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進化するエイブラムズ戦車、2030年代も主力戦車の座を守る新技術とは

米陸軍もロシアとの直接対決想定で戦闘装備の整備に走っているようです。主力戦車といえばエイブラムズと言う時代が50年にわたり続きそうです。

The Abrams Tank Going "Nowhere" Soon - to Fight into the 2030s and Beyond

エイブラムズ戦車は当面「どこにも行かない」 2030年代以降も戦闘可能


Mar 11-edited



装備のロシア機械化部隊が10年後の東ヨーロッパで前方強襲攻撃を開始し航空部隊と砲兵部隊の完全支援がつく場合、米軍NATO軍でどんな装甲車両が対応するのだろうか。


このシナリオには米陸軍が想定する複雑な条件が入っている。現行の戦闘車両1980年代製のエイブラムス戦車をどこまで改修すれば有効に有事対応できるのか。現時点のみならず15年先はどうか。陸軍が企画中の次世代戦闘車両(NGCV)はどこまで有効な装備を搭載して対応できるか。


陸軍で最大の優先事項は「今」「本日」の戦闘に準備しておくこと、そして近い将来に備えることだ。


「陸軍最大の課題に現行装備の継続改修があり、現時点で投入可能な全装備を対象とし適正投資で今後の戦力を整備して来るべき戦闘への備えを進めることがある」と地上戦闘システムズ部門事業主幹ブライアン・カミンズ少将がWarrior Maven取材で語っている。


この考え方には相互に関係しながら別個の方向性2つが絡む。将来の方向性には軽量かつ遠隔地に進出可能な装甲車両に長距離探知センサー、高性能火力やアクティブ防御装備(APS)で守ることがある。このうちAPSはトロフィーの名称でエイブラムス戦車に採用した。今後の車両技術と残存性は軽量装甲素材、APS、長距離射程火力、センサー、防空能力の進展にかかっている。


こうした重点項目からエイブラムス戦車はこのまま残る。陸軍は複数の方法論を取ることが多く、将来投入する車両とともに現行エイブラムス戦車の改良を同時進行するようだ。


将来想定される戦闘シナリオでは軽量長距離移動型火力として移動式防御火力車両が前方の歩兵隊の防御に不可欠だ。だが大国同士の戦闘に歩兵隊をそのまま配置すれば危険すぎる。そこで強力な装甲車両に精密長距離火砲や高性能センサーを搭載すれば戦闘時に不可欠な存在になろう。


現在のエイブラムズは数十年前とは全く別物だ。搭載センサー、火力や防御装備を見れば全く別の車両と言える。陸軍は強化型のエイブラムズ新型SEPv4を製作中で2021年にテスト開始する。


新型戦車はレーザー測距技術、カラーカメラ、統合オンボードネットワーク、高性能気象センサー、弾薬データリンク、レーザー警戒受信機のほか、多用途120mm戦車砲弾を搭載すると陸軍上層部は説明。


このうち多用途120mm戦車砲弾は高性能対戦車弾、多用途対戦車弾、対人殺傷キャニスター弾等各種弾薬を一つの砲弾にまとめるものだ。


SEPv4改修ではハイテク第3世代FLIRつまり前方監視赤外線画像センサーが中心だ。


この高性能FLIRには高解像度デジタル画像技術と敵の特徴を遠距離で探知する性能が盛り込まれ、雨天時やホコリ霧があっても機能すると陸軍開発部門は説明。FLIR技術の進歩で戦車乗員は敵のセンサーが発する光や熱以外に電子音紋も捉え状況認識度が向上する。
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熱画像標的捕捉技術は湾岸戦争の戦車戦でエイブラムズがロシア製T-72を相手に実証しており、遠距離から相手に見られずに破壊した。


ロシアのT-14アルマータ新型戦車が開発中の3UBK21スプリンターミサイルと長射程9M119装甲貫徹弾を搭載するため重装甲は当然必要だ。


さらにエイブラムズv4では主砲の射程と威力が改良され、同時に長距離レーザー探知センサーと後方監視センサーを搭載する。新規導入の気象センサーで天候条件の変化や戦闘状況の変化に迅速に対応できると陸軍は説明。


M1A2 SEP v4では砲塔とオンボードイーサネットに新型スリップリング接合部の導入でネットワークセンサー構成を簡略化する。


陸軍はAIを組み込んだ敵火力探知センサーもエイブラムスに導入し、敵小火器等の飛来を探知、追尾し照準をあわせる。これにより歩兵隊や装甲旅団戦闘チームに重装甲車両による防御以外にISR同様の敵位置探知センサーの恩恵が生まれる。センサーは現在試作中で実証では熱センサーで「熱特徴」を敵小火器で識別し、音響センサーで発射地点がわかると陸軍技術陣は説明している。


HFDとアクティブ防御システムの統合も目標だと兵装開発部門は述べている。APS技術は現行エイブラムズにも導入され、センサー、火器管制技術、インターセプターにより飛来するRPG弾やATGMを識別し撃破する機能だ。APSは理屈上は小火器銃弾以上の大きさの脅威対象へ対応するが、HFDと同調させれば戦場で効果を発揮する。


同時使用で大きな効果が生まれる。敵のRPGやATGMが同じ場所から発射されたとする。その軌跡をリアルタイム追尾できれば目標捕捉できる。このため陸軍では高性能多機能センサーの開発に集中している。小型ハードウェアを統合し高性能センサー技術と一緒にすれば従来は多数の装備で行ってきた広範囲の任務を同時に実施できる。


こうした目標をまとめると陸軍で戦闘車両開発に当たる幹部が述べた次のひとことになる。「次期戦車の要求内容が全部入る」■

Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army - Acquisition, Logistics& Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

コメント

  1. 有人砲塔の戦車で無人砲塔の戦車に対抗する事自体もう無理と思いますがね

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