのSTマリーンが作成した。全長は540フィートで予想排水量は14,500トンだ。
最も重要なのは新型艦では飛行甲板が全長に渡り使えることで、想像図では中型ヘリコプター5機の駐機スペースだが、限定的とはいえF-35Bの運用も可能になりそうだ

ST MARINE
エンデュランス160の想像図

STマリーンではさらに大型艦の設計案もありステルス戦闘機運用に最適とする。韓国もF-35を独島級強襲揚陸艦で運用を検討しているが、エンデュランス-160/-170より全長で100フィート長く、排水量が4,000トン多いに過ぎない。
F-35の最適選択、機数の決定がシンガポールのJSF評価第一段階で重要だが、中国が南シナ海で一層動きを強める中で事態は緊急度を高めており、RSAF標識をつけたステルス機が十年以内に飛行してもおかしくないと言える。■

Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...