左 ベルテキストロンV-280ヴァラー、右 ボーイング=シコースキーのデファイアイントX
Bell Textron, Boeing-Sikorsky photos
米陸軍が、旧式化めだつブラックホークの後継機を決定しようとする中、競合2社がそれぞれ製品の仕上げに取り掛かってる。
陸軍は今秋にも将来型長距離攻撃機(FLRAA)計画について決定を下すと見られ、決定時期が差し迫ってきたため、「沈黙期間」に入っている。
FLRAAと陸軍の将来型偵察ヘリコプター含む今後の垂直上昇機は、中国やロシアとの大国間競争に備える陸軍の3大近代化優先事項の1つ。陸軍は、2030会計年度までにFLRAAの装備展開を開始する予定だ。
契約締結が間近に迫り、両チームが忙しくなっている。ボーイング-シコースキーとベル・テキストロン双方の幹部は、今後数ヶ月で、追加試験と資格認定、デジタル製造を通じて、プラットフォームのリスクを低減させると述べている。
各チームは、1970年代に開発のブラックホークと根本的に異なるプラットフォームを開発中だ。
シコースキーは同社のX2同軸ツインローター実験ヘリコプターが原型の試作機デファイアントXをフロリダ州ウエストパームビーチからナッシュビルまで700海里飛行させ、米国陸軍航空協会サミットに登場した。
サミットに先立つ記者会見で、シコースキーのポール・レンモPaul Lemmo社長は、「試作機の移動にはリスクもあったが、テストパイロットが寄せる信頼から、経営陣は飛行実施に確信を持った」と述べた。
競作結果が出るまで、ボーイングとシコースキーはデファイアントXの飛行を続け、「性能限界を広げる」試験を行うと、レンモは述べた。シコースキーとボーイング両社が2020年に受注した陸軍の共同マルチロール実証契約の要件は実証ずみとレンモは指摘する。陸軍は今回の競作でプロトタイプの開発契約を両社に交付し、両社は昨年3月から第2フェーズに入っていた。
ベルのV-280ヴァラーValor試作機(ベルV-22オスプレイをベースにしたティルトローター)はそこまで飛行時間が長くないが、同社はリスクを減らすため同様に努力していると、サミット会場で先進垂直リフト担当ディレクターのフランク・ラザーラFrank Lazarraは述べた。
試作機の飛行停止後、ベルのエンジニアリング・チームはギアボックスを取り外し、検査と技術検証を行い、「非常に良い結果」を得たと言う。
ベル社は、短時間で部品を製造できる能力を示したいと考えている、とラザーラは言う。同社は昨年、製造技術センターを開設し、全体のサイクルタイム短縮をめざしている。V-280の製造時間が短縮できるかが、主要な焦点の一つと、製造革新担当マネージャーのジェラード・ナンニGerard Nanniは言う。
例えば、チルトローターに使われるあるシャフトは、リードタイムが330日だったが、センターは16時間に短縮できたとナンニは説明。これにより、陸軍は事業全体のリスクを軽減できるという。
「標準時間と製造の短縮で、変更を迅速に取り入れられます」(ナンニ)。
プラットフォームの訓練とシステム統合オプションの開発は、契約締結に至るまでベルでもう一つの焦点となる。
シコースキー=ボーイングチームは、陸軍にアピールするため機体を飛ばしたが、ラザーラは、ベルのティルトローター設計が過去に同様の長さのフライトを行っていると指摘している。例えば、V-280はテキサス州アマリロからフォートワースまで、約370マイルをノンストップ飛行した。デファイアントXは、この2倍の距離を飛行し、2回燃料補給したという。
同時に、競合両陣営はFLRAAエンジンの実力の証明でも戦っています。ボーイングとシコースキー3月に発表したデファイアントXのエンジンは、ハネウェルのHTS7500ターボシャフトエンジンだ。
このターボシャフトエンジンは、デファイアントXに今年中に搭載するための試験や、その他認定試験を行っている。ハネウェル・エアロスペースの軍用ターボシャフト・エンジン製品ライン担当副社長ジョン・ルッソJohn Russoは、4月に行われたイベントで、テストの一例として圧力への耐久性を測定していると明かした。
セラミックコーティングのような「エキゾチック」な材料を使用せず、エンジンは低いタービン温度を維持すでき、「信頼性、保守性、リスク低減がねらい」とルッソは説明。また、現在使われているコーティング剤を使うことで、タービンを溶融させず維持できると説明した。
一方、ラザーラは、V-280に搭載されるロールスロイス AE 1107Fエンジンは、同社のT406を搭載するベルV-22より効率的になると説明した。
