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米海兵隊F-35Bの運用テストを開始した海自は、英海軍とも協力関係深化をめざす。将来日米英で艦、機材の相互利用体制が生まれそう。警戒する中国は国内反対勢力に火をつけ、集団安保反対の論調を張らないか。

海上自衛隊は今後も「ヘリコプター護衛艦」の名称を使うのでしょうか。米海軍でも強襲揚陸艦を空母として利用しても揚陸艦のままの呼称なのであながちこれが間違いとはいえないのですが。


第一期改修後のいずも youtubeより

 

 

海兵隊のF-35Bが海上自衛隊のいずも(DDH-183)に搭載される。海兵隊機材で日本は自国発注のF-35Bの導入前運用を試すことになる。とくに今回はいずも改装後の運用能力を試す。

 

防衛省発表では海兵隊機材は10月3日から7日まで艦上運用される。固定翼機の空母運用は日本では第二次大戦終了後初めてとなる。いずも(排水量24千トン)はこれに先立ち岩国基地へ回航されていた。

いずもには海兵第一航空団海兵航空集団12の機材が搭載される。同集団には飛行隊二つがあり、うち海兵戦闘攻撃飛行隊121(VMFA-121)「グリーンナイツ」が2012年11月にF-35Bを配備され、初期戦闘能力(IOC)を2015年に獲得しており、岩国基地には2017年1月に移動してきた。同飛行隊は海上でのライトニングII運用の経験も重ねており、2018年3月に強襲揚陸艦USSワスプ(LHD-1)にF-35B6機を展開している。

 

2020年10月に岩国基地にVMFA-242「バッツ」が加わり、今年9月にIOCを宣言した。

 

このうちVMFA-121の機材がいずもに搭載される。海兵隊では同様に英海軍空母HMSクイーン・エリザべス、イタリア海軍空母カヴール(写真下)でもF-35B運用を行ってきた。

 

いずもは2隻ある同級の一番艦ヘリコプター空母として建造され、当初は回転翼機専用艦となっていた。ただし、発注時から固定翼機運用も想定しており、二隻は第二次大戦後の日本で最大規模の艦となった。

 

今年夏、いずも飛行甲板の改装が完了し、同艦はF-35B運用に対応可能となった。中でも耐熱塗装によりF-35Bの推力偏向型エンジンの高温排気に対応するほか、照明設備も変更された。

 

ただしF-35Bの運用をねらった今回の改修に続き、さらに飛行甲板の改装が控え、末端の形状で四角形になる。内部もF-35B用の補給物資、整備作業を念頭に改良される。また航空燃料、弾薬類の貯蔵区画を加える。

 

いずも級にスキージャンプ方式の離陸用ランプをつけるのではとの観測があった。英、伊両海軍艦にはこれがついている。だがこれは実現しないようだ。また後方エレベーターと格納庫スペースはF-35Bの移動に対応しているようだ。いずもの飛行甲板長からSTOVL機運用には制約がつくようで、海兵隊機では軽武装の上、極めて短い発艦を求められそうだ。

 

最終的に同艦には共用精密誘導着艦システムJoint Precision Approach and Landing System (JPALS)が導入される。JPALSは固定翼機、ヘリコプターのアプローチ、着艦を支援し、すでに米海軍で大きな効果を上げている。

 

一連の改修がいずもで完了するのは2026年の予定だ。二号艦かがも同様の改装を受ければ、海上自衛隊でF-35B運用に対応する艦艇が二隻そろうことになる。通常の整備や訓練のサイクルを考慮しても作戦能力が大幅に増強される。整備は5年周期で行うのが通常だ。

 

日本のF-35整備計画では157機導入し、うち42機をF-35Bとする。これまでのところうち8機の契約が成立しており、宮崎県新田原基地への導入は2024年度に行われる。令和4年度予算要求にさらに4機調達予算が計上された。F-35Bは航空自衛隊が運用する。

 

 

いずも級空母に米海兵隊機が定期的に搭載される可能性がある。これは英海軍艦艇に英軍保有機がそろうまで海兵隊機を搭載するのと並行する。ただ、英国が当初予定通りのF-35B導入できるか不透明な中で、海兵隊機搭載は長引く可能性も出てきた。

 

日本が海兵隊の「ライトニング空母」構想を参考にする可能性もあろう。これは強襲揚陸艦にライトニング戦闘機を搭載するもので、いずももこの構想の影響を受けているといえる。

 

米軍との共同作戦体制を敷く日本は英国とも同様の動きをめざし、英国がアジア太平洋に戦略中心を移動させるのに対応する。両国でF-35Bが供用されれば、英軍機が日本艦から、あるいはその逆の状況が生まれてもおかしくない。

 

日本が固定翼機運用空母を実用化することは中国人民解放軍海軍の増強に対抗する意味があり、中国の空母、強襲揚陸艦部隊の著しい拡充が視野にある。海上自衛隊に任務部隊が生まれれば、艦載F-35Bによるスタンドオフ対艦ミサイル攻撃能力も実現し、徳に揚陸部隊の迎撃に有効となろう。

 

F-35Bの艦載運用により有事の際に運用面で柔軟性と生存性が増強され、陸上基地の脆弱性を相殺できる。F-35B搭載艦が尖閣諸島付近に展開すれば、日本領土への兵力投射を困難にできる。

 

これまで日本では憲法の理念を受けて防衛を旨としてきたため、固定翼機を運用し、攻撃的性格の兵装を運用する空母の取得は困難とされてきた。いずも級各艦が「ヘリコプター駆逐艦」の区分となっているのはまさしくこのためである。ただし、中国や北朝鮮の脅威の高まりを念頭に、考え方にも変化が生まれており、将来はF-35Bが日本の空母から普通に運用される日が来れば、新しい防衛上の現実のシンボルとされよう。■

 

Marine Corps F-35s Are About To Be The First Fighters To Fly From A Japanese Carrier Since WWII

Next week, F-35B stealth fighters are due to go aboard the newly modified Japanese carrier Izumo for the first time.

BY THOMAS NEWDICK OCTOBER 1, 2021

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