スキップしてメイン コンテンツに移動

中ロとの開戦で真っ先に狙われそうなシェミア島(アラスカ)の防衛体制強化を図る米軍。同島にはミサイル防衛のかなめコブラデーンレーダー施設もある。

Special operations train to protect shemya island

NORAD

 

 

国やロシアと開戦となれば、米国で最初の標的となりそうなのがロシア東側に最も近いアリューシャン列島に位置するシェミヤ島だ。ここには強力かつ最近改修を受けたばかりのAN/FPS-108コブラデーン早期警戒追跡レーダーが設置されており、弾道ミサイル攻撃を探知する。その他、10千フィート長の滑走路、航空機運用施設他広大なランプ空間や緊急機体拘束装備があり、シェミヤを重要拠点としており、それだけに防衛が重要だ。このたびNORADがノーブルディフェンダー演習をアラスカで展開した。

 

冷戦時にシェミヤは戦略情報収集活動で主要な役割を演じていた。コブラデーンレーダー以外に、RC-135偵察機が同島から活動していた。ミサイル追尾用のコブラボール機が1990年代は常時出動する体制を維持していた。

 

GOOGLE EARTH

シェミア島の全景。イエアレクソン空軍基地が南端に見える。

 

GOOGLE EARTH

シェミアはロシアに程近い位置にある. 

 

冷戦後もコブラデーンレーダー以外に聴音施設、気象観測拠点があるシェミアは一般航空機の緊急避難飛行施設として知られることが多かった。これが「大国間競合」の時代に大きく変わった。太平洋での武力衝突の際にシェミアが大きな役割を演じるのは確実だ。

 

以上を念頭に、潜在的な脅威が同島に想定されるが機微なインフラは数多くある。まず、ハイエンドでは巡航ミサイルや弾道ミサイルが大きな存在だが、ローエンドでも特殊部隊が上陸し同島を占拠する、施設を使用不能にする事態が想定される。

 

このため北方特殊部隊司令部(SOCNORTH)に陸軍第10特殊部隊集団のグリーンベレー部隊がシェミアでの演習に動員され、防衛任務の訓練を常駐の防衛部隊とともに展開した。その際の写真を掲載した。MRZRバギー車両のほかFIM-92スティンガー携行型防空装備(MANPADS)で空の脅威に備える姿が写っている。

 

NORAD

NORAD

 

NORAD

 

NORAD

 

NORAD

 

NORADはツイッターにもビデオを公開しており、C-130が向かい風でシェミヤに着陸し、特殊部隊隊員とMRZR車両の積み下ろしの様子が写っている。

 

重大な事態が発生すれば同島は直接攻撃を受けることとなり、もっと高度の防空体制が必要となるが、計画上では防空の備え以外にも想定があり、特殊作戦部隊の投入も想定に入っている。

 

ノーブルディフェンダー演習はシェミアでは展開せず、アラスカ州本土で行われている。NORADの主任務である防空が主眼だ。カナダのCF-18がF-22とともに各種防空訓練の想定で投入され、巡航ミサイル対応もそのひとつ。F-22のAN/APG-77アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーで低探知性の低空飛行対象の捕捉が可能だ。カナダのCF-18部隊はAN/APG-73機械式スキャンアレイレーダーを搭載し、そこまでの性能はない。だがカナダも旧型ホーネットにAN/APG-79V4 AESAレーダーの導入を進めている。

 

シェミア島での演習は太平洋各地で進む防衛体制強化の一環で中国が強硬姿勢を強めながら、ロシアの動きが予測不可能になっているのに対応するものだ。これを念頭に、重要ながら脆弱性を抱えたシェミアのような拠点の強化を目指した演習が今後増え、防衛能力の向上が図られていくはずだ。■

 

Special Ops Train To Defend Strategic Aleutian Islands Radar Outpost During All-Out War

 

Sitting right on Russia's back door, Shemya is home to the Cobra Dane radar and a strategic airfield that would be a prime target during a conflict.

BY TYLER ROGOWAY OCTOBER 18, 2021

 

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...