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オーストラリア前国防相の爆弾発言でAUKUSの行方に黄信号。原子力潜水艦が登場するのは2040年代?労働党政権が見直しをかける可能性も。

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ピーター・ダットンが2030年までに米国製潜水艦2隻を購入する計画が存在していたと発言し、物議を醸している

 

 

ーストラリアの前国防相は、2030年までに米ヴァージニア級原子力攻撃型潜水艦2隻を取得する計画が前政権にあったと発言した。この暴露でオーストラリア政府関係者が動揺し、国内開発の新型原子力潜水艦(SSN)の購入構想を含む、米国および英国との新しいパートナーシップ「AUKUS」が頓挫しないか懸念が出てきた。供用中のコリンズ級ディーゼル電気潜水艦の後継艦を探すオーストラリアの複雑なプロセスで最新の進展となった。オーストラリアは、フランス設計の新型通常動力型アタック級潜水艦契約から離脱している。

 ピーター・ダットン前国防相(自由党党首)は、昨日オーストラリア紙に寄稿し、自身の主張を展開した。ダットンは、米国がヴァージニア級 SSN 2隻を 2020年代末までに供給すると期待していたと書き、「米国がその方向で促進しただろう」と見ている。

 

オーストラリア、イプスウィッチのアンバーリー豪空軍基地で行われたメダル授与式でスピーチするピーター・ダットン。 Photo by Dan Peled/Getty Images

 

 ダットンは、先月の選挙で勝利し政権を率いる労働党を批判し、前連立政権が残っていれば、ヴァージニア級取得を「7~8月頃に発表できる立場だったかもしれない」と主張した。その後、ラジオ局で「労働党がAUKUSや潜水艦事案から手を引こうとすれば国益に反し本当に心配だ」と述べた。

 ダットンの内容では、前政権がヴァージニア級潜水艦の購入を計画していたのか、リースする計画なのかは不明だ。ダットンは昨年、米原子力潜水艦をリースするのは暫定的に能力を獲得する方法であり、間違いなく可能だと述べた。これは、オーストラリアのトニー・アボット元首相を含む他の人々も公然と提唱していた。

 ダットンは、原子力潜水艦の代わりに、労働党政権は現在、通常動力艦をより多く取得しようとしていると主張し、各艦は現地建造されるようだとした。

 

2019年2月、西オーストラリア州コックバーン湾を通過中のコリンズ級潜水艦HMAS Collins、HMAS Farncomb、HMAS Dechaineux、HMAS Sheeanが隊列を組んで航行した。Australian Department of Defense

 

 前国防相の言葉は、政府関係者やアナリストから不評を買っているが、主な理由は、オーストラリアが新しい潜水艦をどこから調達するか、公には未決定のためだ。

 ダットンの論説は、リチャード・マールズRichard Marles新国防相が初の国産原子力潜水艦を、2038年までに建造するとした前政権の見込みは楽観的すぎると指摘したことに続くものだ。「現実には2040年代半ばに納入される可能性が高いというのが前政権退陣時での大方の予想だったと思う」と、マールズは今週初め、オーストラリアの新聞「シドニー・モーニング・ヘラルド」と「エイジ」に語った。

 「このギャップをどう埋めるかを考えねばならない。それしか言えない。方法について私は心を開いている」とマールズは付け加えた。

 アジア太平洋地域の安全保障環境、特に急速に増大する中国の脅威に目を向け、オーストラリア政府は昨年、フランスのナバル・グループとのSEA1000契約で、アタック級潜水艦12隻を調達する計画を破棄した。2007年に始まった契約は、スケジュールの遅れとコスト膨張に悩まされていた。こうした問題を背景に、オーストラリア政府当局は新原潜計画の発表に先立ち、既存のコリンズ級潜水艦の延命計画を明らかにしていた。

 オーストラリア政府がアタック級を捨て、新たに原子力潜水艦を保有する決定をしたのは予想外だったが、同国の国家安全保障上での優先事項と地理的位置に照らせば、多くの点で理に適う。原子力潜水艦は、航続距離、潜水時間、速度、全体的な耐久性において、空気独立推進システムを備えた先進的な通常動力艦と比較しても、追加的な利点を多数提供する。しかし、原子力はコストが高く、原子力推進システムには大規模ンフラと産業基盤が必要となる。

 昨年9月に発表された新型SSN取得のスケジュールには、英米両政府が豪州の取得に向けた「最適な道筋」を探るため1年半の期間が設けられている。その間に、英アスチュート級の派生型、米ヴァージニア級、米海軍のSSN(X)、あるいは全く別の設計のいずれかを選択する予想があった。

 

空母打撃群21(CSG21)展開中の空母HMSクイーン・エリザベスを背景にイギリス海軍アストゥート級潜水艦が浮上航行したCrown Copyright

 

