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東シナ海が今や最重要活動空域になった航空自衛隊の現状と展望をRANDが分析しています

米空軍の委託研究でRANDが航空自衛隊の現況に特化した形で南西諸島部分における中国航空活動の強化に対応している現状を分析し、今後の対応策を説明する報告書を昨年末に発表しました。以下そのダイジェストです。このブログをご覧の皆さんには周知の事実かもしれませんが、米国でも共通の認識をしてもらえるのは助かりますね。また日本の一般国民にも認知してもらいたい事実です。航空自衛隊には毎日大変な仕事ですが、ストレスに負けず精進していただき、国民も支援していきたいところです。

China's Military Activities in the East China Sea
Implications for Japan's Air Self-Defense Force
東シナ海での中国軍事活動は航空自衛隊にどんな影響を与えているか

by Edmund J. Burke, Timothy R. Heath, Jeffrey W. Hornung, Logan Ma, Lyle J. Morris, Michael S. Chase
Related Topics: Air Defense, Aviation Maintenance, China, Fighter Aircraft, Japan, Military Strategy

長年に渡る日中間のライバル関係がここにきて激しさを増しているのは両国で国力の差が縮まってきたためだ。両国間のせめぎあいは政治・経済・安全保障の各分野に及ぶが尖閣諸島を巡る対立が焦点なのは間違いない。本報告書の著者は中国が日本周辺で海空戦力をどこまで増強しているか、特に尖閣諸島近辺での動きを分析した。また中国艦船航空機の動きに対する日本の対応も分析。結論として戦闘機の数的制約により航空自衛隊が中国航空活動に十分対応できていないことがわかった。中国が戦闘機数で優位にあるため、日本は現状を維持できなくなる。著者は提言として今後発生する課題への米国と日本による対応策の道筋を示した。

主な所見
中国と日本で日本近辺ので軍用機同士の遭遇が劇的に増えている。
  • .中国軍用機の尖閣宮古両諸島近辺での飛行が増えており、中国の戦略として第一列島線を突破する飛行経路として重要視しているのがわかる
  • 活動が増加しているため日本も装備の配備調達を加速化し中国のプレゼンス増加に対応しつつ日本領空の防御に追われている。

中国の航空活動強化への対抗策として日本にとって最良の道は防衛力増強である。
  • 日本政府は島しょ部防衛で航空自衛隊の能力向上に向けた装備調達とともに防衛的な姿勢堅持を重視してきた。
  • また海上保安庁(JCG)予算を増額し尖閣諸島を意識した巡視活動を確立した。

中国の航空活動に常時対応するため薄く広がらざるを得ない航空自衛隊にさらにストレスがかかっている。
  • 運用テンポの早まりで整備保守が悪化しており、機体点検や整備の回数が増えているのが原因だ。
  • 航空自衛隊パイロットが現実状況で経験を増やすのは結構だが、日本領空侵犯が増えているためパイロット養成にも悪影響も出ており、訓練に専念できない状況が生まれている。

提言

  • 日米両国は中国軍用機が日本周辺で突如として大規模活動を展開する想定にも迅速かつ効果的に対応できるよう知見を交換しておくべきだ。
  • 両国は米軍の展開再検討に際し、日本が南西部に機材を優先配備することをあらかじめ認識すべきだ。
  • .米側からは冷戦期に状況の変化に呼応してスクランブル方式をどう変えていったかの経験を共有できる。
  • 米国は既存及び今後予定される地上配備防空装備により中国の領空侵犯に対応をある程度可能とする訓練を日本と行うべきだ。

.日本にはその他諸国とも各分野で協調して中国の領空侵犯への対抗策を模索する可能性がある。■

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