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北朝鮮の新型SLBMの正体を推察。同国発表をうのみにすると情報操作に踊らされかねず危険。潜水艦発射だったのか疑わしく、飛翔パターンも失敗の可能性も秘める。

Pictures North Korean released of what it said was the test of a new submarine-launched ballistic missile.

NORTH KOREAN STATE MEDIA

朝鮮が新型潜水艦発射弾道ミサイルSLBMを試射し、優れた飛翔制御を実証したと発表した。今回のミサイルはこれまでの北朝鮮SLBMよりかなり小さい。

同ミサイルへの関心が高まっているが、既存型式なのか新型かで評価が分かれている。

試射は2021年10月19日、東海岸の北朝鮮潜水艦運用の中心地シンポ付近で行われた。南朝鮮メディアは同ミサイルは430から450キロ飛翔し、高度は60キロに到達し、日本海へ落下したと報じている。南朝鮮政府は早くからSLBMと断定していたが、米政府は発射の事実を認めながら、ミサイルの種類については発言していなかった。日本の岸田文雄首相は北朝鮮がミサイル二発を発射したと発言したが、事実と反するようだ。

NORTH KOREAN STATE MEDIA

北朝鮮国営メディアが2021年10月19日のミサイル発射の写真を公表した。

NORTH KOREAN STATE MEDIA

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NORTH KOREAN STATE MEDIA

NORTH KOREAN STATE MEDIA

潜水艦発射型ミサイルのモックアップが先週ピョンヤンで公開されていた

 

「朝鮮国防科学院が新型潜水艦発射型弾道ミサイルの試射を19日実施した」と北朝鮮国営メディアが報じた。「初の潜水艦発射型戦略弾道ミサイル発射は5年前のことで、今回新型ミサイルを『英雄艦8.24』から発射したことでわが国の軍事力を見せつけた。党中央委員会への忠誠心がこの誇らしい成果を生んだ」とある。

ミサイル発射の実態は全く不明だ。北朝鮮国営メディアは同国に一隻のみあるコレ(鯨)級潜水艦の写真を公表し、同艦が名称不詳のミサイルを発射後に浮上したとした。同艦の写真を見ると発射ハッチがセイルにあり、開いたままだ。同時に衛星画像ではシンポのSLBM発射用バージが10月18日に港外に移動したことがわかる。

NORTH KOREAN STATE MEDIA

北朝鮮コレ級潜水艦の写真も公表された。同艦のセイル上の発射ハッチが開いている。

「国防科学アカデミーの発表で新型潜水艦発射型弾道ミサイルには高度の制御誘導技術が盛り込まれており、横方向移動のほか滑空ジャンプ操作も可能で、祖国の国防技術の進展で大きな一歩を示した」と北朝鮮国営メディアが伝えている。

北朝鮮からはこの主張を裏付ける資料は一切公表されていない。「滑空ジャンプ操作」とは「イルカジャンプ」あるいは表面跳躍のことかもしれず、兵器本体あるいは再突入部分が先頭を起立させ飛翔速度を減じ、不規則な軌道を飛翔の最終段階で示すことだ。これにより飛翔コースを変更するとともに兵器の射程を延ばす効果が期待でき、防衛側の迎撃を困難にする。

再突入部分をミサイルから分離したとすれば、岸田首相が言うように日本は二発のミサイルと認識した事の説明になるが、誤りの可能性がある。

今回のテストで発射されたミサイルが比較的短距離対応だったようだ。国営北朝鮮メディアの発表は今回のミサイルが「戦略級」でなく、通常弾頭搭載だったこと可能性が出ている。通常弾頭SLBMは南朝鮮も最近テストしており、強化施設さらに重要拠点の攻撃に効果を発揮する。

今回のミサイルが小型であるのは北朝鮮でミサイル発射用に改装された潜水艦搭載用だ。コレ級に加え、北朝鮮はロメオ級ディーゼル電気推進型潜水艦を弾道ミサイル発射用に改装中でミサイル搭載数を増やそうとしている。

NORTH KOREAN STATE MEDIA

金正恩が2019年にロメオ級潜水艦の弾道ミサイル運用改装工事を視察した。

北朝鮮のその他のSLBMより射程が短いが、南朝鮮国内あるいは日本を標的とするのなら問題はない。小型潜水艦部隊に短距離SLBMを搭載し展開させれば残存性が高いまま各所から多数の目標を攻撃可能となり、敵対国には対応が課題となる。

今回のミサイル性能はともかく、北朝鮮が新型SLBMのテストを行った意味は大きい。少なくとも2019年以降で初のSLBMテストだ。また1月に北極星5型とされる大型新型SLBMも公表しているが、テスト実施の発表はない。

南朝鮮は今回のテストに先立ち、独自に通常弾頭SLBMを島山安昌浩級通常型潜水艦から9月に発射している。南北朝鮮の軍拡レースでともに新型弾道ミサイル、巡航ミサイルが公表されており、北朝鮮はさらに極超音速滑空体を搭載したミサイルもテストしている。

今回の北朝鮮SLBM発射前に北朝鮮問題の米特使スン・キムが南朝鮮特使Noh Kyu Dukとワシントンで会談している。キムは今週ソウルを訪問予定で北朝鮮との交渉再開について協議する。

「米国はDPRKが弾道ミサイル発射に踏み切ったことを糾弾する。発射は国連安全保障理事会決議に違反しており、域内安全保障への脅威だ」との国務省声明を聯合通信が伝えている。「DPRKにはこれ以上の挑発行為を自粛し、対話の継続を求めたい。米国による大韓民国及び日本への防衛の姿勢は不変だ」

北朝鮮からは最近になり交渉への関心を示す兆候が出ている。表面だけかもしれないが、人道援助や制裁解除が焦点だ。金正恩は先週の兵器展示会で軍備拡張を続け、テストも付随して継続すると公言した。SLBM発射もその一環で南朝鮮及び米国の侵略に対応する同国の基本的な権利だとした。

UPDATE:

高解像度写真が公表された。左上の写真では大型エンドプレートが吹き飛ばされている様子が見える。

KCNA

 

高解像度写真を見ると今回のミサイルは地上発射型短距離弾道ミサイルKN-23との類似性が見える。今回発射されたのはKN-23を潜水艦発射型に改装した可能性がある。■

New Short-Range Submarine-Launched Ballistic Missile Tested By North Korea (Updated)

The missile appears to be very similar to a mysterious short-range type that Kim Jong Un recently showed off at an arms showcase in Pyongyang.

BY JOSEPH TREVITHICK OCTOBER 19, 2021



 

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