 オーストラリア政府関係者が懸念するのは、ダットンがこうした意思決定プロセスを覆し、AUKUSパートナーシップの整合性を損ねる可能性だ。安全保障条約は、3国間の広範な軍事協力を想定している。特に、ヴァージニア級の取得について米国と秘密裏に協議していたようなので、英国との関係が脅かされる可能性が懸念される。

 オーストラリア放送協会(ABC)は、匿名を条件にAUKUS関係者数名に話を聞いたところ、ダットンによる暴露の影響を懸念しているとした。

 ひとりの関係者は、ダットン発言は、オーストラリア、アメリカ、イギリスがコリンズ級の後継艦で年内に共同発表する計画を「台無しにした」と述べた。

 同関係者は付け加え、オーストラリア海軍にヴァージニア級新型艦船2隻を提供することが困難であることを強調している。米国向けヴァージニア級潜水艦は、コネチカット州グロトンのジェネラル・ダイナミクス・エレクトリック・ボートと、ヴァージニア州ニューポートニュースのハンティントン・インガルス・インダストリーズ2社の造船所で建造されている。

 

建造中のヴァージニア級潜水艦「USSデラウェア」。 U.S. Navy

 

 オーストラリア戦略政策研究所の主任研究員マーカス・ヘリヤーMarcus Hellyerも同様に、ガーディアン・オーストラリア紙に、ダットンは現実を反映しない「アイデアやコンセプトを打ち出した」と批判している。ヘリヤーはさらに、「こんな計画があるはずがない。米政府もオーストラリアも、誰も同意していないのだから」と述べた。

 ダットン発言は、AUKUSのパートナーシップに悪影響を及ぼす可能性があるだけでなく、コリンズ級に代わるプロジェクト全体を遅らせる効果が心配されている。ダットン自身は、現在の「ディーゼル電気潜水艦は、2035年以降、南シナ海で中国に対抗できなくなる」と発言しており、原子力推進の有能な後継艦調達が優先事項となっている。

 南シナ海での中国の軍事活動は、オーストラリアで特にホットな話題である。先週も中国のJ-16フランカー戦闘機がオーストラリアのP-8Aポセイドン哨戒機にチャフを放出し、オーストラリア当局が「危険な行動」だと述べたばかりだ。

 

オーストラリア空軍のP-8Aポセイドン海上哨戒機。 Australian Department of Defense

 

 マールズ国防相兼副首相は記者団に対し、「南シナ海の軍事化が進むのを見たくない」と述べた。「この海はオーストラリアと深くつながり、貿易が行われている」。

 オーストラリアのSSN調達計画で、イギリスがどこに位置づけられるのか、イギリスがプログラムの一部になる道があるのか、正確には不明だ。オーストラリアがアタック級を廃棄し原潜を採用する計画を発表した直後、イギリスはイギリス海軍の現在のアスチュート級SSNに代わる次世代原子力潜水艦計画に着手したと宣言した。新計画は現在、潜水艦核代替計画(SSNR)と呼ばれ、少なくとも英豪両国に合わせた全く新しい原子力設計、あるいはSSNRのサブクラスに豪州向け機能を盛り込む可能性があると考えられていた。

 西オーストラリア大学のピーター・ディーン教授Dr. Peter Dean(防衛学)は ABC にこう語っている。「英国は自国潜水艦が選択肢から外れる可能性を知って嬉しくないだろうし、米議会や国防総省などでも、可能性を示す記事を読んで非常に興味を持った人がたくさんいるはずだ」。

 労働党の公式路線について、ダットン発言を受けて、マールズ国防相兼副首相が次のように述べている。「このような暴挙は国益を損なう。この発言はAUKUS合意を損なう」。

 マールズは、コリンズ級に代わり取得するSSNは未決定と繰り返し、「すべての選択肢がテーブルの上に残っている」と述べた。

 

5月23日、オーストラリア・キャンベラで就任式を終えたペニー・ウォン外相、ジム・チャルマーズ財務相、アンソニー・アルバネーゼ首相、リチャード・マールズ副首相。Photo by David Gray/Getty Images

 

 オーストラリア国防総省は、今回の動きについてコメントを出していない。しかし、新型原子力潜水艦導入という野心的な計画で、ねじれがさらに生じる可能性は高い観がある。中国の脅威が高まる中、コリンズ級は老朽化する一方だ。政治的な対立がなくても、SSNのように複雑で特殊な艦の建造、導入は、必要なインフラ整備は言うまでもなく、一筋縄でいかない。■

 

 

Australia Was Poised To Get Virginia Class Nuclear Submarines Says Former Defense Minister

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BYJOSEPH TREVITHICK, THOMAS NEWDICKJUN 10, 2022 2:33 PM

THE WAR ZONE

 


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