GBU-72/Bは改良型全天候対応バンカーバスター爆弾で米空軍で供用中の2千ポンド型と3万ポンド型の中間に位置する。
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米空軍は新型5,000ポンド級バンカーバスター爆弾となるGBU-72/Bの連続テストを成功裏に実施した。F-15Eストライクイーグルからの投下もフロリダのエグリン空軍基地そばで行った。
従来は高性能5,000ポンド弾あるいは高性能5,000ポンド貫通弾と呼ばれていたものだが、空軍はそっけなくテスト結果だけ発表している。飛行テストに先立ち地上テストが展開され、炸裂力他の効果測定が行われた。エグリンの第96試験飛行団によれば同基地史上で最大規模の爆弾だという。
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5,000ポンド級 GBU-72/B バンカーバスター爆弾がさく裂するとこうなる.
外観上はGBU-72/Bは2,000ポンド級のGBU-31/B共用直接攻撃弾(JDAM)精密誘導弾をやや拡大してバンカーバスター弾頭のBLU-109/Bまたは改良型BLU-137/Bを装着したように見える。後者は高性能2000ポンド弾頭(A2K)として知られ、今回の5,000ポンド版ではGBU-31/Bの尾部を流用しており、GPS補正の慣性後方システム(INS)誘導パッケージをつけている。
外観で新型がGBU-31/Bともっとも異なるのは長く伸びたフィン(ストレーキ)が本体底部の左右についていることだ。GBU-31/BシリーズのJDAMのストレーキは本体中央部についている。
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GBU-72/B バンカーバスター爆弾のモックアップ。
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GBU-31/Bs にバンカーバスター弾頭を装着している
空軍ではGBU-72開発にはモデリング、シミュレーションを多用したのに加え、威力をさらに高める検討を加えたと説明。「モデリング、シミュレーションを使う設計では初期型がすでに量産型の例となること」とGBU-72事業主管のジェイムズ・クリトンが述べている。「これにより運用テストも早期に開始でき、設計効果を確認し、早期に改良が可能となった」
「GBU-72開発では強化され深く掘られた標的の撃破が課題で、かつ戦闘機場爆撃機での運用を想定した」と空軍の公式発表にある。「GBU-28等既存装備品に比べ、威力は相当大きくなった」
GBU-28/Bは5,000ポンド精密誘導バンカーバスターでレーザー誘導方式を採用し、空軍では1991年から供用開始している。湾岸戦争宙にBLU-109/Bではイラクの深度標的に到達できないとの懸念があった。いそぎGBU-28/BでBLU-113/B弾頭がつけられた。
その後GBU-28/BがNATOによるセルビア空爆で米軍が1999年に使い、アフガニスタンやイラクで2002年、2003年それぞれ投下された。米政府はその後同装備をイスラエルと南朝鮮に輸出している。
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F-15E がGBU-28/B バンカーバスター爆弾を投下した。
弾頭にBLU-122/Bを付けた現行のGBU-28/Bの正確な性能については極秘扱いとなっているが、初期設計では地表下150フィートまで、さらに強化コンクリート15フィートを貫徹する能力があるといわれていた。GBU-72/Bはこれを上回る威力がある。
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BLU-109/Bバンカーバスター弾頭を付けたGBU-31/B、GBU9-28B、GBU-57/B大型貫通爆弾の性能を比較した図。
現時点でGBU-28/Bは通常弾頭のバンカーバスターとしては先に述べたGBU-31/Bと30,000ポンド級のGBU-57/B大型貫通爆弾(MOP)の中間に位置する装備となっている。空軍が保有するMOPの数はわずかで、B-2スピリットが唯一同装備の運用が可能な機材だ。核弾頭付き投下爆弾でバンカーバスター機能があるのはB61-11、B83-1があるが、通常の作戦には投入せず、しかも精密誘導方式でもない。
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GBU-57/B MOPを投下するB-2
そのためGBU-72/Bのバンカーバスター機能向上でGBU-31/Bで対応不能だがMOPの投入までは必要がない標的への攻撃が期待される。将来の戦役では深部構築された標的が不足する事態は考えにくいのであり、イランや北朝鮮がまず想定されるが、投入手段で選択の幅が広がり現地で重宝されるはずだ。
さらに、GBU-72/BでJDAMの GPS/INS 誘導方式を採用していることで米空軍は全天候下での作戦実行が可能となる。GBU-28/Bのレーザー誘導では雲や霧など天候条件に精度が左右されかねない。GBU-72/Bでは発射機体が標的から離れた地点で投下できることが機体の生存性を高める。GPS/INS誘導方式でGBU-72/Bは固定目標の実に対応することになるが、地下深くに構築された強固な施設はどう見ても移動目標ではないだろう。
付け加えれば、近年の米軍の対ISIS作戦で2,000ポンド級バンカーバスター爆弾が強化標的とは言えない対象に日常的にイラクで投入されている。トンネル網や地上建屋も標的にしている。とくに後者にバンカーバスターが党かされ、遅延爆発させることで付近の建物内の住民への付随被害を押さえる効果がある。
GBU-28/Bに続き、イスラエルや南朝鮮といった米同盟国友邦国がGBU-72/Bの取得にも関心を示すだろう。サウジアラビア、アラブ首長国連邦も将来のイラン強化標的の攻撃を想定し同装備品を紹介されるだろう。
現時点では米空軍は追加テストフライトなどGBU-72/Bの運用テストは2022年まで続くとしている。本日の発表で空軍が最新のバンカーバスター爆弾の実用化に大きく近づいていることが明らかになった。■
The Air Force's New 5,000-Pound Bunker Buster Bomb Breaks Cover
BY JOSEPH TREVITHICK OCTOBER 12, 2021
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