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AUKUSに入れてもらえなかったカナダ。本来米国と一衣帯水の関係のはずだが、防衛力整備に真剣でなかった。だが逆転し、カナダも含めたCANAUKUSが生まれる可能性がある。

 


カナダ首相ジャスティン・トルドー、国防相ハージット・サジャンはAUKUS合意から取り残されたと感じているのだろうか。 (Sean Gallup/Getty Images)


子力潜水艦建造の構想を砕かれ憤懣やるかたないフランスだが、米国の北にフランス語を使う国がもう一つある。



新しく生まれたAUKUS同盟はフランスにとって660億ドルの潜水艦商戦を失う悪夢となったが、ファイブアイズのメンバー、カナダにはもっと大きな喪失感を生んでいる。


今回の新同盟について事前相談を受けなかったカナダの官僚組織は正しく状況を見ているようだ。匿名でカナダ関係者はこれは「スリーアイズ」だとし、「カナダ除外は三か国から見ればカナダは対中国対抗では『弱い姉妹』なのだろう」と述べた。


カナダだけではない。ファイブアイズのもう一つのパートナー国ニュージーランドも二級国扱いだ。サウスカロライナ州程度の人口しかないニュージーランドには反核平和主義が長く続き、最近も対中関係で軟調な姿勢なので、この扱いは不当とは言えない。だがカナダでは今回の取り扱いは大きなショックと受け止められている。


面積では米国並み、人口はカリフォーニア州と同程度のカナダは1941年のハイドパーク宣言以来、米国に最も近い防衛協力国となっている。両国の防衛産業が国境を越え複雑に絡み合っているため、カナダは米輸出規制の唯一の例外国であり、法的には米国の防衛産業基盤の一部との扱いを受けている。これを一般には国家技術産業基盤National Technology Industrial Base (NTIB)と呼ぶ。


カナダが国防力整備に本腰を入れてこなかったのが懸念点となっていた。回想すれば、AVROアロー戦闘機を1959年にカナダは開発中止し、以後60年に及ぶ国防力衰退を招いたといえる。カナダの国防支出はGDP比で1960年の4.2%が2014年には0.99%にまで下がっていた。


福祉国家カナダにとって国防軍の規模、戦力は革新性と合わせ低下していった。イラク、アフガニスタンへの派兵でカナダの財政事情は圧迫され、装備近代化の予定は棚上げされた。レーダー、艦艇、航空機で劣化が進み、一方で中国とロシアは北方洋を自国の湖に変えようとしている。


カナダの主権保護のためには北方へ移動可能な強力な潜水艦部隊整備が高優先順位のはずだが、カナダは艦齢30年の元英海軍ディーゼル潜水艦4隻を保有しているに過ぎない。この潜水艦はパキスタン海軍でさえ受領を断ったものだ。王立カナダ海軍の戦力は1988年に当時のロナルド・レーガン大統領がペンタゴンの頭ごなしに原子力潜水艦技術をカナダに譲渡することで新型艦建造を認めた当時を思えばはるかに低い水準だ。またとないチャンスをカナダが結局ものにできず、原子力潜水艦は結局構想に終わった。


オーストラリアが新たな脅威地図を意識し防衛体制強化に向かい、米国との防衛協力関係で近い間柄になったのは当然といえる。その発端は2015年に米議会がオーストラリア、英国をともにNTIB構造の一部に組み入れたことに始まる。AUKUSはNTIBから一気に進展し、AIや量子コンピュータなどその他分野も対象にしており、もはや潜水艦近代化のみが対象ではない。


カナダが取り残された感があるが、実は同国はこの5年で防衛支出増で一定の進展を見せている。それでも米国同様に国家予算は社会福祉に向かうほうが多く、軍事力整備は後回しになっている。さらに支出を増やし、適正な装備品導入に予算を回す必要がるが、問題は政治の判断で意思の力であり、これがないと実行はできない。


レーガン大統領構想を再度とりあげ、カナダに強力な原子力潜水艦部隊を整備するべきだ。米仏いずれかの支援でこれを進める。カナダは太平洋、大西洋、北極海に面する。そこに高性能水中戦力が実現し、志を共にする同盟国とともに意味のある装備を備えた部隊が生まれれば各戦域での戦力が増強されることになる。


事態の進展が良い意味の刺激となり、4か国体制のCANAUKUSが近いうちに生まれるだろう。■


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