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ウクライナは勝利の日まで屈しない、クレーバ外相のフォーリンアフェアズ寄稿全文をご紹介

 

ブリンケン国務長官とポーランド国境で会見した筆者。The author, right, with Blinken at the Ukrainian-Polish border crossing in Korczowa, Poland, March 2022

Olivier Douliery / Pool / Reuters

 

クライナにおけるロシアの全面的な侵略戦争が4カ月続くなか、危険な取引への要求が増えてきた。疲労が高まり、注目が集まるにつれ、平和と経済的安定のためウクライナを売り渡す提案をするクレムリン寄り論者が増えている。平和主義者や現実主義者を装っているが、ロシア帝国主義や戦争犯罪の手助けをしていると理解した方がよい。

紛争が長引けば、紛争への関心を人々や政府が失うのは当然だ。歴史上、何度も繰り返されてきた過程だ。2011年にカダフィ政権が崩壊した後、世界はリビア戦に関心を示さなくなった。シリアやイエメンなど、かつて一面を飾った紛争からも手を引いた。そして、2015年以降、世界はウクライナへ関心をなくした。当時から同国東部の支配をめぐりロシア軍と戦いが続いていたにもかかわらず。

しかし、現在のロシアの侵略は以前の侵略より深刻で、世界は目を背けているわけにはいかない。なぜなら、プーチン大統領の野望は、ウクライナ全土を掌握することにとどまらないからだ。ウクライナの民族性を破壊し、地図上から消し去りたいと考えている。ウクライナ国民を虐殺し、アイデンティティーを破壊する。言い換えれば、彼は大量虐殺に手を染めているのだ。

戦争に嫌気がさすあまり誤解を招きかねないシナリオに乗らないよう、西側諸国はウクライナの勝利への道を正しく理解し、それに従う形で支援するべきだ。今回の戦争は存続を左右するものであり、ウクライナは戦う意欲にあふれている。適切に武装すれば、疲弊しているプーチン軍を限界点まで引き延ばせる。ウクライナの南部東部の両方でロシア軍に反撃し、プーチンにどちらの利益を守るか決断させることができる。しかし、そのためには、米国と欧州の同盟国が適切な量の最新鋭重火器を迅速供給する必要がある。また、ロシアへの制裁を維持・強化せねばならない。そして重要なことは、プーチンが譲歩する前に、プーチンを助けかねない外交的解決を求める声を無視することだ。

プーチンの侵略に屈すれば、ウクライナをさらに破壊し、世界の別の場所への攻撃を可能にし、世界秩序の書き換えを認めることになる。逆にウクライナがロシア軍を十分に後退させれば、プーチンは交渉テーブルに着き、誠実な対応を余儀なくされるかもしれない。しかし、そこに至るには、西側諸国が一つの結果、すなわちウクライナの完全勝利に向け忍耐強く献身的に取り組むことが必要だ。

一歩も引かず

ロシア軍がウクライナ国境を越えて押し寄せた瞬間から、西側論客にモスクワとの妥協を求める者がいた。私たちはこの種の提案には慣れており、2014年から2022年にかけ何度も耳にしてきた。しかし、ここ数週間、こうした声が著名な外交エリートから出始めている。6月上旬、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は西側諸国が戦争を終わらせるために「出口のランプを作る」ことができるよう、「ロシアに恥をかかせてはならない」と述べた。5月の世界経済フォーラムで、キッシンジャー元米国国務長官がさらに踏み込み、ウクライナは平和と引き換えにロシアに領土を割譲すべきとまで主張した。

こうした発言の前提には、ウクライナがいくら戦ってもモスクワ軍に勝てないという考えがある。しかし、この考え方は間違っている。ウクライナはチェルニーヒウ、ハリキウ、キーウ、スミの戦いで重要な勝利を収め、プーチンの電撃作戦を失敗させ、強さを証明してきた。これらの勝利は他方でウクライナ軍に大きな代償となったが、それを失った場合の代償は、はるかに、はるかに大きかったであろうと、私たちは理解している。ロシアの勝利がウクライナの村や町にどんな意味を持つか、私たちはよく知っている。3月にロシア軍占領軍によって何百人ものウクライナ人が残酷に虐殺されたブチャを見ればわかる。

残念ながら、プーチンの病んだ帝国主義が、衝撃的なほど高い代償をロシアに生んでいるにもかかわらず、ロシアは戦争にコミットし続けている。ロシアはすでに、ソ連がアフガニスタンで10年間の3倍の兵士を失ったが、東部のドネツクとルハンスク(合わせてドンバスと呼ぶ)を占領し、ウクライナ南部の支配を維持するため、兵士を犠牲にし続けている。戦死者数は、ロシアやウクライナにとどまらず、ヨーロッパにも拡大する可能性がある。ウクライナの穀物を封鎖することで制裁の緩和を狙えば、プーチンは途上国全体に飢饉を誘発する可能性がある。

