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海上自衛隊のJSいずもが米水上行動群とともに南シナ海を航行中U.S. NAVY (BYRON C. LINDER)
Japan’s Refitted Izumo-class Ship Is Still a Defensive Platform
改装してもいずも級は防御装備であることに変わりない
By Admiral Dennis C. Blair and Captain Christopher Rodeman, U.S. Navy (Retired)
March 2019
Proceedings
Vol. 145/3/1,393
ARTICLE
新しい日本の防衛大綱(NDPG)では宇宙、サイバー、電磁スペクトラムの新分野に注意喚起した。ただし新規NDPGへの反応ではいずも級ヘリコプター「駆逐艦」の多用途航空母艦改装で短距離離陸垂直着陸(SVOVL)を運用する方針に集中している。NDPGではロッキード・マーティンF-35BSTOVL機を計42機導入するとしており、各艦にF-35Bを搭載すれば「攻撃型空母」になり専守防衛という日本の安全保障政策から脱却となると批判する向きがある。
日本がめざす安全保障戦略の「目的」と中期防で掲げる「手段」を繋ぐ役目をもつNDPGで「方法」を明示している。2013年制定のNDPGは10年間有効のはずだったが途中変更となったのはそれだけ安全保障環境が厳しさを増しているとの政府見解の反映だろう。
岩屋毅防衛相の昨年12月18日記者会見で質問は半分近くがいずも関連で「攻撃型空母」の定義だった。日本国内各紙の報道基調や社説は軍事力強化への強い違和感を示していた。
ただしF-35Bを搭載したいずも級各艦を攻撃主体の兵器体系とし、専守防衛を旨とした戦後日本の防衛政策からの離脱と見るのは誤解だ。いずも級をSTOVL機運用に改装すると目的と手段の関係で有効だとする日本政府の国防戦略は正しく、攻撃装備にならず同時に他国の領土主権にも何ら脅威とならない。
日本防衛とは制海のこと
資源に乏しい島しょ国家の日本は海洋アクセスに依存する。日本は米国の支援のもと潜在敵対勢力の海洋利用を抑止・予防する必要があり、海洋通商活動ならびに遠隔島しょ部の防御は必須だ。戦後の日本は憲法解釈で国家存続がかかる際に自衛権を認めてきた。
いずも改装は憲法違反の攻撃型装備と批判する向きは戦術と戦略を混同している。攻撃、防御の能力整備は選挙で選ばれた政治指導層が戦略的レベルで判断すべきものだ。攻撃戦術が必要となるのは防衛戦略が機能する場合でのことだ。海軍戦闘の古典的教科書というべきFleet Tacticsでウェィン・ヒューズ退役大佐は「全ての艦隊行動が防衛戦術(防衛部隊ではない)に基礎を置くと理論的に不十分となる。防衛的海軍戦略の機能には部隊を集中投入し戦術攻撃で成功する必要がある」と述べている。
防御中心の軍事作戦で日本を防衛し海洋利用を図ると複雑かつ多くの要素がからむ。「日米防衛協力ガイドライン」が示すように「自衛隊が日本の主要港湾、海峡部の防衛を主担当すると同時に日本周辺海域の船舶艦船も日本が担当し関連作戦も実施する。このため自衛隊に必要となるのは沿岸防御、対水上艦戦、対潜戦、機雷戦、対空戦、航空制圧でありこれのみに限られない」 尖閣諸島を中国特殊作戦部隊から奪還する作戦でも同様の各作戦実施を可能とする戦力が必要だ。
防御的制海戦略を支える戦術とは
いずも級各艦はSTOVL機を10ないし20機運用し海上自衛隊の能力を防衛協力ガイドラインが想定する三分野で強化する。対水上艦戦、対空戦、航空制圧である。いずも級は海自潜水艦や水上艦と共同運用し、陸上自衛隊のミサイルが主要海域を中国海軍のミサイル、航空機から防御する。そこでF-35Bをいずも級各艦から展開すれば海自は監視偵察機能と防御装備の有効範囲を数百マイル伸ばせる。
海上自衛隊艦船を航空機発射の巡航ミサイルから防御するためいずも級がF-35BSTOVL機を運用する必要がある。平均的な対艦ミサイルの有効射程が数百マイルなのに対し対空ミサイルやミサイル迎撃ミサイルの射程は百マイルしかないためだ。同様に水上艦やパトロール艇が巡航ミサイルを発射すると海自に脅威となる。そこでミサイル発射前に攻撃を仕掛ける艦船や航空機を探知撃破することが海自艦艇の防御上最善の策となる。いずも級各艦がSTOVL機を運用すればこの一環となる。
F-35Bを運用するいずも級各艦は制海任務でも大きな役割を演じる。F-35Bが短距離対艦ミサイルを搭載すればパトロール艇や海上民兵の「大量動員戦術」に対し有効だ。「島しょ奪回」シナリオではF-35Bによる局地制空の確立が日本の水陸両用部隊による奪回で必須となる。
