USN
ヴァリアント・シールド22演習で、SM-6 ミサイルが退役フリゲート艦を撃沈した
米海軍は先週のヴァリアント・シールド演習の最後に、退役フリゲート艦をスタンダード・ミサイル6(SM-6)で沈め、「マルチドメイン、多軸、長距離海上攻撃の調整」のデモンストレーションを行った。沈没演習(SINKEX)は、2週間にわたる演習のフィナーレを飾っただけでなく、SM-6で進化中の水上戦能力を示し、同ミサイルに用途が追加された。
SM-6は、航空機や巡航ミサイルのような飛翔体の脅威を撃墜する中核的な能力だけでなく、飛翔最終段階の弾道ミサイルを狙ったり、場合によっては極超音速兵器に対応したり、さらに陸上攻撃能力も備える。
6月17日に行われたSM-6の対艦任務のデモンストレーションでは、アーレイ・バーク級駆逐艦USSベンフォールド(DDG-65)がミサイル一発が発射され、退役したオリバー・ハザード・ペリー級フリゲートUSSバンデグリフトを標的にした。
バンデグリフトに激突したのはSM-6だけではありません。海軍は、「一連の実戦的なイベントで、海上環境における統合部隊の射撃と効果発揮の能力を示した」と記述し、「新兵器は通信技術とともに、サイバー効果を統合し、海上での地表目標に対する長距離、精密、致死的、圧倒的な多領域攻撃を行うためにテストされた」と主張している。
米空軍によると、ベンフォールドが発射したSM-6は「バンデグリフトの沈没に大きく影響した」というが、その他にも空母USSロナルド・レーガン(CVN-76)、ロサンゼルス級攻撃型潜水艦USSキーウエスト(SSN-722)の固定翼機やヘリ、さらに第28爆撃隊のB-1Bランサー、米海兵隊のF/A-18とF-35B戦闘機などがSINEXに参加している。
キーウェストがMk48重魚雷やハープーンを発射したのは確実だが、海兵隊F/A-18は空中発射のハープーンを搭載しているのが確認された。B-1は、AGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)または他の精密兵器を搭載していた可能性がある。F-35BもLRASMを搭載するが、海上での役割が高まっている統合直接攻撃弾(JDAM)を搭載していたようだ。
ハープーン対艦ミサイルで武装し、ヴァリアント・シールド22に参加するため、アンダーセン空軍基地で離陸準備をする米海兵隊のF/A-18Dホーネットon June 14, 2022, to participate in Valiant Shield 22. U.S. Marine Corps photo by Cpl. Tyler Harmon
SM-6による攻撃は、駆逐隊15(DESRON15)の乗組員が調整し、USSロナルド・レーガンの戦闘情報センターが交戦を主導した。
2年に1度のヴァリアント・シールド演習の2022年版は、フィリピン海のロナルド・レーガン空母打撃群を中心に行われた。同訓練は、外洋上で各種目標を探知、位置確認、追跡、交戦するため各種資産が協力するなど、共同訓練に重点を置く。今回の訓練には、前方配備中のUSSロナルド・レーガンのほか、USSエイブラハム・リンカーン(CVN-72)、強襲揚陸艦USSトリポリ(LHA-7)、各空母の航空機、護衛の駆逐艦巡洋艦が参加した。
SM-6 の対地戦使用は、海軍で比較的新しい展開だが、対艦ミサイルの重要性が再び高まる中、非常に重要な存在になる可能性がある。
SM-6は、ソフトウェアのアップグレードで、対地戦能力、航空戦能力、弾道ミサイル端末防衛能力を追加している。2016年にハワイ沖の太平洋ミサイル発射施設で駆逐艦USSジョン・ポール・ジョーンズがやはり退役フリゲート艦USSルーベン・ジェームズを標的にSM-6を発射し、初めての対艦実験となった。
また、昨年4月には、アーレイ・バーク級駆逐艦USSジョン・フィンから発射されたSM-6が、模擬地上標的に発射されるという、重要なテストが行われた。
SM-6を対艦兵器として使用できるということで、従来のハープーンより大幅に射程が長いミサイルを手に入れたこととなる。ハープーンBlockIIの射程が約75マイルであるのに対し、SM-6はその2倍以上の射程を誇る。SM-6は水上攻撃に最適化された弾頭を搭載しないが、マッハ3超の高速弾道であるため、殺傷力は向上する。誘導システムは、アクティブレーダーシーカーとGPS/慣性航法システムを組み合わせミッドコース誘導更新のデータリンクで、軍艦のような移動目標への対応に最適だ。
