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KC-46の米空軍引き渡しは始まったが、完全運用はまだ先の話か。前途多難な同機は日本も導入予定

USAF Finally Accepts Its First KC-46A Tanker, But The Design Still Needs Years Worth Of Fixes

KC-46Aの米空軍引き渡しが始まったが手直し多数が残る

Boeing will begin delivering the aircraft soon, but persistent issues with the refueling system will limit their operational utility in the near-term. 給油系統で問題が散発しており当面は機能が制限されそうだ。

BY JOSEPH TREVITHICKJANUARY 10, 2019

USAF
空軍がボーイングKC-46Aペガサス初号機を受領し、トラブル続きの同機事業で大きな一歩となった。だが初期生産分には深刻な問題が残ったままだ。遠隔視認機能や給油用ブームの作動だ。このため機材は今後も完全作戦能力の獲得まで数年掛かりそうだ。
Foreign Policy が空軍とボーイングが取り交わした合意内容について最初に報道し、初号機の引き渡しを2019年1月10日と伝えた。Defense News はボーイングが未解決の欠陥で改修を行うこととし、空軍には初回バッチ52機全機で進展が見られなければ最高15億ドルの支払いを停止することで合意したと伝えている。
ボーイングによれば初号機に続き4機が22空中給油団のあるカンザス州マッコーネル空軍基地に最短で2019年2月に納入される。その後別の4機が97空輸航空団のあるオクラホマ州アルタス空軍基地に届けられる。
KC-46A納入ははじまったが、ボーイングがKC-X競作に勝ち契約を交付された2011年から遅延や問題発生が度々続いた。契約の背景に複雑な事情があった。2004年に空軍で調達トップを務めたボーイング幹部ダリーン・ドゥルヤンが給油機選定での汚職の廉で連邦刑務所での実刑判決を受けた。
本来ならKC-46Aの最初の18機を2017年末までに受領し、直後に初期作戦能力獲得の予定だった。2011年から2017年にかけ技術問題が連続し、日程は何度も延期されたまま2018年に突入し、空軍とボーイングの間の口喧嘩につながった。ボーイングが交付された契約は固定価格制のため同社は30億ドルを自社資金で投入しコスト超過分を補っている。
ボーイングは一号機を2018年12月中に納入できると見ていたが、ジェイムズ・マティス国防長官の辞任に伴い延期されたとの報道がある。長官代行パトリック・シャナハンは元ボーイング社役員であり同社関連の取引へ関与ができない。このためペンタゴンは空軍の企画の承認に時間がかかった。

Embedded video
.@USAirForce accepts Boeing's first #KC46 Pegasus next-gen tanker. Next stop for the world’s newest tanker: @22ARW #TeamMcConnell.
だが事態を簡単に収拾できなかった。前述のように同社は2017年中にまず18機を納入するはずだったが今のままでは今年いっぱいかけてもこの機数に達するか不明だ。
受領機材でも未解決問題が残り、空軍ボーイングともに解決には三ないし四年かかると見ている。まず機体後部の給油ブームの問題だ。
被給油機は給油機のブーム末端のブローブを自機の燃料受け入れ口に挿入する必要がある。被給油機が十分な推力を出さないと連結がうまくできず給油中に接続に失敗する危険が生まれる。
KC-46AのブームはDefense Newsによれば1,400ポンド推力に耐えるとある。これはA-10対地攻撃機含む米軍用機の最大許容値より高い。
どうも空軍は当初契約でこれより低い耐推力を指定しておらず今になってボーイングに設計変更を求めているようだ。このため新規要求内容だが空軍は同社へ追加予算を固定価格契約外で認めている。
このことはプローブ部分が被給油機を損傷する事案が発生したためボーイングにブーム関連のソフトウェア改修を自社費用で行わせてきた空軍としては大きな譲歩だ。両者はブーム再設計の経費積算で交渉中だが完了には二年かかると見ている。
もっと深刻な問題がペガサスが搭載する遠隔視認装置RVSである。KC-135やKC-10では操作員が機体後部席でブーム操作をするが、KC-46Aでは操縦席から遠隔操作で行い、映像は二次元、三次元画像を組合せて電子光学、熱映像の双方のカメラを後部から中継している。
「RVSの画像と実際の操作にわずかなずれがある」と空軍はDefense Newsに語っていた。画像に圧縮と湾曲効果が生まれているようだ。

BOEING
被給油機からKC-46Aを見るとこうなる

陰影他の要素によりブーム操作員は機体後部で何が起こっているのか把握できなくなり、ブーム操作を誤り結果としてブームに過剰な負担を与えたり、被給油機に損傷を与えるリスクが発生する。さらに操作員が目の疲労、頭痛、めまいを訴える危険を指摘する研究報告もあり、長期間操作で視力に問題が生まれ、操作員に問題が生まれないかと懸念する向きがある。
ボーイングは機体引き渡しに際しRVSの完全補修を約束し、ハードウェア、ソフトウェア両面での手直しを再度自社費用で行う。空軍は代替装備の実現は三年ないし四年かかると見ており、各機の改善作業がいつ終わるか見通せない。
その他にもボーイングが対応を迫られる改修課題があるが、解決がどこまで可能か不明だ。その一つにブームが被給油機に接触する事例があり、F-22ラプターやF-35共用打撃戦闘機のようなステルス機で深刻な問題だ。
.レーダー吸収剤を施した機体表面が損傷を受ければステルス性能に影響が出る。また非ステルス機たるKC-46がステルス機の有人、無人機をハイエンド戦で給油できるのかとの疑問も生まれている。

BOEING
KC-46Aがブームを完全に伸ばしている

こうした重要問題が未解決のまま、新型機がどこまで有効に機能するのか見通せない。ペガサス乗員の訓練で給油技術の熟達に一定の効果は期待できようが、訓練がどこまで実効性があるのか、特にブーム操作の効果がわからない。今後議論を呼びそうだ。
ペガサスは今年中に初期運行テスト評価 (IOT&E) を受け、空軍はその後初期作戦能力獲得を宣言する予定だ。だが上記の問題が残ったままでITO&Eの要求基準に合致できるか不明だ。このためKC-46運用には制限が付き、問題が完全に解決される数年先までは空軍が初期作戦能力獲得を宣言しようが状況は変わらない。
しかしなんといっても空軍が旧型給油機の退役を計画する中でペガサスの二次発注の行方が一番の問題で、既存機体で改修しながら何機の追加発注になるか、空軍が別の選択肢に向かうかが注目される。空軍はKC-46は180機程度の規模を維持し、今後の空軍力整備に役立てたいとしている。
そうなるとKC-46初号機納入には大きな意義があるものの、空軍とボーイングにとっては同型機が完全に能力を発揮するまでには課題が残ったままだとわかる。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

コメント ボーイングはこうなるとは想定していなかったのでは。自社負担が30億ドルで後付改修で更にこれが増えて、しかも二次発注がなければ泣きっ面に蜂です。今のところ同機導入の表明は日本だけですから、同社も日本からどれだけ費用回収できるかを計算するはずで、日本には高い買い物になりそうな予感です。日本とイタリア向けのKC-767でも遠隔操作など同じ発想の装備ではないのでしょうか。KC-767でこんな問題の情報はないので装備自体が違うようですね。それにしても航空自衛隊にKC-767が4機のみとは明らかに不足ですが、日本向けKC-46の納入はずいぶん先になりそうです

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