スキップしてメイン コンテンツに移動

ロシアが建造中のヘリコプター強襲揚陸艦ミトロファン・モスカレンコに注目。完成後は黒海艦隊旗艦。


Russia Builds new Drone Carrying Hypersonic Missile Firing Amphibious Assault Ship


(Picture source: Yandex account of ОНИ)



最新のプロジェクト23900型強襲揚陸艦「ミトロファン・モスカレンコ」は、ケルチ造船所「ザリヴ」で建造完了後、黒海艦隊の旗艦となる。

シアは海域支配に重点を置いており、プーチンは海上輸送で重要な海域に新しい任務部隊を配置する一方、防衛投資の中心は海洋能力を有する艦隊整備に置いている。ウクライナ戦争は、ロシアの利害を劇的に増加させた。対外貿易と商品の85%以上を海上輸送でまかなうロシアは、北洋航路に注目し、海底通信ケーブル(SCC)を敷設済みの各地域で演習を行っている。ウクライナ戦争が長期戦になり、ロシアは身を粉にして臨む中で、プーチンは海軍力増強を強く望んでいる。

 

ミトロファン・モスカレンコとは

2020年7月20日、ロシアは新型強襲揚陸艦「ミトロファン・モスカレンコ」[1]を発表した。その後、造船所が建造を開始し、建造が予定通りに進んでいると報告された。最新のプロジェクト23900強襲揚陸艦「ミトロファン・モスカレンコ」は、ケルチ造船所「Zaliv」での建造後に喪失したMoskvaに代わり黒海艦隊の旗艦となる。

 アレクセイ・クリヴォルチコAlexei Krivoruchko国防副大臣によると、新型強襲揚陸艦の排水量は約44,000トンに達するという。他の艦船から発射される極超音速ミサイル「ジルコン」の攻撃任務と目標指定を行うため、最大4機のスホーイS-70オホトニックBドローンを搭載する。また、ヘリ空母である「ミトロファン・モスカレンコ」は、様々な用途の重ヘリ16機を搭載し、1000人以上の海兵隊員を輸送できるとされる。

 強襲揚陸艦は上陸舟艇や装甲車を輸送するためドックを装備する。ロシアのヘリコプター艦は、プロジェクト23900に従って建造されており、ゼレノドレスク設計局によって開発されている。伝えられるところによれば、この艦の全長は220メートル以上になる。この寸法により、最大20機のヘリコプターと海兵隊2個大隊を乗せることができるはずだ。ロシアのヘリ空母は世界最大の揚陸艦を目指す可能性がある。

 また、その大きさにより、あらゆる水路、海峡、湾岸地域を封鎖できます。おそらく、アメリカ海軍のように、ロシアもプロジェクト23900に垂直離着陸機(VTOL)を装備する計画なのだろう。

 Project 23900の最終的な外観は、フランスの汎用強襲揚陸艦(UDC)ミストラルと同様にプロペラ操舵コラムを使うことから、統一電力システムが採用されているのだろう。全体アーキテクチャや、プロジェクト23900の艦寸法がミストラルUDCに近いという事実と合わせると、ミストラルが23900設計のモデルになったと結論付けることができる。

 ロシアを代表するヘリコプターの設計・製造会社であるロシアン・ヘリコプターズ・ホールディングは、プロジェクト23900用に甲板型Ka-52KカトランKatranのテストを再開していると、同ホールディングのアンドレイ・ボギンスキーAndrei Boginsky総支配人がインタファクスに語っている。「総司令官がヘリ空母起工式に参加しました。Ka-52Kの着艦テストは完了しました。あとは空母との接続の問題を処理するのみです。国防省との整合性もとれました」。2019年11月、Rostec航空クラスターの責任者であるアナトリ・セルジューコフAnatoly Serdyukovは、Interfaxとのインタビューで、空母が完成していないが、Ka-52K艦載ヘリコプターの作業は継続し、機体納入は現行の国家軍備計画(SAP)により2027年まで保証されていると述べた。

 戦闘ヘリコプターKa-52Kは、パトロール、ビーチに着陸時に上陸部隊の火力支援、前線と戦術的深部で部隊支援タスク用に設計されている。「カトラン」は以前、重航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」の地中海作戦の一環で試験飛行を成功させた。

 ロシアの軍事専門家で歴史家ドミトリー・ボルテンコフは、イズベスチアのインタビューで、強力な戦闘艦集団を作る計画を指摘している。プロジェクト23900を含む第1グループは地中海に配備され、ウラジオストクとミサイル巡洋艦「ヴァリャーグ」が率いる第2グループは東南アジア沿岸を巡航する予定だ。

 

Picture1

 

 ロシア海軍総司令官は、「ミトロファン・モスカレンコ」艦の組織構成と乗組員編成に取り組んでいる。乗組員は、水兵のほか、航空、海兵隊が含まれる。その中で注目されるのは、航空技術職だ。ロシアの基地から離れた場所で装備の戦闘能力を維持し、限られた道具と設備で窮屈な状況の中、あらゆる複雑な修理を行わなければならないため、専門家の資格は最高の条件を満たしていなければならない。チームは2022年に完全な人員配置になる予定である。訓練プログラムは作成済みとされる。その承認後、乗員は訓練を開始し、その後、建造後の艦で実際の訓練を行う。

 フランスのミストラル型ヘリ空母に代わるものとして開発されたプロジェクト23900「ミトロファン・モスカレンコ」強襲揚陸艦は、7月20日にクリミアのザリブ工場で海軍軍艦として起工された。プーチンは定礎式でのスピーチで、次のように述べた。「新型艦は、先進的な兵器システム、制御システム、長距離通信システムを装備する。海軍の戦闘能力を大幅に強化し、戦略的能力を向上させるだろう。海軍は常にロシアの国境を確実に守ってきた。現在では、ロシアの安全保障に極めて重要な役割を果たし、国益をしっかりと守り、世界の戦略的バランスと安定の維持に役立っている。ロシアは世界最長の海岸線を持ち、3つの海に面しているため、我々は、有望な武器や装備を備えた艦艇を建造し、現代の戦闘に耐える艦隊の整備を続けている。この8年間で、艦隊には200隻を超える各種船舶、ボート、艦艇があることに注目したい。2027年までに海軍に占める近代的な艦船の割合が70%を超えるように、国家軍備計画の施策を実行し続ける必要がある。

 

 

Russia Builds new Drone Carrying Hypersonic Missile Firing Amphibious Assault Ship - Warrior Maven: Center for Military Modernization


MARINA DIERKS

JUN 21, 2022

 

By Marina Dierks -- Marina Dierks is a Warrior Maven Fellow, Expert Russian Linguist and Russia Analyst. A native speaker, who has lived in Russia for over 20 years, she has trained the military in the Russian language and has written analysis on Russian affairs, Russia’s ethnic and religious issues, history and culture. A linguist with experience in intelligence collection, analysis and interpretation, Marina has also supported the US Coast Guard Auxiliary as a Flotilla Staff Officer for several years.

 

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...