タイコンデロガ級誘導ミサイル巡洋艦USS Chancellorsville (CG-62) の乗組員が、ヴァリアント・シールド2022の支援でMk 141 ハープーンミサイルランチャーを搭載した。 U.S. Navy photo by Hospital Corpsman 2nd Class Jan Jason Flores
しかし、最終的には、SM-6は、国防総省が整備中の多層的な対艦ミサイル能力の一部となる。ハープーン、ネイバルストライクミサイル、AGM-158C長距離対艦ミサイル(LRASM)など亜音速巡航ミサイルと同様に、海軍は2028年以前の就役を目指す空中発射式の極超音速対艦巡航ミサイル整備にも乗り出している。また、対艦能力を持つトマホーク巡航ミサイルも復活し、米海兵隊が最初の受領者となる。米陸軍は、トマホークと地上発射型SM-6を組み合わせた中距離戦用ミサイルの配備を検討している。このように、トレーラー搭載のミサイルは、陸上だけでなく、水上艦にも対応できるようにしていく。この他にも、対地攻撃用ミサイルが機密扱いで計画中のようだ。
既存と計画中の米海軍の各ミサイルを示す説明資料。U.S. Navy
SM-6も進化を続けており、Mk41垂直発射システムをフル活用できる、大型の新型が登場する。これには直径21インチのモーターが含まれ、航続距離と速度で大幅な向上が期待されている。SM-6ブロック IB はマルチロールミサイルになる可能性が高い一方で、海軍は対地戦用として位置づけているようだ。
こうした構想は、中国やロシアなどの脅威国の急速な開発ペースを意識して推進されているのは明らかだ。中国やロシアは新型の水上戦闘艦を導入しているだけでなく、極超音速弾道ミサイルや超長距離弾道ミサイルなど、独自に対艦ミサイル開発を進めている。
SM-6が厳しい環境下でも性能を発揮できるように、米海軍はNIFC-CA(Naval Integrated Fire Control-Counter Air)構想に取り組んでいる。このアーキテクチャは、しばしば「キル・ウェブ」と呼ばれ、F-35ステルス戦闘機、E-2Dホークアイ・レーダー機、イージス艦、そしてSM-6のような各装備の特性を補完し合うよう設計される。艦艇や航空機のデータを共有し、センサーとシューターのネットワークを構築し、空母打撃群等の重要装備をよりよく防御できるとの考えだ。
2016年9月、ニューメキシコ州ホワイトサンズミサイルレンジで、F-35と海軍統合射撃統制-防空対応(NIFC-CA)アーキテクチャを統合した最初の実戦実証として、水平線超えの脅威対応でSM-6が発射された。米陸軍写真:Drew Hamilton/リリース U.S. Army photo by Drew Hamilton/Released
台湾だけでなく、南シナ海の広大な地域やその他の海域に対する主張など、中国の戦略的野心が急増中のアジア太平洋地域でこうした装備能力が関心を集めている。同時に、同地域にある米軍施設の脆弱性、特に中国との紛争の初期段階でのミサイル攻撃に懸念が高まっている。ミサイルを発射する中国水上艦艇はSM-6の標的となり、発射されたミサイルに対処する際も同じミサイルが使用される。SM-6が垂直発射システム・セルを搭載する艦艇にもたらす重要な利点は、同ミサイルが多用途に対応する使い勝手の良さだ。同ミサイルで各種ターゲットと交戦できる可能性がある。
今回のヴァリアント・シールド演習は、同海域での作戦コンセプトを証明するだけでなく、米軍の準備態勢でメッセージを残した。特に、テニアン、グアム、サイパンの戦略的前哨基地周辺での訓練に重点を置き、地域全体であらゆる有事のシナリオに対応する軍事的重要性を強調した演習になった。
同演習の企画をまとめたローガン・リドリー米海軍中佐Cmdr. Logan Ridleyは、「前方プレゼンスが重要だ」と説明し、「西太平洋でのヴァリアント・シールド演習の実施は、統合任務部隊の実戦的な任務の遂行、長距離射撃の実行、そしてその成功の可視化のための的確な機会を提供した」という。
SM-6については、水上艦攻撃兵器として、また統合された長距離統合戦力の一部として、今回の最新のデモンストレーションは、同ミサイルが万能であるかということだけでなく、アジア太平洋地域における将来起こりうる事態において、対艦兵器が果たす中心的役割を強調した形となった。■
SM-6 Missile Used To Strike Frigate During Massive Sinking Exercise In Pacific
BYTHOMAS NEWDICKJUN 20, 2022 3:56 PM
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