ウクライナには重火器が必要だ

この惨状にもかかわらず、ロシア大統領は上機嫌のようだ。最近プーチンと話した指導者によると、彼は「特別作戦」が「目標を達成する」と確信しているようだ。その理由を理解するのは難しくない。ロシアの侵略者は、ドンバスで完全な無差別砲撃に頼ることで、這い上がれた。プーチンは、自らをロシア帝国で最も有名な征服者ピョートル大帝になぞらえ始めた。ドンバスの支配、ウクライナの支配のいずれにもこだわらないとの不吉な宣言だ。

プーチンの拡張主義を終わらせる最も効果的な方法は、もちろん、プーチンを東ウクライナで阻止し、併合を狙う南ウクライナから占領軍を追い出すことだ。そのためには、ウクライナ国内でプーチンを打ち負かすのを支援してもらう必要がある。バイデン米政権は、ウクライナへの武器供与を容易にする歴史的な新レンド・リース制度など、課題達成に役立つ画期的な決定を下した。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領の呼びかけに応え、米国は5月に多連装ロケットシステム4基の提供を決定した。筆者のカウンターパートであり友人でもあるアントニー・ブリンケン米国国務長官は、これらの措置の作成に密接に関わり、ウクライナの軍事指導者はロイド・オースティン米国国防長官と活発に連絡を取り合っている。米国統合参謀本部議長のマーク・ミリー大将も、ウクライナの目的を非常によく理解してくれている。

今回の支援は、その第一歩として非常に重要で、感謝している。しかし、もっと早くら援助を受けていたらと思うし、量もまだ少なすぎる。今こそ、政治的な決断で、ゲームを変える行動に移さねばならない。ロシアの大砲は、前線の最重要な要素で、1対15でウクライナを圧倒しており、米国製ロケットシステム数基では、ウクライナは優位に立てないし、戦況を有利にできない。最も緊急に必要なのは、多連装ロケットシステムや各種155ミリ砲数百門だ。これらがあれば、ロシアの砲撃連射を抑制できる。しかし、砲撃を止めることだけがウクライナの関心事ではない。対艦ミサイル、戦車、装甲車、防空、戦闘機など、効果的な反撃2各種武器が必要だ。

つまり、「負けない」のではなく、「勝てる」前提を欧米が裏付ける武器が必要なのだ。

自由のもと生きる、簡単に負けない

侵略が始まって以来、ウクライナは何度もロシアと外交的解決を図ろうとしてきた。しかし、プーチンは、戦争が長引けば長引くほど、欧米のウクライナ支援が薄れると見て、意味のある話し合いを拒否した。数カ月にわたる本格的な戦争で疲弊するのは当然だ。しかし、ロシアの戦争は大量虐殺の意図で動いているので、ウクライナと西側諸国はロシアの要求に同意できない。プーチンが侵攻2日前に宣言したように、ウクライナの存在自体が間違いで、ソ連は地図上に境界線を引いてウクライナを「作った」のだから、ウクライナは消滅させなければならない。ウクライナ人はロシア人になるか、死ぬかの二者択一だという。

プーチンはこの約束を実行に移した。領土を奪った後、ロシア軍は連邦保安庁作成のた殺害リストで、該当者を捜索している。ウライナ語や歴史の教員、市民社会活動家、人権擁護者、元ウクライナ兵、地方公共団体など、多数を拷問、処刑してきた。道路標識をウクライナ語からロシア語に変え、ウクライナの記念碑を破壊し、ウクライナのテレビ放送を禁止し、学校でウクライナ語使用を禁止している。

プーチンの考えでは、ウクライナ人はロシア人になるか、殺されるか、のどちらかなのだ。

私たちウクライナは、この残忍なキャンペーンに驚いていない。ロシアについて深い知識を持っており、ロシアの知識人や国営メディアがウクライナへ憎悪を煽るのを何世紀もわ目の当たりにしてきた。また、モスクワの敵意が国境を越えて広がる様子も見てきた。ロシアのメディアは日常的に、近隣諸国や欧米諸国、ユダヤ人やLGBTQを含むマイノリティグループを非難している。ロシアの政治家たちは、他者に対して一般的かつ根強い嫌悪感を抱いている。