ロールスロイスが2020年に発表した同エンジンについてはあまり知られていないが、ロールスロイスの防衛プログラムディレクターであるキャンディス・ビネヤード Candice Bineyardは、生産が開始済みと述べている。ロールスロイスは、施設と製造能力のアップグレードのために6億ドルを投資した。
一方、陸軍の将来攻撃偵察機(FARA)の進展は、エンジン開発に懸かっている。陸軍は2028年に将来型偵察ヘリコプターを実戦投入することを望んでいるが、業界の競合他社は、陸軍と業界パートナーのジェネラル・エレクトリックが、新型タービンエンジン設計をまとめるのを待っている。陸軍はGE T700エンジンを改良型タービンエンジン・プログラムを通じてT901エンジンに置き換えるために517百万ドル契約をGEに交付した。
例えば、ベル360インヴィクタスのプロトタイプは約85%完成しており、5月ないし6月に90%完成すると、インヴィクタス・プログラムの副社長兼プログラム・ディレクターのクリス・ゲーラーChris Gehlerは言う。
ベル360インヴィクタスの完成予想図
ゲーラーは、陸軍航空会議のサイドイベントで、「当社は、エンジンなしでできることはすべてやるつもりだ......しかし、エンジンができたら、完全なイン・ザ・ループ・テストを行う」と述べた。
ジェネラル・エレクトリックは、11月の初飛行に間に合うように、T901の3Dプリント版を提供したと、陸軍航空プログラム執行官のロバート・バリー准将Brig. Gen. Robert Barrieは述べている。COVID-19による試験の遅れにもかかわらず、バリー准将は、11月までに納品し、2023年第3四半期に初飛行にこぎつけるようGEの能力を確信していると付け加えました。
「23年に飛行する道筋はある」「それに伴うリスクはあるが、リスクを管理し軽減するために、全員が手を携えています」(バリー准将)。
エンジンは3月に「ライトオフ」(初めて燃料に点火する)に達しており、「重要な」マイルストーンになったとバリー准将は付け加えた。
ゲーラーからは、ベルのエンジニアリングチームは、「エレクトロニクス面」と機体の「油圧」のチェックを実施中だという。3Dプリントのエンジンとインヴィクタス機体の適合テストは成功したという。
ゲーラーによると、ベルはインヴィクタスの価格を、陸軍が要求する平均コスト3000万ドルより「かなり低く」設定しているという。また、プラットフォームの小型化・軽量化もコストを低く抑えるのに役立っているという。
シコースキー=ボーイングのFARA候補であるレイダーXは、初期設計の完成率がライバルと同様の約85パーセントであると、シコースキーの将来型垂直上昇ビジネス開発ディレクターであるジェイ・マックリンJay Macklinは述べた。
エンジンを待つ間、エンジニアリング・チームはプログラムの全体リスクを減らす、とマックリンは指摘し、試作機用の2番目の機体製造も含まれる。
「機体を構造試験に組み込み、機体の飛行中および地上荷重能力を検証するために使用します」「マックリン)。
同社はまた、レイダーXのプラットフォームのS-97 Raiderの試験データを陸軍に提供するという。
来年度も、陸軍が将来型垂直飛行機材への投資を緩めることはない。陸軍は、昨年の予算要求とほぼ同じ、15億ドルを要求していると、デイヴィッド・フランシス少将Maj. Gen. David Francisは記者団に語った。
2023年の予算要求には、FARAのハードウェアとソフトウェアの開発、コンポーネントサブシステムの組み立て、統合、テスト、ソフトウェアとハードウェアのインザループアプローチに468百万ドルを計上したと、予算要求発表後の3月のラウンドテーブルでマイケル・マッカーリ准将Brig. Gen. Michael McCurry は述べていた。
また、FLRAAの693百万ドルの要求は、予備設計作業、兵器システム、仮想プロトタイプの仕上げに充てられると付け加えた。2023会計年度の後半に、陸軍はこの資金で兵器システムの契約オプションを模索すると、准将は述べた。
サミットのパネルディスカッションで、デビッド・フランシス少将 Maj. Gen. David Francisは、「将来の垂直上昇ポートフォリオが航空の "コア・コンピテンシー "を変えることはないとしても、陸軍の戦い方は変わるだろう」と述べた。
「戦場の形状、作戦指揮官が利用できるオプションはともに大幅に変化する。将来の垂直上昇機が提供する能力から、作戦指揮官により多くの能力とオプションを提供されるだろう」と述べた。■
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5/23/2022
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