スキップしてメイン コンテンツに移動

テニアン島飛行施設の拡張工事を進める米軍はグアムが中国ミサイル攻撃を受ける事態を想定している。

 A satellite image showing Tinian International Airport on the island of Tinian on June 6, 2022, with construction work visible on the northern side of the facility.

PHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

 

 

テニアンで建設中の飛行施設は、グアムが攻撃された場合にアンダーセン空軍基地の代替を想定している。

 

 

星画像から、テニアン国際空港で大規模建設が行われているのがわかる。有事に米軍の代替飛行場となる施設の拡張計画に直接関連しているのは間違いない。同プロジェクトは、テニアンの南西に位置するグアム島の巨大なアンダーセン空軍基地が機能しなくなった場合に、それに代わる重要な活動場所を提供することを目的とし、10年以上前から進められている。アンダーセンの脆弱性、特にこの地域で起こりうる紛争の初期段階での中国のミサイル攻撃への懸念が高まっており、飛行場拡張計画の意義は過去の報道でも強調されている。

 The War Zoneが6月6日入手したテニアンの衛星写真では、テニアン国際空港の主滑走路の北西の一部が切り開かれている。既存のアクセス道路が作業区域のほぼ中央を東西に走る。Planet Labsの過去の衛星画像を確認すると、工事は5月初旬に始まっていることがわかる。

 

2022年6月6日、テニアン国際空港を撮影した衛星画像。空港の北西端で工事が行われているのがよくわかるPHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

 

 

6月6日画像にある新規工事は、テニアン代替飛行場プロジェクトの一環として、テニアン国際空港の北側に新誘導路や駐機エプロンなどを追加する計画に沿うものだ。工事は総工費約161百万ドルで、2025年10月完工を目指し、今年2月に起工式が行われた。

 

テニアン国際空港の工事現場をクローズアップ。 PHOTO © 2022 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

 

テニアン国際空港の注釈付き衛星画像。テニアン・ダイバート飛行場プロジェクトの一部として現在建設中の新しいパーキングエプロンと誘導路の計画位置を灰色で示す。紫と黄色の線は、燃料パイプラインの2つのルート案の一部で、これも建設作業の一部である。USAF

 

代替飛行場プロジェクトの原点は、テニアン島と隣のサイパン島の建設計画関連で環境影響評価が始まった2010年代初頭にさかのぼる。テニアンとサイパンは、いずれも北マリアナ諸島(CNMI)を構成する米国領だ。グアムも米国領だが、CNMIではない。

 2016年12月、米空軍はテニアンの選択肢を正式決定した。国防総省とCNMI当局が40年リース契約に署名し、2019年に建設作業が可能となった。現在、米海軍の海軍設営システム司令部マリアナ(NAVFAC Marianas)が代替飛行場プロジェクトを管理しているが、新施設の整備後に空軍に引き渡される。

 また、テニアン島南端にある主要港に燃料貯蔵施設を新設し、空港と結ぶパイプラインの建設や、道路整備も代替飛行場整備事業に含まれる。

 

テニアン代替飛行場プロジェクトの一環で計画された建設の全容を示す注釈付き衛星画像。USAF

 

代替飛行場計画に伴うテニアン港の建設予定地を詳しく見る。USAF

 

米軍がバリアント・シールド22演習の準備でテニアンで行った工事(道路整備など)が、代替飛行場設置工事と関係があるかは不明だ。バリアント・シールドは、2年おきに西太平洋各地で行われる大規模合同演習で、今年は6月6日に始まり、6月17日に終了する。

 

バリアント・シールド22の一環として、テニアン島での道路建設プロジェクトでフロントエンドローダーを運転する海軍機動建設第3大隊の米海軍水兵。 USN / Lt. Tyler Baldino

 

バリアント・シールド22は、テニアン島と周辺、グアム、サイパンで各種訓練を展開するが、地域全体の戦略的重要性を強調し、代替飛行場プロジェクトを開始した理由が浮き彫りなっている。

 米軍はテニアンとサイパンの各空港を演習に利用し、有事シナリオで訓練を行っている。米空軍と海兵隊は、戦闘機部隊をテニアン国際空港に配備する訓練を実施してきた。テニアン国際空港では、高速ジェット機の安全性を高めるため可動式アレスティングギアシステムが採用され、海兵隊が利用した。

 

以前の演習でテニアン国際空港で「ワイヤーキャッチ」する米海兵隊のF/A-18ホーネット。 USMC / Lance Cpl. J. Gage Karwick

 

パシフィック・アイアン21演習中でテニアン国際空港に展開した米空軍F-15Eストライク・イーグル戦闘機。 USAF / Tech. Sgt. Benjamin Sutton

 

テニアンにはノース・フィールドと呼ばれる別の飛行場があり、第二次世界大戦中にB-29爆撃機の運用支援のため建設され、ここでも改良工事が行われている。ここもバリアント・シールドのような演習を含め、遠隔地や厳しい場所からの輸送や航空攻撃航空作戦関連の訓練に適している。

 しかし、グアムのアンダーセン空軍基地のような飛行場インフラは、サイパン同様、テニアンにも存在しない。太平洋における中国とのハイエンド紛争の初期段階で想定されるミサイル攻撃でだがアンダーセン以下の既存米軍施設の脆弱性への懸念が高まる一方だ。

