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プーチンの病状悪化で権力闘争、クーデター等ロシアの不安定化は不可避に。独裁者に振り回される世界の悲劇。

 Putin

Credit: Russian State Media.

 

国の情報機関から聞いた。プーチン大統領は「進行性がん」の治療を受けている。

 

 

 米スパイ機関はロシアのウクライナ侵攻を正確に予言していたので、この評価を否定する理由はない。

 だが、プーチンの病気の意味は別だ。

 プーチンの病は、本人をさらに不道徳に、狂信的に、暴力的にするかもしれないし、しないかもしれない。プーチンはすぐに死ぬかもしれないし、死なないかもしれない。病気のため、ロシアを率いる能力が低下するかもしれないし、しないかもしれない。

 確実に言えることは、ロシアのエリート層は本人の病気を知っており、権力闘争が勃発している、あるいは間もなく勃発することだ。プーチン後継者が誰になるかが、エリート層の行動と選択に否応なく影響を与える。

 また、プーチンが構築してきたシステムを維持しながらプーチンを交代させるのは非常に困難とも分かっている。ロシアはファシスト国家であり、プーチンはそのスポーク、ひいては車輪を維持するハブだ。プーチン退陣が間近に迫ってきた今、ファシスト政権は根底から揺るがされるだろう。ナチス・ドイツはアドルフ・ヒトラー抜きには考えられなかった。同様に、ファシスト・イタリアはその団結と存在をベニート・ムッソリーニに依存した。

 プーチンは20年以上を使い、民主制度を解体し、高度なまでに中央集権的かつ個人主義的な独裁体制に取って代えた。プーチンを男性的な活力の体現者と示すことでカルトを表現している。プーチンの肉体的な強さは、ロシアの強さの象徴だった。したがって、プーチンの衰えはロシアの衰退を意味する。

 プーチンの取り巻きは、プーチンと同じく活力、カリスマ性、人気を持つ独裁者に交代させるか(年齢や肉体的魅力を考えれば不可能か)、または弱い人間でも支配しやすいようにシステムをいじくり回すしかない。それも難しい。プーチン体制は、独裁の論理に従い「適合」する首尾一貫した制度で構成されているからだ。全体の安定性を損なわず、一部だけ入れ替えるのは難しい。

 プーチンの後継者は、レーニンやスターリンのように、強硬派と穏健派に分かれるだろう。政治・経済が比較的安定している通常の状況ならば、一騎打ちになる。しかし、現在のロシアの状況は、正常ではない。欧米の経済制裁で経済が落ち込んでいる。ウクライナ戦争は、ロシアの勝利で終わらないとほぼ確定している。

 このような状況下では、改革に着手し、戦争を終わらせ、西側諸国との関係を修復する穏健派が有利になるのは言うまでもない。プーチンの同志はこれを承知で次の手を考えているのだろう。強硬派は、プーチンが政権を維持し、経済と戦争の悪化が進行すれば、自らの可能性が低くなると理解しているだろう。3月に米国の情報機関がプーチン暗殺を断言したように、クーデターが不可避になっている。

 クレムリンで権力闘争が起きれば、遠大な領域を管理するモスクワの能力は低下を免れない。特に、歴史と資源に恵まれた非ロシア圏の各地方で自治権拡大を求める声が強まるはずだ。クレムリンの状況が深刻なまで悪化すれば、独立を試みる動きもあり得る。

 どのようなシナリオであれ、権力闘争の勝者が誰であれ、プーチンの支配がいつまで続くのであれ、西側諸国はロシアでの出来事を変えることはできない。プーチンと現状を支持したくなる誘惑は、ソ連崩壊前夜のゴルバチョフと現状維持の誘惑と同じように、今や、強くなっている。しかし、西側が何をしても、ロシア内部の緊張に対しては無視できる程度の影響しか与えられないだろう。

 米国で現実的に対応できることは、権力闘争に備え、ロシアがすぐ非常に不安定な場所になる認識で、ロシアの不安定化の矢面に立たされる近隣諸国との連携強化だろう。■

 

Vladimir Putin Was Treated for 'Advanced Cancer': What Happens if He Dies? - 19FortyFive

ByAlexander Motyl

 

Dr. Alexander Motyl, now a 1945 Contributing Editor, is a professor of political science at Rutgers-Newark. A specialist on Ukraine, Russia, and the USSR, and on nationalism, revolutions, empires, and theory, he is the author of 10 books of nonfiction, including Pidsumky imperii (2009); Puti imperii (2004); Imperial Ends: The Decay, Collapse, and Revival of Empires (2001); Revolutions, Nations, Empires: Conceptual Limits and Theoretical Possibilities (1999); Dilemmas of Independence: Ukraine after Totalitarianism (1993); and The Turn to the Right: The Ideological Origins and Development of Ukrainian Nationalism, 1919–1929 (1980); the editor of 15 volumes, including The Encyclopedia of Nationalism (2000) and The Holodomor Reader (2012); and a contributor of dozens of articles to academic and policy journals, newspaper op-ed pages, and magazines. He also has a weekly blog, “Ukraine’s Orange Blues.”


コメント

  1. ぼたんのちから2022年6月3日 15:40

    プーチンが、記事のように死に至る病を抱えているなら、戦争を起こすのは無責任極まりなく、とっとと引退すべきだろう。死ぬまで権力に執着するのは、プーチンが自らを終身皇帝と妄想しているからなのかもしれない。そしてプーチンの死は、戦争と混乱の終わりでなく、始まりかもしれない。
    プーチン体制は、軍・情報機関、オリガルヒ、ロシア正教会、シンクタンク、そしてスターリンを今もって尊敬するような人民によって支えられている。そして、それぞれの支持基盤内にはプーチンよりも過激な思想を持つ、プーチンを突き上げるような連中が相当数存在し、その者達がプーチン後の政治を壟断する可能性が高い。プーチン反対派は、実際にはごく少なく、全く期待できない。
    そうなればウクライナ戦争の長期化ばかりか、東欧・北欧侵攻、及びNATOとの全面戦争になるかもしれない。そして、核兵器使用の脅迫どころか、実際に使用するリスクが高くなる。これは悪夢だ。
    米国、及びNATOを主軸とする西側は、ウクライナ戦争を通じてロシア軍と経済の手足を折り、ロシアを押さえつけようとしているが、それでは足りず、少なくても今世紀中は再起できないように、ロシアの背骨を砕くまで、今の戦争と制裁を継続することになるかもしれない。
    このような世界の状況は、決して良いものでない。核兵器の使用は避けられないのかもしれない。プーチンと同様に終身皇帝になりたがっている習は、台湾侵攻を引き起こすかもしれない。残念ながら、これは第3次世界大戦に至る道である。

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