防御的制海戦略の効果を上げるには
海自艦隊に戦術航空戦力が生まれると短期以外の効果も生まれる。長期的に改編がまったなしの防衛方針、戦術、実証で米軍との協力体制の向上につながる。
防衛方針 海軍作戦部長によればこのたび発表となった「海洋優勢維持の全体構想2.0」で米海軍は高度戦力を有する敵対勢力を制圧する方針だ。ここでは有人無人装備をネットワークで結び分散独立型で高度な戦術効果を有する部隊を調整統合して運用する。日本の制海戦略はこれと異なるが、技術の進歩で同様の構想を取り入れていくはずだ。STOVL機と対潜ヘリコプターを運用するいずも級各艦が日本の今後の海洋戦略の鍵をにぎる。
戦術 F-35Bは有能な機材だ。だが戦闘で重要なのはペイロードである。つまり搭載兵装やセンサーが戦闘を左右する。さらに兵装システム技術は急進化しており、自律性能、極超音速技術、最終誘導技術から各装備を継続かつ急速に評価する必要がある。また戦術も効果を生む形に整備する必要がある。米海軍と海自は軍事力増強中の潜在敵対勢力に対する抑止・撃破という課題を共有する。日本が共用打撃ミサイル、共用空対艦スタンドオフミサイル、長距離対艦ミサイルを導入するのは正しい発展方向でより効果のある戦術を整備し各装備を有効活用する必要がある。
実証 F-35Bをいずも級に搭載し海自に海上で戦術航空戦力を運用する貴重な経験が生まれる。海自ではこれを米軍部隊とともに新しい戦闘構想の整備機会ととらえ、戦術、機材運用でも進化を期待する。いずも級は無人航空機(UAV)に各種ミッション装備を搭載しての実証に理想的である。さらにV-22オスプレイも日本が導入しつつあり、在日米軍で供用中だがこれも実証対象として有望だ。開発中の有人機でも海軍への転用が可能な機材があり、米陸軍が進める共用多用途技術実証機事業ではベルV-280ヴァラーティルトローター機とシコースキー=ボーイングSB>1デファイアント複合ヘリコプターがある。既存技術も含め、こうした有人無人機にも早期警戒任務、電子攻撃任務、洋上偵察や空中給油任務を行わせる構想がある。分散・ネットワーク化海軍部隊を戦力増強ならびに弾性確保の手段にいずも級やその他航空運用可能な海自や米海軍艦船から運用する各機を使えるだろう。
中国による高性能兵器開発、海軍空軍部隊の整備、さらに強圧的なグレイゾーン行動や好戦的国家主義により北東アジアの安全保障環境は一変した。日本は防衛力近代化を加速しないと、この脅威に追随できなくなる。中国は軍事優位性を盾にさらに大胆かつ強硬な動きを示すだろう。
日本は憲法解釈で国家存亡に必要な防衛力整備は許されている。海洋国家としての日本の生存と繁栄は海と表裏一体だ。中国が海洋面で強硬な動きに出ていることが日本の今後に不安の影を落としており、遠隔島しょ部主権でも脅威となっている。そこで自衛隊の対中抑止力、制圧力の改善に防衛的制海戦略を行使することは合理的かつ重要な一歩となる。
短期で見れば海自艦隊が航空自衛隊、陸上自衛隊、米軍と協調の上実施する防衛的制海戦略で求められる攻撃的戦術能力でいずも級改装によるSTOVL戦術機運用能力付与は効果的手段となる。長期で見ればこの能力により戦術、構想、実証がさらに広がる。このように日本の軍事抑止力が整備されるが、抑止に失敗しても領海を防御する能力、海洋コモンズへのアクセスの確保、遠隔島しょ部への侵攻を排除する効果が生まれる。■
「空母」=攻撃手段としか見ていない人はことばに踊らされて本質を理解していない人なのでしょう。また安全保障環境でもまったくちがう世界を想定している人なのでしょう。こうした人達による「口撃」に応対する政府や自衛隊も大変ですが、理路整然と事実を示しながら一つ一つ話を進めるしかないと思います。それだけいまの忙しい社会で本質を理解することなく上滑りな言葉尻で動いている人が多いということなのでしょうか。某国の思惑を「忖度」して「代理人」のように立ち回る「国会議員」や自らを国民の代表と錯覚する「メディア」に至ってはなにをか言わん、でしょうね。文民統制はもちろんですが、上に立つ人は専門家の知見を活用し、時間かけても耳を傾けてもらいたいものです。
そろそろ政府は「国際社会に警察はおらず、その環境下での真の防衛能力とは、日本に攻撃する国家に対して手厳しい報復ができる能力を持つことであり、また、それを他国に理解させることが戦争を未然に防ぐ手段である」とはっきり説明しても良いのではないかと思います。中国が領土拡大を隠さない今ならば、こうした説明でも理解する国民は多いと思いますが。
返信削除まず稼働率15%なのをなんとかしなきゃ
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