 

コープノース2020演習中に撮影されたグアム島のアンダーセン空軍の衛星画像。内側は、プロモーション写真のため整列した各種米軍機と外国軍機。PHOTO © 2020 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

 

代替飛行場工事が完了しても、テニアンの飛行場施設はグアムより見劣りする。特に、敵の行動でグアムでの飛行が停止した場合、空中給油機や貨物機など大型機の運用をサポートするため、アンダーセンに代わる現実的で即時性のある施設を空軍や米軍の他部門に提供することになる。

 「CNMIでの代替構想は、西太平洋で唯一の代替飛行場を確保し、米空軍に一時的または持続的な給油作業を行う能力を提供する」と、マーク・ウェルシュ空軍大将(当時参謀長)は、2016年にサイパンではなくテニアンに代替飛行場を設ける方針が決定された際に述べていた。「有事以外に自然災害対応の支援にも使えるようになる」。

 当時、テニアン国際空港の拡張施設は空中給油機最大12をサポートでき、オペレーションをサポート用の追加人員を受け入れるができると期待されていた。少なくとも初期の環境影響評価の情報に基づけば、建設工事の正確な範囲が、ここ数年で変化していることに留意する必要がある。

 

 

テニアンにおける代替飛行場関連の建設予定地の注釈付き衛星画像。サイパンではなくテニアンを選択し、「南オプション」ではなく「北オプション」の採用を決定する前の環境影響評価書ドラフトから転載した。ここに示されたノースオプションの範囲は、2020年に発表された最終環境影響評価書に描かれた建設予定地とは異なる。

 

太平洋空軍(PACAF)のトップ、ケネス・ウィルスバック空軍大将Air Force Gen. Kenneth Wilsbachは、2020年にマリアナ・ビジネス・ジャーナル紙のインタビューで、「テニアンに飛行要員や機材等を配置する計画はない」と述べていた。「我々は、主にタンカーと機動性機材の代替飛行場として使用できるよう構築したい」。

 アンダーセン基地に司令部を置く第36航空団司令のジェレミー・スローン准将Air Force Brig. Gen. Jeremy Sloaneは、今年初めの起工式で「飛行場、道路、港、パイプラインの整備は、米軍に不可欠な戦略、作戦、演習能力をもたらす」と述べ、施設の活用方法についてより広いビジョンを指摘していた。

 米軍関係者はプロジェクト開始当初から、テニアンで拡張された代替飛行場が、自然災害への対応など、さまざまな平時活動において貴重な活動場所になると強調してきた。

 テニアンでの工事は、グアムでの改善を含む、太平洋地域における基地施設の選択肢を拡大する。テニアン島での工事は、グアム島のノースウエスト・フィールド工事も含んでおり、F-35共用打撃戦闘機を含む戦闘機等の航空機運用のサポートが可能になった。

 また、グアムの北西約1,500マイルに位置するウェーク島でも、米軍基地の拡張工事が進んでいる。この島の重要性と工事内容については、War Zoneが以前詳しくご紹介した。

 

 

地図だと各場所の距離感と戦略的な重要性がよくわかる。西太平洋の端にグアムとテニアン(サイパンも)、さらに東にウェーク島、ハワイがある。地図上の縦の点線は、国際日付変更線。Google Maps

 

 米軍は太平洋地域の同盟国同志国と協力し、各種有事シナリオで使用できる追加基地施設の実現を目指している。昨年、国防総省は太平洋地域における中国への挑戦のため各種取り組みを網羅した270億ドルの計画を提出したが、ミクロネシア連邦、パラオ、マーシャル諸島などにおける「戦力投射・分散・訓練施設」で46億7000万ドルが含まれていた。これら3つの群島国はすべて主権国家であるが、自由連合協定(COFA)と呼ぶ国際協定で米国と深く結びついている。

 テニアンの新しい代替飛行場に関しては、アンダーセンと同じ脅威の範囲内にあることが注目されるが、その場合、相手はこの地域の飛行場を無力化するタスクにさらに資源を投入せざるを得なくなる。このことは、空軍だけでなく、米軍の他部門もよく認識しているようで、空軍は現在、高速道路を含む遠隔地や厳しい場所からの分散作戦概念に重点を置いていることからも明らかである。基地防衛の改善や、航空部隊の展開位置で相手を欺く試みも、話題になっている。

 フランク・ケンドール空軍長官は3月、アビエーション・ウィークのブライアン・エバースティン記者のインタビューで、「自分たちが居場所がどこか敵を混乱させたい」「だから、囮を他の場所に置けば役に立つ」と述べていた。

 基地の選択肢は少ないより多い方がいいに決まっている。テニアンでの飛行場施設の拡張工事は、将来の大規模な紛争や、太平洋での不測事態に備え、米軍機の活動場所を確保する幅広い取り組みの一部に過ぎない。■

 

Construction Of Airbase On Tinian Island In Case Guam Gets Knocked Out Has Begun

BYJOSEPH TREVITHICKJUN 15, 2022 3:40 PM

THE WAR ZONE

 


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...