この憎悪こそ、西側諸国が白旗を振るわけにはいかないもう一つの理由だ。ロシア軍の勝利は、さらに何千人もの罪のないウクライナ人の拷問、レイプ、殺人を可能にするだけではない。自由主義の価値観が損なわれることになる。ロシアが中央ヨーロッパを脅かすことになるだろう。さらにロシアが西側世界全体を脅かすようになる。EUとNATOにとって、強化されたロシアや親ロシア派の代理人を東部国境に多く配置することほど危険なことはないだろう。

欧州と米国にとってありがたいのは、ウクライナはこの闇の勢力と戦っており、勝つまで戦い続ける意欲を持っている。しかし、われわれだけで成功できない。西側諸国は、われわれの失敗がもたらす利害と結果を理解する必要がある。もしウクライナが負ければ、ウクライナだけでなく、ヨーロッパの繁栄も安全も失われる。

悪いからさらに悪いへ

ウクライナが名目上の平和と引き換えに国民、領土、主権を犠牲にする提案は非現実的であり、妥協の声が最近高まっているのは疲労の副産物に過ぎない。筆者はこれまで、アフリカ、アラブ、アジアの国々の意思決定者と話をしたことがある。中には、ウクライナ支持を表明した上で、抵抗をやめてはどうかと丁寧に提案する人もいた。ロシアの海上封鎖で港に閉じ込められた穀物が欲しい、そのためウクライナの独立を犠牲にしても構わない、というのだ。ロシアが引き起こした経済危機は、インフレやエネルギー価格高騰などで、同様の懸念を表明する他の政策立案者もいる。

食糧やエネルギー価格の高騰は深刻だが、モスクワに屈服しても解決策にはならない。ロシアは、力で世界を作り変えようとする革命的な勢力だ。ロシアは、アフリカ、アラブ、アジアの国々を、自国の軍隊と代理人を通して、積極的に不安定化させようとしている。各地の紛争は人道的危機を生み出しており、ウクライナが敗れれば、さらに悪化すると予想される。勝利すれば、プーチンはさらに不安を煽り、途上国全体にさらなる災害をもたらすだろう。

欧米は、ロシアの国際海運業へのアクセスを断つ必要がある。

プーチンの攻撃は途上国にとどまらないだろう。米国や欧州の政治に、もっと露骨に介入してくるだろう。ウクライナ南部の制圧に成功すれば、モルドバへ侵攻し、さらに大陸の奥深くまで進軍するかもしれない。西バルカン半島で新たな戦争が勃発する可能性さえある。

したがって、西側諸国は、受け入れがたい条件の和平策を提案するのではなく、ウクライナの勝利に貢献しなければならない。それは、ロシア軍を撃退するため必要な重火器をウクライナに提供するだけでなく、ロシアにへの制裁の維持・強化を意味する。具体的には、エナジー全面禁輸と国際海運業へのアクセスを遮断し、ロシアからの輸出を停止させなければならない。後者は一見難しそうに見えるが、実は実現可能性が高い。輸出主導型経済のロシアは、海外への商品配送を外国船団に大きく依存しており、外国船団がロシアにサービスを提供しなくなる可能性があるからだ。

こうした経済措置がカギとなる。制裁はロシア経済を弱体化させ、戦争継続の妨げになっている。しかし、モスクワはまだ自信を持っており、西側諸国は、制裁疲れを起こしているようなときではない。

勝利への道すじ

ウクライナ軍の初期の成功にもかかわらず、西側政策立案者にとって、大規模で装備の整ったロシア軍にどうすれば勝てるかを思い描くのは難しいかもしれない。しかし、ウクライナには勝利への道がある。十分な支援があれば、ウクライナはロシアの進出を食い止めると同時に、多くの領土を奪還できる。

東部では、高性能重火器でウクライナを優位にし、モスクワのドンバス侵攻を徐々に停滞させることができる。この地域でのクレムリンの成果は見出しになるかもしれないが、あくまでも限定的であり、非常に多くのロシア戦死者を出していることを忘れてはならない。欧米が提供する多連装ロケットシステムでロシアの大砲を破壊し、前線全体でウクライナに有利な流れを作れるかが重要なポイントになる。その後、ロシア軍を撤退させながら、国土奪還を目指す。

南部戦線では、ウクライナ軍の反撃が始まっており、最新鋭兵器で敵の防御をさらに切り崩す。ウクライナの戦略的安定の要であるケルソンを放棄せざるを得ない状況にまで追い込むことを目指す。南部と東部の両方に進出すれば、プーチンに、ドンバスにしがみつくためにケルソンやメリトポリなど南部の都市を放棄するか、ドネツクやルハンスクなど新たに占領した地域を放棄して南部を保持するかの選択を迫れられる。

