スキップしてメイン コンテンツに移動

新鋭空母ジェラルド・R・フォードがいよいよ2022年に就役。高まる新技術による効果への期待。ただし搭載する航空団は未編成。

 


第23飛行試験評価飛行隊(VX-23)のT-45ガスホークがUSS ジェラルド・R・フォード (CVN-78) で航空機互換性テストを行い、電磁発艦システム(EMALS)および高性能拘束ギア(AAG)の実証を行った。US Navy Photo

海軍はUSSジェラルド・R・フォード(CVN-78) の運用を2022年に開始する準備に入ったt。当初の予定は2018年で4年遅れる。

新技術数々の導入で遅れ、信頼性確保のため作業が続いた同艦は建造費130億ドルでフォード級空母の一号艦で、初回就航に備え最後の整備作業に入っており、いよいよ海軍での供用が近づいてきた。

「全て予定通り進行中だ。六カ月の準備も順調だ。予定外の事象も発生していない。そこで、艦長と造船所から間もなく朗報がでるはずだ。就役が間近に迫ってきた」(フォードCSG司令官グレゴリー・ハフマン少将)

海軍作戦部長のもと作戦立案(N3)を6月までまとめていたハフマンはペンタゴンでグローバル部隊管理を担当し、海軍艦艇をどう投入するかを見ていた。

Rear Adm. Gregory Huffman. US Navy Photo

「フォード級が加わり空母戦力、空母打撃群が増勢となれば需要に応えられるようになる。柔軟度が高くなる効果が期待できる」とハフマンは述べ、「フォード級の就役で司令官には選択肢が増え、希望通りの戦力が実現する」

フォード級ではソーティ実施が30%増加すると期待されており、その理由としてエレベーターを電磁モーター化していることが大きい。また電磁航空機発艦システム(EMALS)で航空機を蒸気カタパルトより迅速に発艦させられるのも理由となる。時間短縮とともに必要人員を減らせることも大きい。高性能拘束ギアは固定翼機を空母艦上で捉えるもので、従来型の油圧式マーク7拘束ギアが不要になる。ともにソフトウェアが重要でEMALSではフォード艦上で昨年夏に不調が見つかり、航空機運用を数日間停止せざるを得なかった。

ハフマンはフォードが艦隊に加わることで空母への需要が高い中で投入可能な隻数の制約が緩和されると期待している。

「さらに後続艦の建造が実現して就役すれば空母へのニーズに答えやすくなるはずだ」(ハフマン)

ハフマンはペンタゴンから海軍艦艇と乗組員にどこまでのストレスがかかっていたのか見ていた。

「需要に応えるのは大変で結局艦隊にしわ寄せがくる。艦艇とともにもっと深刻なのは乗組員で痛いほど実感された」といい、「フォード級就役で全て好転させられるが、言い換えればそれだけ海軍が期待されているという証拠だ」

フォードは難題に直面した。まず高性能兵装運搬エレベーターで飛行甲板に兵装類を運ぶために使われる。これがソーティー生成に大きな意味があり、現在は整備中だが海軍はこうしたエレベーター11基すべてを完全稼働状態にすべく整備作業を進めている。

海軍は今夏に同艦のショックテストを行い、浸水も火災も発生しないことを確認した。このショックテストでは40千ポンドに及ぶ火薬を水中爆発させ、艦体や搭載装備への影響を見た。

ハフマンはフォードが投資する装備品で問題が発生したことを認めたものの、ショックテストでも各システムは正常に作動した。

「デュアルバンドレーダーでは水中爆発のたびに作動を確かめた。毎回機能することを証明したのは想定通りだった。EMALSと高性能拘束ギアも同様だ。爆発直後に各装備は即座に機能できることを実証し、DOT&Eの期待通りだと証明できた」とホフマンが言及したのはペンタゴンの運用試験評価部門のことで同艦に搭載の新型装備について信頼性の問題を指摘していた。

海軍はフォードの初回出動に備え、空母打撃群司令と幕僚を同艦に乗艦させたまま18カ月に及ぶ引き渡し後のテスト公試期間に入った。これは今春完了し直後にショックテストが展開された。CSG司令を乗艦させたのは通常と異なる動きだだが乗組員にとっては通信訓練から作戦演習まで各種の機能を当初から展開し、打撃群幕僚も艦になじむことができた。

同艦にはまだ搭載する航空団ができていないが、整備期間が終わり、供与開始となる前に機体がそろうはずだ。

供用期間を50年に想定したフォードとその後の姉妹艦は米海軍が新型無人艦艇の整備を進め、新技術を実用化するロードマップを描く中で艦隊の中心となる。海軍関係者からはフォードの柔軟性として艦内各所がモジュラー構成となっていること、新しい技術やミッションに対応できるよう進化できることに注意喚起する動きがある。

「フォードで実現するのは柔軟性と適応力であり、当初から技術の変遷を前提に設計してきたからだ。例としてニミッツ級では現時点の想定にはぴったりだが新技術の導入に適応させるのがむずかしい」(ハフマン)

「だがフォードではモジュラー構成を最初から採用している。そのため簡単に新装備の搭載が可能で、今後の新型機で構成する航空団に対応できる。ここに既存艦を上回るフォード級の優位性がある。既存艦をドライドックに入れ工事するのは大変な作業となる。だがフォードではもっと早く仕様を変更できる。なるべく早く実戦部隊として復帰させることが可能となるわけだ」■

Strike Group Commander: USS Gerald R. Ford Set For First Deployment in 2022 - USNI News

By: Mallory Shelbourne

October 25, 2021 5:50 PM • Updated: October 25, 2021 10:04 PM


コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM