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食糧危機を回避すべく、ウクライナ港湾からの穀物搬送を早く再開すべきだ。そのため国連主導の護衛部隊を創設すべきで、トルコが重要な立場になる

 

オデーサで船積みされる穀物。2021年8月。 gCaptain


シアの黒海港湾封鎖により、ウクライナから小麦の出荷ができず、このまま戦争が続くと、ウクライナ小麦に依存する各国で在庫が減っていく。飢饉の可能性もある。重大な人道的危機を回避するためにも、状況を解決する必要があると誰もが認めるところだ。ただ、その方法が問題だ。

 戦争がもたらす長期的影響は、さまざまな形で現れる。ウクライナの穀物危機は、北アフリカや中東を中心に世界規模の食糧危機を引き起こす可能性があり、メディアをにぎわせている。ロシア軍艦がオデーサ、チョルノモルスクなど黒海の港湾を閉鎖しているため、穀物は非効率な陸路輸送を余儀なくされている。ウクライナの穀物輸9割が輸送できない状態だ。

 FAO(国連食糧農業機関)の推計によると、ウクライナ港湾地区には穀物2500万トンがサイロ保管されている。これが世界の食糧供給に深刻な影響を及ぼしている。穀物価格は史上最高値に達した。ウクライナの港の開放が不可欠な理由を説明する必要はないだろう。


ロシアによる封鎖を解除するには


Is there a solution to lift Russia's blockade at Black Sea to transport Ukrainian grain?

沈没直前の巡洋艦モスクヴァ


 戦争が始まると、ロシア黒海艦隊が黒海北部の支配権を握った。同艦隊は今回の戦争で二つの重要な役割を果たしている。ウクライナを遮断する禁輸措置、水上艦と潜水艦から陸上攻撃ミサイル「カリブル」を発射しての陸上部隊を支援だ。

 ロシア艦隊がウクライナ沿岸付近で独自に行動したのは、ウクライナが巡洋艦モスクワを対艦ミサイル「ネプチューン」2発で沈没させるまでであった。黒海艦隊は旗艦を失ったトラウマに加え、「面防空」能力も失った。その結果、ウクライナはスネーク島付近でTB2バイラクタル武装無人偵察機でロシア巡視船数隻を攻撃した。これらの損失により、オデーサ沖のロシア海軍の活動は劇的に減少した。

 また、モスクワ喪失は、ロシア艦隊の対艦ミサイル防衛に問題があることを明らかにした。ウクライナは、デンマークから陸上型ハープーン、英国からブリムストーン、スウェーデンからRBS-17(またはロボット17)の各ミサイルを調達し、多層構造の地上防衛を構築した。この強化により、ウクライナはこの地域に75カイリにわたるA2/AD(Anti Access/Area Denial)ゾーンを形成し、ロシア軍に直接の脅威を与えるまでになった。


 米国や欧州諸国はウクライナにの武器やシステム多数を供給しているが、封鎖を破る手段としては対艦ミサイルしかないようだ。対艦ミサイルはロシア艦隊への抑止力になるが、同海域の安全を確保するには不十分かもしれない。なぜなら、対艦ミサイルで交戦不能のロシア潜水艦が活動しており、ロシア水上艦は遠距離から船舶を探知し交戦が可能だからだ。

 封鎖を解除し、ウクライナの穀物輸送に航路を開放するには、さらなる対策が必要となる。


NATOが航路を再開できるか?

Is there a solution to lift Russia's blockade at Black Sea to transport Ukrainian grain?