ここまでの段階になれば、プーチンは停戦交渉に本腰を入れてくる可能性が高い。ウクライナの目標はロシア軍をウクライナから撤退させることであり、圧力をかけ続けてロシア軍が全占領地から撤退する交渉による解決策を受け入れるようプーチンを後押しするだろう。プーチンはキーウ周辺からロシア軍を撤退させたが、ウクライナ軍に手痛い目に遭わされたからだ。我が国の軍事力が強化され、成果が上がれば、プーチンは再びそうするはずだ。例えば、撤退を急ぐのではなく、組織的に行えば、恥ずべき必要性に迫られた行為ではなく、さらなる交渉の前の親善行為として提示するのが容易になる。プーチンは、「特別作戦」がウクライナの非軍事化と非ナチ化という目標を成功裏に達成したとも主張できる。それがどのような意味を持つかは知らないが。破壊されたウクライナの部隊や装備の画像を公開すれば、プーチンのプロパガンダマシンは成功のメッセージを強化できる。また、プロパガンダは、プーチンが撤退を、ロシア兵への人道的な扱いの表れで、一般的な平和への賢明な一歩と示すのにも役立つ。

しかし、プーチンが強硬姿勢を崩さない場合、ウクライナは、彼が誠実に交渉に応じるか、わが軍が国際的に認められたウクライナ国境に到達し安全を確保するまで、ルハンスクとドネツクにさらに踏み込む。そして、ロシア軍が撤退を選んでも、あるいは撤退を余儀なくされても、ウクライナは強者の立場でロシアと対話する。弱体化し、より建設的になったロシアと、公正な外交的解決を図る。最終的には、たとえプーチンが公的に否定しても、ウクライナの条件を受け入れざるを得なくなることを意味する。

恐れるべきは恐怖そのもののみ

欧米の意思決定者には、ウクライナへの過剰な支援に慎重な人もいる。戦場でプーチンが完敗したら、何をしでかすかわからないからだ。プーチンは危険で対処しにくい存在になる。核兵器の使用さえも懸念される。

しかし、プーチンに自殺願望があるわけではなく、ウクライナの勝利が核戦争につながることはない。このような恐怖は、クレムリン自身が戦略的な目的で意図的に煽っているのかもしれない。プーチンは心理的嫌がらせの名手で、欧米のウクライナ支援を弱めるため、不安を売り込んでいるのだろう。

米国と欧州が騙されてはいけない。ウクライナでは経験から、プーチンは失敗に直面すると、それを軽視し、隠蔽する選択をするが、倍返しがしないとわかっている。例えば、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請は、「NATO拡大を防ぐためウクライナに侵攻した」と主張するプーチンにとって、明らかに政治的敗北となった。しかし、その後にエスカレートはなかった。それどころか、ロシアのプロパガンダはその意義を最小化した。クレムリンは、キーウ撤退も明らかな失敗だったが、交渉を円滑に進めるための「親善」のジェスチャーと主張した。同じパターンが、より広い戦場での敗北にも当てはまるだろう。(ウクライナで負けたプーチンが国内の反発を最小限に抑えることができるのは、彼のプロパガンダ装置の強さによるものだ)。

プーチンに南部都市を放棄するか、ドンバスを放棄するかの選択を迫ることができる。

米国と欧州は、プーチンの感情を重視するのではなく、ウクライナの勝利のための現実的ステップに焦点を当てるべきだ。ウクライナの勝利は、世界の安全保障を高めることにつながるのを忘れてはならない。ロシアの戦力が低下し、モスクワがアフリカ、アジア、ラテンアメリカ、西バルカン半島に干渉することが難しくなる。国際法を強化し、侵略者となりうる他の勢力に、野蛮な行為は悪い結果に終わるだけと示せば、より広く世界の安定を促進することになる。欧米諸国は、ロシアの侵略者を押し返すため必要となるものをキーウに与える必要がある。

ウクライナの勝利にコミットすることは、米欧の長期的な対露戦略での不確実性を排除し、長期戦に備え、戦争疲労に悩まされることがなくなる利点が最後に生まれる。ロシアを実質的に弱体化させるウクライナによって、謙虚でより建設的なモスクワと真剣に交渉することができるとロシアはじめ各国は理解するだろう。

ウクライナはこの日を心待ちにしている。いかなる戦争も外交で終結する。しかし、その瞬間はまだ来ていない。プーチンが交渉テーブルに着く道は、もっぱら戦場での敗北にあることは明らかだ。■

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By Dmytro Kuleba

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