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NATOサミットであきらかになったこと。欧州米軍プレゼンスの強化。中国への警戒。二カ国加盟手続きの開始。安全保障はグローバルにリンクしていることを証明。

 


「ステップアップする。ステップアップしている」「NATOがこれまで以上に必要とされ、これまで同様に重要であることを証明している」(ジョー・バイデン大統領)



NATOは、スウェーデンとフィンランドに加盟の道を開き、新しい戦略的概念を同盟に導入し、米国がヨーロッパでのプレゼンスを劇的に変化させる様子を目にしている。


ほんの数カ月前まで、不可能とは言わないまでも、あり得ないと思われていたことが次々と起こっている。なんといっても、ロシアによる2月のウクライナ侵攻が、同盟の刷新に拍車をかけている。マドリード・サミットで各国首脳はこれを強調した。


「プーチン大統領がヨーロッパの平和を打ち砕き、ルールに基づく秩序の根幹を攻撃している今、米国と同盟国は歩み寄ろうとしている」。ジョー・バイデン米国大統領はサミットで「我々は歩み寄る」と述べた。「NATOはかつてないほど必要とされており、かつてないほど重要であることを証明している。


米国は本日、ポーランドに第5軍団本部前方司令部、陸軍駐屯地司令部、現地支援大隊からなる常駐部隊を創設することを皮切りに、大陸全体で兵力を増強すると発表した。国防総省は声明で、これを「NATOの東側における初の米軍部隊常駐」とし、「機甲旅団戦闘チーム、戦闘航空旅団、師団司令部」を含むポーランドでのローテーション部隊への支援を継続する。


国防次官補(国際安全保障担当)のセレステ・ワランダー Celeste Wallander は記者会見で、ポーランドへの移転について「安全保障環境の変化と、米国が東側諸国への存在、訓練、活動、支援を、二国間およびNATO戦闘群(前方8カ国にある戦闘群)を通じ維持する長期能力が必要だという認識からの重大決定だ」と述べた。


その他の戦力態勢の変更は以下の通り。

  • ルーマニア: 米国は旅団戦闘チームのローテーションを派遣し、「2022年1月の態勢と比較して、東側陣地に旅団を追加維持する」予定。

  • バルト海沿岸地域: エストニア、ラトビア、リトアニアは長年、自国への常駐を希望していたが、米国はポーランドのような常駐は確約はしなかったものの、ローテーション配備を「強化」すると約束した。

  • スペイン: ロタに駐留する米駆逐艦を6隻に増やす。

  • 英国: レイケンヒース空軍基地に F-35 を 2 個飛行隊配備する。

  • ドイツ: 米国は「防空砲兵旅団司令部、短距離防空大隊、戦闘維持支援大隊司令部、工兵旅団司令部、計約625人を前方駐留させる」。焦点は、必要に応じヨーロッパ各地の防空施設を移動させることで、ロシアの脅威に迅速対応することが目的。

  • イタリア: 米国は短距離防空砲台を前方配備させ、総人員は約65人。ドイツに駐留する大隊の下部組織となる。



国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は記者会見で、欧州に常設部隊を増やさないとする決定を擁護しつつ、「米国のプレゼンスは持続するが、何年も何年も同じ旅団戦闘チームや他の航空機飛行隊になるとは限らない」と述べた。「侵攻前より高いレベルでヨーロッパにローテーション配備できるようにする」と述べた。


ヨーロッパでの戦力増強が、アメリカが長年主張してきた太平洋への軸足転換に影響を与えるかは、時間が経たなければ答えられない問題だ。アメリカン・エンタープライズ研究所の太平洋専門家エリック・セイヤーズEric Sayersはツイッターで、「ウクライナ支援には賛成だが、アジアで何も新しいことをしないままヨーロッパ全体の配備を強化するのは、アジアは二の次、三の次という見方を強める」と指摘している。


「ヨーロッパでコミットメントをすれば、必ず資源は流れていく」とセイヤーは続ける。「アジアでは、口では立派なことを言っても、実行に移すだけの証拠がほとんどない。このことが、認識ギャップをさらに大きくしている。日本やオーストラリアは頭を悩ませている」。