黒海で開催されたシーブリーズ2021演習でのNATO SNMG2部隊の写真(NATO MARCOM撮影)。


ロシア・ウクライナ戦争における最悪のシナリオは、ロシアとNATOのホットコンタクトだ。NATO各国はウクライナを支援しているが、双方は核保有国間で望ましくないエスカレーションが起こらないよう、微妙なバランスを保っている。NATOとロシアのホットコンタクトが発生した場合、エスカレーションがどこに向かうかを評価は困難となる。

 NATO艦艇がウクライナ港から穀物を運ぶ貨物船を護衛したり、同地域の機雷を除去することについては、以下の問題を考慮する必要がある。

  • 第一の問題は、モントルー条約だ。トルコは同条約に基づき、海峡の軍艦通行を禁止している。ロシアはNATOを紛争の一部ととらえており、この動きを条約違反と見なしすだろう。

  • NATOの護衛艦に対するロシアの態度を評価するのは難しい。ロシアの同意なしに封鎖を突破すれば、ロシアは抑止力を喪失することとなる。予測不可能なプーチン大統領は、エスカレートしNATOへの攻撃命令を出しかねない。

  • 商船が安全に航行できるよう、オデーサ沖の機雷を除去しなければならない。しかし、相互不信のため、同海域でMCM作戦を展開するのは不安なようだ。第一に、誰が機雷を敷設したのか不明である(機雷の正確な位置を提供すべき)、第二に、機雷が浮遊している可能性があること(機雷除去作戦を行うアセットは浮遊機雷の脅威を受ける)、最後にMCM活動の性質上、ロシアの同意なしにMCM活動を行えないこと、がある。

 一方、機雷除去で水陸両用作戦へのオデーサの防御力が低下する可能性があるため、ウクライナはロシアの保証を得ずに同地域の全ての機雷除去に反対する可能性がある。


Is there a solution to lift Russia's blockade at Black Sea to transport Ukrainian grain?

浮遊式地雷を無力化するルーマニアのEOD要員



 フランス大統領府は金曜日、オデーサ封鎖を解除する「作戦」に参加する用意があると宣言したと報じられた。


外交が最良の手段

プーチンが食糧危機を武器として利用しているのは明らかだ。ロシアは、封鎖による穀物不足を交渉カードとみなしている。一方、前述したように、ロシアの同意なしに作戦を実行すると、NATOとロシア間で望ましくないエスカレーションが起こる可能性がある。従って、この危機を解決するためには、相互の合意が必要なのだ。

 国連がこの危機を克服できるかもしれない。世界各地の紛争と同様に、国連海上護衛部隊は、中立的な各国の海軍部隊で編成される。ロシアが安全保障上の懸念を感じないように、国連は商船に武器携行させていないと保証し、ロシア艦も国連部隊に参加できる。護衛部隊は、2つのサブグループで構成される。穀物を運ぶ商船を守る護衛部隊と、ウクライナ港湾に安全回廊を開くMCM部隊だ。


東地中海で訓練を行うUNIFIL海上任務部隊(UNIFIL撮影)。(UNIFIL photo)


 この部隊の司令部所在地で最も賢明な選択はトルコだろう。トルコはNATO加盟国であるだけでなく、ロシアやウクライナと良好な関係を保っている。特筆すべきは、トルコが戦争終結交渉を主催し、首脳(エルドアン、プーチン)間の電話外交でひまわり油危機を解決したことだ。したがって、トルコの提督が各国混成の護衛部隊とMCM部隊を率いて航路を開けば、双方に歓迎されるだろう。トルコ海軍は同様の部隊を率いた経験があり、この任務を遂行する十分な能力を有しているし、トルコは両当事国との関係に加え、地域的な優位性もある。

 原因はどうであれ、今回の事態は人道危機であると全員が認識すべきだ。飢餓を防ぐため必要な対応を、すべての国が行わなければならない。この危機は戦争と切り離して処理されるべきで、ウクライナの穀物を海上輸送するため海軍部隊を可及的速やかに創設するべきだ。同部隊には当事者双方の承認が必要で、外交が解決策を提供に最良の手段であることがわかる。■


Ukrainian grain: How to Lift Russia's Black Sea Blockade? - Naval News

Tayfun Ozberk  12 Jun 2022

 

AUTHORS

Posted by : Tayfun Ozberk

Tayfun Ozberk is a former naval officer who is expert in Above Water Warfare especially in Littoral Waters. He has a Bachelor Degree in Computer Science. After serving the Turkish Navy for 16 years, he started writing articles for several media. Tayfun also offers analysis services on global naval strategies. He's based in Mersin, Turkey.


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