クレムリンがSu-57に期待するのは宣伝効果だ。
西側分析ではロシアの第五世代ステルス戦闘機スホイSu-57が作戦投入可能となるのは2027年以降としている。事業の遅れ、コスト超過、研究開発上の問題が同機事業につきまとっている。
驚くべき理由はない。もともとSu-57は実行可能な事業ではなかった。
2006年当時、ウラジミール・プーチン大統領がロシア航空企業各社を単一国営持ち株会社に統合した。これが合同航空機製造会社(UAC)だ。
その後UACは20社以上あった航空企業を4つの事業体に整理統合した。戦闘軍用機一社、軍用輸送機一社、民生機一社、航空部品一社だ。
この過程で国営企業多数が株式会社に改編されたが、株式の9割は国が握る。
このように垂直統合で中央統制を強めた改編だが、UACは傘下企業にある程度の自主性を認めた。MiGとスホイはそれぞれ役員会を残している。
ただし、一部例外を除き、各社の取締役は異論をさしはさめない。それどころか、UAC傘下各社は14名で構成する取締役会の決定下にあり、役員大部分はプーチンの腹心である。産業界で高い知見を有するのはごく少数にとどまる。
ロシアメディアが仰々しい報道をすることがあるものの、UACは死に体といってよい。UACは1980年代末から1990年代初頭の機体の生産再開ははたしたものの、技術革新の取り込みでは無能をさらけ出している。
その大きな理由としてUAC役員会には入念に選んだイエスマンが多数で、新規事業や戦略の話題には前向きとはいえ、厳しい決断には及び腰であることがある。その意味で、UACがここ10年にわたり大風呂敷をひろげたものの実現した案件は皆無に近いというのは当然といえる。
Su-57ではどうか。UAC大きな失敗は戦闘航空機事業部を海外投資家に非公開としたことである。初代コンソーシアム統帥は元国防副大臣で後に首相になったセルゲイ・イワノフで2006年に、ロシアは「独力でこの分野を育てる」と主張していた。
UACの柔軟性欠如にウクライナ侵攻後の西側制裁措置でロシア経済が大幅に衰退したことも加わり、Su-57が事業として成立しなくなった。
国の規模人口は大きくてもGDPがオーストラリア並みでは超大国を演じることはできないし、シリア内戦から抜け出せず、ステルス戦闘機の国内開発もままならない。
同事業の最後の頼みはインドの財政支援でSu-57をSu-30MKI並みのステルス攻撃戦闘機に発展させる構想だった。だが、プーチン流の経営構造のため連携効果が実現に至らなかった。
そうなると、クレムリンガSu-57に期待するのはロッキードのF-22ラプターに匹敵する機体との宣伝工作で注目を浴びることが中心となる。だが、ビジネスセンスも兼ね備えたインド空軍はこの言葉に踊らされず、資金提供をもちかけなかった。
ここにSu-57の進展がない理由がある。■
Doomed To Fail? Russia’s Stealth Su-57 Isn’t Going Anywhere Soon
by WarIsBoring
October 13, 2021 Topic: Su-57 Region: Eurasia Blog Brand: The Reboot Tags: RussiaMilitaryTechnologySu-57Stealth
Image: A Sukhoi Su-57 jet fighter performs during the MAKS 2021 air show in Zhukovsky, outside Moscow, Russia, July 25, 2021. REUTERS/Tatyana Makeye
プーチンも習近平も社会主義の頭で資本主義の真似事をしてきたため、ここにきて経済のダイナミズムについてこれなくなっています。また、旧体制のまま異論を認めない、取り込めない体質のため意思決定が裏目に出ているのでしょう。こんなことを言うとヒントになり、中ロが急に力をつけては困りますが、どうせ両国の権力構造では自由な体制を作るのは不可能なので心配しなくてもいいと思います。
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。