Why Is China's Navy Studying the Battle of Guadalcanal?
なぜ中国海軍がガタルカナル戦を研究するのか
We have a few ideas.
中国軍に実戦経験が欠落する事実は軍上層部も深刻な問題として認識している。戦闘ノウハウ不足を認めること自体は賞賛に値する。大規模軍事作戦をこの40年間行っていない中国軍では獲得できない知識だ。逆に40年間も軍事力を行使しない自制心が軍事大国にある事自体すごいと思うのだが。
対照的に米軍は2001年以来ほぼ一貫して戦闘状態にあり、1990年代にも小規模戦数件があった。だが近年の米国による戦闘に見られるイノベーションについては小規模かつ戦闘員相手の治安維持戦で得たものは少なく、今後大国間で戦闘状態の幕が切られればその真価を余すところなく見せてくれるはずだ。
人民解放軍(PLA)は実戦経験の欠如をおぎなうべく戦史研究を続けており、太平洋戦争の血なまぐさい記録もその対象だ。南太平洋の8月は熱いが1942年の同月始まったガタルカナル戦は地獄だった。太平洋の運命を決定づけた作戦であった。ミッドウェイの奇跡がとかく耳目を集めがちだが、その数カ月後始まったガタルカナル消耗戦は太平洋の『ヴェルダン』とも呼ばれ、転回点となった。艦船38隻と航空機700機を失った日本だが米側もほぼ同じ損失を被った。だが米国は損失分を早期に補うことができた点が異なる。
2017年12月、中国海軍の公式雑誌「今日の海軍」 [当代海军]にガタルカナル戦の詳しい分析記事が掲載された。結論は「日本が兵装開発で冒した過ちが損失を増やす結果につながった」とし、日本側の戦略思考の根本的欠陥にも触れている。この中国による日本の作戦失敗の分析は戦略判断の間違いと作戦戦術面の間違いを区別し、同時に兵器開発の過ちも指摘している。
中国海軍による分析では大戦略レベルではガタルカナル戦での日本の失敗の根源にミッドウェイ敗北の意味を理解できていなかったことがあるとする。日本は南太平洋で攻勢をかけたが米国の膨大な工業力を正しく認識していなかった。また决定層がミッドウェイ惨敗の真実を知らされないまま威勢のよい攻勢の音頭に押されてしまった。米側がヘンダーソン飛行場を奪取した意義に注目する中国論文は日本軍パイロットが遠隔地のラバウルからの飛行を迫られ同島に残る地上部隊支援に回らざるを得なくなった点を指摘。日本の空母部隊はガタルカナル島接近を試みず、陸軍と海軍の作戦調整がないまま完全に「状況は理解不能」に陥ってしまった。
また日本軍の戦闘方式がガタルカナルの敗北につながったと指摘している。当時の日本軍は夜戦で接近戦にもちこむことを誇りとしていた。これを「武士道」由来としている。ただし同島内でこの戦術を使うと迫撃砲などに頼ることとなり、海軍艦船の火砲や航空機支援を期待できない。この「火力限定」が効果を産まなかった。さらに日本軍の突撃攻撃はステルスでも奇襲でもなかったと指摘。また充分な部隊を集中できず戦力の小出しで攻撃を始め、その後増援部隊が到着したのは米側の防御陣地が強化されたあとだった。もう一つの根本的な間違いは兵站補給面だった。日本軍は十分な補給を受けることなく、米側の補給処攻撃も失敗している。
兵装(及びセンサー)では中国海軍の指摘は日本海軍が目視捕捉を重視するあまり戦艦の艦橋がさらに伸びたほどだ。これが効果を生んだ事例もあるが日本はレーダー開発に遅れをとり、一方で米軍はその利用に長けていた。米軍が戦車数両を巧みに使ったが、日本は一貫して地上部隊の支援ができていない。戦車投入で米地上部隊の自信を強めつつ日本側の攻撃を斥ける効果が生まれた。分析の最後の点は日本の戦略思考は「攻撃第一」で海軍艦艇では「防御軽視、対潜戦能力も低い」ものだったとする。日本海軍にもソナーがあったが性能は低く、作戦上の制約となったのはその例だとする。
以上は実際に戦闘した両国より中国海軍がガタルカナル作戦の意義を深く理解していることを意味する。ただし中国海軍の解釈に誤りも見られる。日本が攻撃重視でリスク覚悟の教義に動かされたと批判してもはじまらない。また空母部隊の投入をためらったのも同様だ。それでも中国の軍事教育で当時の戦闘を参考にするのは間違いではなかろう。戦史から中国の海軍揚陸戦教義で情報収集、センサー開発、火力集中、水陸両用戦車ならびに艦船防御力とくに対潜能力を重視している可能性がある。同記事の読者は軍組織に等しく影響するいわゆる「構成の罠」にPLAが陥ることはないと安心するのではないか。■
Lyle J. Goldstein is a research professor in the China Maritime Studies Institute (CMSI) at the United States Naval War College in Newport, RI. In addition to Chinese, he also speaks Russian and he is also an affiliate of the new Russia Maritime Studies Institute (RMSI) at Naval War College. You can reach him at goldstel@usnwc.edu. The opinions in his columns are entirely his own and do not reflect the official assessments of the U.S. Navy or any other agency of the U.S. government.
PLAが過去の戦史を分析するのは当然としても、この記事に書かれているPLAの分析結果を見ると、やはり実戦の経験不足が反映されているように思える。
返信削除PLAの実戦経験の不足は、いかんともし難く、中国は、米露印等の大国との戦争の前に、近隣の中小隣国を相手に手頃な小規模戦争をいずれ引き起こすだろう。
そのような戦争は、前回、中越戦争であった。朝鮮戦争の戦訓に拘泥したPLAは、近代化し経験豊富なベトナムに実質的に敗北し、その苦い教訓から軍の近代化を模索し、また、敗北の恐怖を抱いて現在に至っている。
次の小規模戦争の相手は、台湾、ベトナム等ASEAN諸国あたりになるだろう。危険なことに、習は、PLAに「戦って勝てる軍隊になれ」と訓示している。巨大化したPLAに単独で対抗できる軍事力は東アジアには存在しない。
米国は、東アジア回帰を明言し、アジアへの関与を強めているが、まだPLAの小規模戦争を抑止できるほどでない。つまり、中国の姿勢により、戦争が起きてしまいかねないことを意味する。
第2次世界大戦は独露のポーランド侵攻により始まったが、その時の独軍はかなり経験不足であり、この侵攻の教訓により、急速に強化された軍事力でイギリスを除く欧州を制覇した。アジアで「侵攻されたポーランド」を生み出させないことが肝心と考える。