戦略概念では、中国が最初の話題

本日発表されたNATOの新戦略コンセプトは、マドリード・サミットの方向性を示し、この種の文書の多くと同様、詳細より政策姿勢に重きを置いている。しかし、イェンス・ストルテンベルグ事務総長Secretary General Jens Stoltenbergが「冷戦終結後、集団防衛による抑止力について最大の見直しを行う」としたこの文書には、注目すべき点がある。


同文書は、ロシアによる2014年のウクライナ侵攻とクリミア併合の前だった2010年以来の正式な更新で、初めて中国に言及し、北京の「野心と強圧的政策」は「我々の利益、安全、価値への挑戦」と警告している。


中国の「悪意あるハイブリッドおよびサイバー作戦、対立的なレトリックと偽情報は同盟国を標的にし、同盟国の安全保障に危害を加える」と文書は続けている。「中国は主要な技術・産業分野、重要なインフラ、戦略物資、サプライチェーンで支配をめざしている。経済的な影響力を利用し、戦略的な依存関係を築き、影響力を強化する。宇宙、サイバー、海洋の各領域を含め、ルールに基づく国際秩序を破壊しようと努めている」。


さらに、特筆すべきは、「中華人民共和国とロシア連邦間の戦略的パートナーシップ深化と、ルールに基づく国際秩序を弱体化させようとする相互補強の試みは、我々の価値と利益に反する」と警告していることだ。「我々は、同盟として責任を持ち協力し、中国が欧州・大西洋の安全保障にもたらす体系的な課題に対処し、NATOが同盟国の防衛と安全を保証する能力の持続を確保する」。


カービー報道官は、正式文書の発表に先立ち、「明らかに、同盟は同様に、ロシアと中国の成長し、急成長する関係に懸念を抱いてきた。中国の不公正な貿易慣行、強制労働の使用、知的財産の窃盗、インド太平洋地域のみならず世界各地でのいじめや強制的な活動に対する懸念が高まっているのだ」と述べた。


当然ながら、同コンセプトはロシアに強硬路線をとっている。2010年文書では「NATOとロシアの真の戦略的パートナーシップ」を目指すとしていたが、今回のコンセプトでは、ロシアを「同盟国の安全保障と欧州大西洋地域の平和と安定に対する最も重大かつ直接的な脅威」と呼んでいる。


さらに、同コンセプトは、NATOの核兵器に対するコミットメントから一歩も引いていない。「核兵器が存在する限り、NATOは核同盟であり続ける。NATOの目標は、すべての人により安全な世界とし、核兵器のない世界のための安全保障環境を作り出すのが目標」と書かれている。


新規加盟国

また、同コンセプトでは、「同盟に加盟しようとする国の安全保障は、同盟の安全保障と密接に関係する。各国の独立、主権、領土の完全性を強く支持する」とも記している。


これは、加盟希望国にはNATO正式加盟国と同じ第5条による保護が与えられないかもしれないが、同盟指導部はNATOプロセスを始めたものの完全に受け入れられない国を見捨てないという明確なシグナルだ。


つまり、スウェーデンとフィンランドだ。両国は、NATOとロシアの間の一線に何年も乗った後、5月に加盟申請し、両国指導者は、同盟への参加はウクライナ侵攻の直接的な結果と述べている。しかしトルコは、3カ国間で合意に達する火曜日まで、加盟申請の開始を留保した。


その結果、NATOは本日、スウェーデンとフィンランドを加盟希望国として正式に受け入れ、30カ国すべての承認が必要な新規加盟プロセスを開始した。米国は、プロセスが迅速に進むと期待している。NATO新加盟国を加えることは、米国上院が超党派で合意できる唯一の案件かもしれない。


2カ国を同盟に加えることは、「NATOの門戸が開かれていることを示す。プーチン大統領がNATOの扉を閉ざすことに成功していないことを示す」とストルテンベルグは述べた。「彼は、自分が望むことの反対を手に入れている。彼はNATOの縮小を望んでいる。プーチン大統領は、フィンランドとスウェーデンが同盟に加わることで、より大規模なNATOを手に入れようとしているのだ」。■


US increasing troop presence in Europe, while new NATO strategy eyes China - Breaking Defense

By   AARON MEHTA

on June 29, 2022 at 12:26 PM


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