直近の報道では、IAFのF-35が無給油でイラン攻撃可能に強化され、新兵器を搭載したとある。
イスラエルメディア報道によると、F-35Iアディールの航続距離が延長され、空中給油なしでイランを攻撃できる航続距離を確保したとある。F-35の内部搭載用に新開発された国産スマート爆弾とあわせて発表された。イスラエル空軍の長距離攻撃能力のアップグレードは、イスラエル指導部がテヘランの核開発計画に強硬姿勢を強める一方で、イラン空爆のリハーサルとされる演習を実施する中で行われた。
昨日付のエルサレム・ポスト紙によると、イスラエル空軍の「新能力」は、7機しかないボーイング707タンカーによる給油なしで、F-35でイラン内陸部を攻撃できるようになったことである。老朽化タンカーへの依存をなくすだけでなく、タンカー支援を必要としないF-35の攻撃パッケージは、柔軟で生存率が高くなったと言える。さらに、紛争空域や周辺部で、給油機の生存能力が懸念されている。イスラエルは現在、近代的なKC-46への交替を加速させている。
イスラエル空軍のボーイング707改装タンカーがF-15に空中給油している Yonatan Zalk/Israeli Air Force
ステルス機の航続距離をどのように伸ばしたのかは不明だが、ドロップタンクで外部燃料を追加したのだろう。この場合、レーダーへの影響が大きくなるが、イラン領空に入る前にパイロンと一緒に投棄できる。もう一つの選択肢は、コンフォーマルでフラッシュマウントされた燃料タンクで、ステルス性と性能への影響を軽減できるが、大幅な形状変更や機体改造を伴う可能性もある。この種のタンクの統合とクリアランスは、同機の高度なまでの低観測モールドラインを犠牲にするため、複雑かつ非常に時間のかかるプロセスになる可能性がある。このデータが、同機の生存率の鍵を握る。
共用打撃戦闘機に外部燃料タンクを統合する構想は、前からある。2019年にThe War Zoneは、ロッキード・マーティンが航続距離延長研究の一環で、主翼の下に600ガロンのドロップタンク2基を追加する検討をしていると報じた。この場合も、ステルス特性に影響を与えるが、総燃料容量は約40パーセント増加する。それ以前にも、480ガロンと460ガロン小型タンク追加の研究があった。
480ガロン落下タンクの外形図(左)と460ガロンタンク(右)。ロッキード・マーティンがJSF用に認証を受けようとしたのは右。. AIAA
F-35機内にはハードポイントがあり、燃料タンク搭載が可能であり、イスラエル仕様のF-35Iを含め、この機能の導入は難しくない。
ロッキード・マーティン広報担当は当時、Aviation Week誌に「当社はF-35の各顧客と航続距離延長を以前から話し合ってきた」と述べていた。「航続距離延長はミッションのプロファイルに依存するが、当社の研究では距離と滞空時間、つまりミッションの持続性の両方が大幅に向上することを示している」。
基本型のF-35A、そしておそらくF-35Iは、現在公表の無給油戦闘半径は650海里強だ。つまり、IAFの戦闘機がイラン国境を越え標的に到達するのは不可能で、しかもこれは最短距離で侵入した場合の話だ。
650海里とされるF-35Aの無休油戦闘半径ではイラン国内標的の空爆には不十分だ. Google Earth
注目すべきは、イスラエルが、ロッキード・マーチンでF-35の航続距離延長で重要な推進力になってきたことだ。イスラエル企業は、F-35のドロップタンクやコンフォーマル・タンク開発に携わっており、一部の作業はロッキード・マーチンに頼らず実施できた可能性もある。
Aviation Week誌によると、イスラエル航空宇宙産業(IAI)とElbit Systemsの子会社Cycloneは、F-35I用コンフォーマルタンクと600ガロンドロップタンクの双方に取り組んできたという。いずれか、または類似のものが、IAFの作戦コンセプトの一部となる可能性がある。
興味深いことに、アメリカ空軍のF-22のアップグレード案にも「低抗力タンクとパイロン」が含まれており、IAFがF-35で採用したソリューションと共通点がありそうだ。航空機のレーダー断面積にほとんど影響を与えない継手を使用し、パイロンとタンクを一緒に投下させる。
また、米国海兵隊のMarine Air Plan 2022では、F-35B(およびF-35C)用の外部タンクの開発が提案されている。この構想は、イスラエル用に開発されたタンクと共通するところが多いかもしれない。
また、ロッキード・マーチンが海外バイヤーと共同でF-35改良型を開発し、数千万ドル相当のエンジニアリング・サポート業務を行うとの謎の発表もあった。カナダ向けの給油プローブ付きF-35Aの可能性があるが、IA向けのの燃料キャリッジ強化もあり得る。
F-35Iのパワープラント、さらにはソフトウェアの調整も、航続距離延長構想の一部の可能性がある。
射程距離延長とあわせ、エルサレム・ポスト紙は、イスラエルがF-35に新採用した「1トン爆弾」にも言及している。これは、米国製のレーザー誘導爆弾GBU-24 PavewayやGBU-31 Joint Direct Attack Munitionと同じクラスとなる。GBU-31と同様に、Rafael Advanced Weapons Systemsが開発した新兵器は、F-35のレーダー探知特性に影響を与えないよう内部搭載できる。
