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リビア作戦から明らかになったNATO軍の実態

                             

Libya Reveals NATO Readiness Highs And Lows

aviationweek.com Dec 2, 2011    

一 回の紛争事例の結果から「普遍的な真理」を引き出すのは危険かもしれない。今年前半に英国の戦略国防安全保障レビューはアフガニスタン作戦から将来の作戦 上のひな形を想定している。その報告では国家間の紛争とそれ以外の紛争のオプションの区別などきれいにまとめてはいるが、あくまでもきれいごとだ。では統 合護民官作戦Operation Unified Protector(NATOによるリピア内戦におけ国民、反乱軍保護ミッション)から意味のある教訓は引き出せるのか。
  1. NATOの即応体制が作 戦実施で欠点があきらかになったとか、ヨーロッパ各国の準備不足が露呈した等結論を急いで引き出す傾向があったが、空中給油機の8割 は米空軍が提供しており、このことが関係者に衝撃を与えているのが事実だ。欧州全体からはわずか20機程度しか動員できなかった。英国はVC-10とトラ イスターの退役で空中給油能力が低下しており、この状態はエアバスA330ヴォイジャー給油機が稼働開始するまで続く。フランスの給油機の稼働率は著しく低く、両国で進行中の調達拡充が実現すれば、「タンカーギャップ」は解消するだろう。
  2. 一方、敵防空網の制圧ではNATOは米国装備に頼りっぱなしであったのも事実だ。これは今回始まったのではなく、これまでの数十年間同じ状況で今後も変わりそうにない。また、救難捜索用機材がないため、サハラ砂漠が緊急時には着陸地点に指定されていた。
  3. だ が空軍戦力近代化の努力の結果が今回出ている。各攻撃機には目標照準・Istar(情報収集、監視、目標捕捉、偵察)ポッドを搭載し、1990年代よりも 状況に応じてはるかに柔軟な対応をしている。すでに他国からは今回のNATO作戦で示された欧州各国の軍用機の作戦状況に関心が寄せられており、複雑な攻 撃作戦の大部分を地上統制官なしで実施していることが注目を集めている。今回の作戦の前にはアフガニスタンの経験が念頭にあり、複雑な航空作戦を実施する には地上統制官が目標を示すことが必要だろうと広く信じられていた。リビア作戦はこの考え方をある程度変える結果になった。
  4. 初期報道では電子偵察能力では米国の機材がたよりといわれていたが、予想よりも広範囲で欧州各国装備はとくにIstar分野で性能を発揮したようである。スウェーデン空軍のサーブJAS39グリペン戦闘機はrecceポッドによる画像品質と即応性で高い評価を与えた。ダッソー・ラファールF3はタレス製 のAreos Reco NGポッドを搭載し、これも高い性能を発揮したと伝えられる。英空軍はこれに対しセンティネルR1アスターAstor(空中スタンドオフレーダー)が予算 削減で退役するところを引っ張り出し、ラプターRaptor(空中偵察ポッド、トーネード用)を投入。欧州だけでIstar運用を実施している。
  5. 使用された兵装についても興味深い点がある。フランスはサゲムSagem製AASM動力付き爆弾を225発使用している。トーネードGR4で主に使われたのはレイセオンのペイブウェイIV500ポンドレーザーGPS照準付きを700発以上使用した。同爆弾はアフガニスタンではすでに使用済みだが、リビアではもっと広範な目標に使用されている。そのバックアップとしてMBDA製ブリムストーンミサイルが使われた。もともとは対装甲兵器として開発されたが、レーザー誘導とミリ波レーダーがついて性能が向上している。リビアでの大量使用に呼応してMBDAには緊急生産発注がされている。
  6. 精密誘導兵器の在庫が不足してしまった小国もあるが、米国からボーイング製共用直接攻撃弾(JDAM)の購入に走っている。希望の兆しもある。各国は財務当局に以前よりも兵装在庫量を増加させる必要があると説得するのは容易になるだろう。
  7. リ ビア作戦で注目するべきは英仏両国が政治的な決断の後に長距離攻撃態勢を整えたスピードだ。また、両国では海軍艦艇による砲撃支援(NGS)が再び脚光を 浴びた。英海軍は4.5インチ砲で240発を発射し、高性能爆薬、曳光弾を混ぜて使用した。英海軍の砲火は英海兵隊向け支援として2003年にもイラクで 実績があるが、リビアでの実績により英海軍のタイプ26グローバル戦闘艦構想フリゲートには5インチ砲を搭載してNGSを提供することになろう。
  8. フランス海軍は100mm砲・76mm砲あわせて3,000発をNGSミッションで発射。このことから軽量弾では重量弾と同じ効果を得るためには大量の発砲が必要だとわかる。
  9. リビアは両国にとって攻撃ヘリを海上から運用する点で転換点となった。英国はボーイングAH-64アパッチロングボウを5機投入し、フランスはユーロコプターEC665 タイガーヘリを10機使用した。その実績は現在評価を受けているが今回限りの作戦というよりも今後の標準使用方法となりそうだ。リビアでのヘリ作戦様式が 高速ジェットと攻撃ヘリの混成運用に発展するかは不明だ。その実現にはより多くの訓練と実践経験の上により多くの支出が欧州に必要だ。
  10. NATO 軍はこれまで20年近くの経験をイラク飛行禁止地帯、バルカン半島、イラク、アフガニスタンで積んできているので航空作戦でリビアで得た教訓は常識の範囲 に留まる。ただし、250機から300機の作戦航空機を揃える英仏両国がわずか25機程度しか持続的に作戦に投入出来なかったことはひとつの懸念だ。
  11. 一 つ明らかなのは今回の統合護民官作戦は将来の運用の基準にはならないし、次回の作戦のひな形にもならないことだ。地上部隊投入がなくても実施できる作戦で はあったが、ほとんどの教訓はこれまでの結果を裏付けるものだった。ひとつには装備が整い、よく訓練され、ただしい指揮命令を受けた部隊にとっては想定外 の事態にもうまく対応できることが証明された形だ。アフガニスタンと平行して統合護民官作戦を実施するNATOの立場なら航空作戦の観点では対地攻撃方法 はひとつだけではないことがわかるだろう。

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