Hypersonic Weapons are No Game-Changer
Hypersonic weapon systems are coming. That is a fact. But these new weapons will not change the fundamentals of strategy, the long-term logic of defense planning or military capability development.
極超音速兵器は戦闘の様相を一変させる存在ではない
極超音速兵器が実用化に向かうのは確かでも防衛、軍事力整備両面の戦略が本質的に変化することはない。
by Jyri Raitasalo
January 5, 2019 Topic: Security Blog Brand: The Buzz Tags: HypersonicHypersonic MissilesU.S. StrategyRussiaU.S. Armed Forces
https://nationalinterest.org/blog/buzz/hypersonic-weapons-are-no-game-changer-40632
極超音速兵器についてロシアや中国の先行配備で米国及び西側が弱体になるとの論調が大半だ。この論法だと極超音速ミサイルに有効な防衛対策はなく、極超音速滑空体 Hypersonic Glide Vehicles (HGV)が注目を集めている。米戦略軍司令官ジョン・ホイテン大将は上院軍事委員会で2018年3月に「このような装備へ対抗措置はない」と述べた。ロシアや中国の極超音速兵器の脅威を煽り立てる西側の論法だと米国は数ヶ月あるいは数カ年のうちに無防備になり、最短でも10年この状態が続くという。
極超音速兵器を巡る騒動を前に、どこか見覚えがあるという方もあるだろう。.軍事革命 (RMA)がその例だ。戦場につきものの不確定さを取り除く発想だった。国防関連用語で複雑な安全保障環境中の脅の理解がかえって難しくなる事が多い。だが新兵器の出現で防衛関連戦略の基本が一夜にして変わることはない。
極超音速兵器が革命的装備にならない理由がいくつかある。まず米国の軍事力は他国に劣らず数年どころか数十年にわたり変わらない。極超音速兵器の脅威に極超音速で対応する必要はない。米国には多様な軍事対応策に必要な資源がありロシアや中国に仮に数ヶ月遅れても対応策を生むはずだ。さらに防衛手段が存在しない兵器があると考えること自体が不自然だ。米国が世界のリーダーでありいつの時代も全分野で強いと考えること自体が傲慢である。
敵国に全面的な強みを維持するのを基本にすると一国の戦略は必然的に失敗する。ジョン・ルイス・ガディス が雄弁を誇るように戦略にはバランスが必要で無限と言ってよい目標を限定された材料で希求することを意味する。軍事装備品すべてで優越性を求めると結果は悲惨だ。軍事計画立案部門および政策決定層がこのことに早く気づけば結果は良くなる。達成不可能な目標に力を注ぐとこれは不可能だ。つぎはぎだらけの敵に完全無欠な軍事力で対応するのは「無法国家」からほぼ同程度の実力を有する大国を相手にするのと同じだ。
次にこちらも極超音速兵器で対抗する想定が多いが、敵に対応して極超音速兵器を配備すれば効果は減る。軍事力開発は長期にわたる事業である。今日の戦闘の主役は過去半世紀に開発された装備である。ロシア、中国も国防における長期性の制約から逃れられない。ロシアや中国が極超音速兵器開発で進展を示しても自動的に大量展開できるわけではない。いかなる国家も一年間で更新できるのは全軍事力の2-3%だ。歴史や軍事装備開発のこれまでの実績は防衛にもあてはまる。防衛部門で革命的な変化を平気で口にするものはいるがUターンや迅速な変化はありえない。
最後に抑止戦略だ。これは現実の戦闘能力を基本にしないと成立しないが、敵側が「極超音速の利点」で米国に差をつけるのを防止する抑止効果を過小評価してはならない。米国に対して極超音速兵器を投入すると脅かし自らの首を締める国があると想像するのは非現実的だ。ほぼ全地球的に兵力を展開する米国を脅迫しながら安泰でいられると考える国はない。
極超音速兵器の実用化が近づいているのは事実だ。だが長期にわたる国防の計画立案の本質を一変するものではない。極超音速ミサイルが登場しても最強兵器としてロシアや中国が戦場で米国より優位に立つことはない。まして極超音速ミサイルで米国がグローバル軍事大国の座から追い出されることはない。
逆に言えば米国が極超音速兵器を開発配備してもロシア、中国が自由世界の秩序や米国に対し強める圧力が消えるわけではない。新技術や新兵器は重要だが、そこまでの重要性はない。極超音速兵器レースに恐れおののくかわりに国防の本質を正しく理解すべきだ。冷戦後は対戦闘員戦が長く続いているが、米国あるいは欧州の各軍は従来型装備の大規模攻勢に対抗できるだろうか。■
本稿の著者ジリル・ライタサロ中佐はフィンランド国防大学の戦史研究の教官。本稿は著者個人の所見である。
この記事の主張は、安全保障について冷静で健全な考えを示していると思う。
返信削除極超音速兵器は当然のことながら核兵器を搭載するだろう。つまりロシアの核戦略の一環として考えるべきである。また、極超音速兵器の対抗手段はかなり高価なものになる。ロシアの極超音速兵器の期待効果は、核戦略の強化と、米国の膨大な迎撃手段の出費であろう。
ロシアの核戦略は、極超音速兵器により強化されるのであろうか。
以下は私見だが、ロシアの既存の戦略核兵器運搬手段、ICBM、SLBM搭載原潜、戦略爆撃機は、一部は更新されているが、全般的には老朽化している。保有核兵器もかなりの部分は使用不能でないかと推定する。他方、米国の迎撃手段等の発展はロシアの核戦略の陳腐化を促進させている。ロシアは、高価な核兵器の維持や戦略核兵器運搬手段の近代化に多くの費用を費やせない。ロシアの核戦略は、停滞する国力と韓国並みのGDPでは過大な負担であり、ロシアの核戦力は縮小するしかないのだ。
この状況を改善しようと極超音速兵器は生み出されたのだろう。この兵器が本当に有効かどうか見極めるのはこれからだ。