F-35に「最近統合された」とされるこの新兵器は、同紙によれば、「自律的かつ、ジャミングや電子戦システムから保護されている」 とある。しかし、誘導方式、スタンドオフ射程距離を確保できるのかなどは不明だ。また、IAFがこの兵器を最近テストし、結果をベニー・ガンツ Benny Gantz国防大臣と共有したことも紹介されている。
イスラエルのF-35に搭載される予定の兵器には、ラファエルの精密誘導爆弾SPICEが含まれるが、空対空ミサイルやその他の兵器も含まれそうだ。新兵器は、2000ポンドのSPICE2000を機内搭載用に改良したものである可能性がある。
SPICE 2000 を搭載したF-16Cをイスラエルは2021年夏のガザ回廊での戦闘に投入した。Israeli Air Force
イスラエルは2018年5月、同機を攻撃作戦に使用する初のオペレーターとなったと発表し、それ以降、イラン無人機の撃退でも成功を記録している。
F-35I型への新機能追加については、2020年に同国に到着したステルス戦闘機がユニークな装備の試験型となったことが後押ししている。この単独仕様機は、武器の試験、エイビオニクス統合、機体の改造と試験など、イスラエル固有の装備を搭載する役割を担う。そのため、この機体はラファエル製の新兵器の射程延長改造とクリアランスの両方で重要な役割を果たしたと思われる。
イスラエルは、特注テスト機だけでなく、F-35Iの基本的なミッション・ソフトウェアに独自の変更や追加を行い、ALIS(Autonomic Logistics Information System)に依存せず機体を運用する特別な取り決めもロッキード・マーチンと交わしている。これにより、新型燃料タンクや兵器を追加する作業もかなり容易になるはずだ。
テスト用のF-35I。うしろにF-15Iが見えるAmit Agronov/Israeli Air Force
長距離飛行可能なF-35と新型精密兵器の機内搭載を合わせると、エルサレム・ポスト紙は「イラン攻撃の軍事計画を劇的にアップグレードする」と歓迎している。
しかし、この計画は実用レベルでも試されているようで、IAFは先月、イラン攻撃を想定した大規模な訓練を4回以上も実施したと伝えられている。
同紙によると、「炎の車」と総称される訓練では、最初の訓練は、イランのレーダーなど統合防空網を打ち負かすことに焦点を当てたという。特に、F-35Iは、センサー群、ネットワーク機能、特にステルス性能に助けられ、戦時中に重要な役割を果たす期待がある。
演習2回目では、イラン国内の核施設を含む重要インフラを攻撃するため必要となる長距離作戦を実施した。地中海上空で米空軍タンカーがIAF機を支援中という誤報が出たのは、この演習が原因だった可能性がある。
テストでは、イランの電子戦システムやサイバー兵器に対する防御も含まれていたようで、イスラエルが同国に空爆を行おうとする場合、既存の防空システム以上の各種脅威に直面すると予想される状況を反映している。
また、イスラエルの匿名防衛関係者はエルサレム・ポスト紙に、イランの核開発能力に対し実施可能性のある作戦には、「各種距離の複数目標」が含まれると語っている。
「炎の車」作戦には、第4世代のF-15とF-16戦闘機も含まれ、いずれもIAFの戦闘作戦で広く使用されている機種だ。実際、F-35Iの最新開発状況は、F-15Iに相当する長距離攻撃実施能力をIAFが強く望んでいることを示唆している。また、アドバンスト・イーグルの増備計画にも影響を与える可能性がある。
イラン、特に核能力を標的とした新たな焦点の背景には、テヘランに従来より強硬な姿勢を示唆するイスラエル政府高官の一連の声明がある。
今週初め、イスラエルのナフタリ・ベネットNaftali Bennett首相は、「テロと不安定のタコ」と表現したイランにむけた政策の変更を振り返った。
ベネット首相は、イスラエル国防軍は現在、「足だけでなく、頭に対して行動する」ようになっていると述べた。この比喩では、タコの頭はテヘランの指導層を指している。しかし、首相がイラン体制を不安定にするための進行中の取り組み、将来の潜在的な作戦計画、あるいはその両方の組み合わせを示唆したのかどうかは不明である。
イランが核兵器製造に必要な濃縮ウランを増産しているため懸念が増している。ベネット首相は、イランが純度60%以上のウラン濃縮に成功する可能性を指摘し、「イスラエルはこの状況は受け入れられないし、受け入れるつもりもない」と述べた。兵器用ウランには約90%の純度が必要だ。
同時にテヘランは、核活動監視に使われていた計27台のカメラを撤去し、国連査察団の業務を困難にすることに躍起になっているようだ。国連は、この動きがイランとの核取引再開に向けた努力に「致命的な打撃」を与えかねないと警告した。一方、ドイツ情報筋によると、イランは不正な核開発計画に使える技術を獲得するため努力しているようだ。
イスラエル軍、特に現地開発の武器や能力を取り巻く機密性の高さから、F-35Iの新兵器や航続距離延長に行われたらしい改造について詳しく知るには時間がかかりそうだ。しかし、イランの核開発問題が深刻化し、IAFでF-35が定着しつつある今、IAFにおけるステルス機の重要性、とりわけ長距離攻撃能力は高まる一方といえよう。■
Israel Has Extended The Range Of Its F-35s: Report | The Drive
JUN 9, 2022 5:04 PM
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