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イスラエルを軸にした中東湾岸の取り組みは歴史を塗り替えるか。イランの脅威を前にゆるやかな集団安全保障体制が生まれる可能性が出てきた。

 

Elta Systems



ニー・ガンツBenny Gantzイスラエル国防相が中東防空同盟Middle East Air Defense Alliance(MEAD)と呼ばれる新しい地域共同防空ネットワークの存在を6月20日発表したが、参加国、協定の規模など詳細はほとんど明らかにしていない。



イランのミサイルやドローンの脅威に対抗するため、イスラエル製センサーを自国領土に設置する希望がある国々と協議を続けているようだ。


イスラエルとサウジアラビア、カタール、エジプト、アラブ首長国連邦、バーレーン、ヨルダンを結ぶ同協定の策定を支援する原動力は米中央軍CENTCOMだった。イスラエルは現在、エジプト、ヨルダン、UAE、バーレーンと外交関係を結んでいるが、サウジアラビアとカタールとは国交がない。


ウォール・ストリート・ジャーナルによると、このグループの最初の公式会合はエジプトのリゾート地シャルムエルシェイクで行われた。イスラエル国防軍の参謀長アビブ・コハヴィ中将 Lt. Gen. Aviv Kohaviがサウジ軍参謀長ファイヤド・ビン・ハメド・アル・ルワイリ大将Gen. Fayyadh bin Hamed Al Ruwailiと出席したという。(米中央軍の広報担当者はWSJに対し、「地域協力を強化し、わが軍と地域のパートナーを守るための統合的な防空・ミサイル防衛アーキテクチャを開発する確固たる約束を維持している」とだけ述べた)。


イスラエルの防衛関係者によると、協定は作業部会がまとめる途中だが、一般的なアイデアは、参加国が配備するすべての早期警戒センサーをつなぐ統一通信システムを構築するねらいがあるという。このシステムはCENTCOMが監督し、武装UAVや弾道ミサイル、巡航ミサイルなどの空からの脅威をリアルタイムで早期警告できるようになる。


協定が正式になれば、イスラエル製の長距離早期警戒レーダーを購入する国も出るだろう。イスラエル軍との関係が歴史的に緊張してきた各国に、イスラエルの防衛技術が入り込むわけで、状況によっては、イランの脅威よりもセンサーでエルサレムに送られるデータを気にする国もあらわれるかもしれない。(検討中のセンサーの種類は不明だが、情報筋によれば、イスラエルのEltaが開発した長距離システムが選択肢の一つだという)。


Breaking Defenseは、サウジアラビアとUAEがイスラエル製の防空装備に暫定的ながら関心を寄せていると伝えたが、おそらくこのネットワークに統合されるのだろう。


具体的には、イエメンの一部でありながらUAEの実効支配下にあるソコトラ島 Socotra Islandをセンサー設置場所として利用する可能性が取りざたされているが、何も決定していないと情報筋がBreaking Defenseに語っている。


ソコトラ島は、魅力的なポイントだ。2020年、The Middle East Monitorは、UAEとイスラエルが同島にスパイ基地を設置する案を策定していると報じた。その後、情報筋は、詳細を明かさず、イスラエルが同島に「何らかのプレゼンス」を持っているのを確認した。


来月、イスラエルとサウジアラビアを公式訪問するジョー・バイデン大統領にとって、新しく結成された連合は、この地域に到着した際の論点になると予想される。イスラエル紙Haaretzは今月初め、バイデン大統領の訪問中にサウジアラビアが連合加盟を公にすることを望む声があることを報じた。


中東メディア研究所の報告によれば、「バイデンはまた、2015年核合意への復帰に向けて、停滞しているイランとの交渉が再開される可能性について湾岸諸国の懸念を和らげようとするようだ」。さらに、アラブの報道では、バイデンと各国指導者は、イランを筆頭とする安全保障上の共通の脅威に立ち向かうため、イスラエル含む地域各国間でNATOに似た軍事同盟の形成について話し合うと予想があるという。


NATO加盟国は、加盟国が攻撃された場合、互いに助け合うことを義務付けられており、中東では政治的利害が絡み合っているため、事実上不可能だが、地域大国が防衛関係を強化する必要があるとの結論に達したのは明らかだ。防空連合は出発点に過ぎないかもしれない。■


Gulf states willing to host Israeli sensors for air-defense network: Sources


By   ARIE EGOZI

on June 29, 2022 at 3:03 PM


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