第二次世界大戦の太平洋で水上機が多くの命を救った。米軍のPBY-4カタリナは、海上に墜落した飛行士を拾い上げ、敵艦の捜索任務や潜水艦を狩る任務をこなした。飛行場が点在し、空中給油の発明前、広大な太平洋では水上発着可能な水上機は欠かせない存在であった。
しかし、水上機は陸上機や艦載機に比べ、重く、扱いにくく、性能も劣りがちだった。冷戦時代にソ連が水陸両用哨戒機Be-12を飛ばしたのを除けば、水上機の軍事利用はほぼ行われなくなった。
しかし、水上機が復権しつつある。第二次太平洋戦争が勃発すれば、今回は中国と戦うことになるが、飛行場のない広い海域で戦うことになる。さらに悪いことに、中国の長距離兵器で飛行場が破壊されたり、損傷を受ける可能性もある。日本はUS-2水陸両用機で実績をあげており、航空機乗務員の水上救助などの任務に役立てている。
米軍も水上機がほしいところだ。しかも、装甲車両を運べる大型水上機だ。巨大な水上輸送機がもたらすメリットは非常に大きい。飛行場がないところ、あるいは敵の砲撃で飛行場が破壊されたところに、兵員や装備を運べる。また、水陸両用装甲車を遠隔地に空輸し、奇襲攻撃ができる。
リバティリフター構想
国防総省の研究機関DARPAがつけた「リバティ・リフター」という名前からして、第二次世界大戦を連想させるようなプロジェクトである。しかし、DARPAが実際に想定するのは、あくまでも近代的な航空機だ。
問題は、米軍が大量輸送とロジスティクスを海上輸送に頼っていることである。
「大量のペイロードを運ぶには非常に効率的だが、従来型の海上輸送は脅威に弱く、機能する港湾を必要とし、輸送時間が長くなる」とDARPAの公募要項にある。
「従来型の航空輸送は、桁違いに速いが、高価で、海上作戦への支援能力が限られる。さらに、航空機は長い滑走路を必要とし、垂直離着陸機(VTOL)やその他の海上航空機は積載量で制限を受ける」。
解決策としてDARPAが求めるのは、水面近くを飛行する際に翼が生み出す揚力を利用する、地面効果を利用した設計だ。最も有名な例は、対艦ミサイルを搭載した300トン、全長242フィートの巨大な地面効果機で、飛行機というより船だったエクラノプラン(別名「カスピ海の怪物」)だ。
しかし、エクラノプランを真似るものではない。
「これらの機体は高速(250ノット以上)で滑走路に依存しないが、対地効果飛行の制御性は穏やかな海域(例えばカスピ海)での運用に限られる」とDARPAは説明。「さらに、地面効果での高速運転は、混雑した環境で衝突の可能性を増加させる」。
DARPAは、水上飛行機と地面効果機を組み合わせた、ハイブリッド設計を目指しているようだ。最終的な形状は不明だが、大型機になるだろう。DARPA仕様では、米海兵隊の水陸両用戦闘車2台、または20フィートコンテナ6個を搭載できることがある。つまり、C-17輸送機に近い機体サイズになる。
リバティリフターではその他のスペックにも目を見張るものがある。貨物積載量は90トンとC-17並み、航続距離は45トン積載時で4000海里以上、フェリー航続距離は6500海里以上、さらに高度1万フィート以上で運用が可能とある。
また、海面状況4(中程度の海面状態)での離着水、海面状況5(中程度の荒海面)までの対地効果飛行が求められている。さらに「悪天候や障害物の回避、一部の地形上の飛行、運用の柔軟性を可能にするため、持続的な非加圧飛行」を行うものとある。
興味深いことに、DARPAによれば、リバティリフターは「最大4〜6週間の海上運用」が可能でなければならないとある。飛行場のない遠隔地で活動し、特殊作戦部隊や諜報任務の海上基地として機能する航空機/ボートを示唆している。
水上機を武装したら
DARPAがリバティリフターの武装について言及していないことが重要だ。おそらく、第二次世界大戦における水上機の戦闘実績を反映しているのだろう。カタリナ含む水上機は、対潜哨戒や無防備商船への攻撃には有効だった。しかし、浮体構造の重量が戦闘能力を低下させた。日本が開発したA6M2零戦の水上機型は、ドッグファイターとしてはお粗末なものであった。
しかし、アメリカ空軍は、C-130などの貨物機に巡航ミサイルを搭載する計画を進めている。輸送機は軍需物資を大量搭載でき、また、スタンドオフ兵器により、敵の防空圏外に安全にとどまることができる。ミサイルを搭載したリバティリフターは強力な武器となる。とはいえ非武装の輸送機としても、装甲車両を遠隔地に運ぶ水上機は、非常に意味のある装備となる。■
Giant seaplanes may make a return as great-power competition
in the Pacific heats up - Sandboxx
Michael Peck | June 3, 2022
Michael Peck is a contributing writer
for Forbes. His work has appeared in The National Interest, 1945, Foreign
Policy Magazine, Defense News and other publications. He can be found on
Twitter and Linkedin.
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。