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エネルギー価格事情と地政学を結びつける新著「Windfall」

ここのところ原油価格はバレル当たり50ドル台前半で比較的安定しています。世界的な株価上昇の背景に原油価格の心配が必要がないのもあるのでしょう。ただし、いつまでも続かないからこそ、今がWindfall=絶好の好機と米国はとらえるのでしょうか。中東湾岸諸国さらにイランも再び影響力を強める時代がくるのでしょうか。あるいはそれまでに非石油文明が根付くのでしょうか。これからが見ものです。 How the New 'Energy' Affluence Strengthens the United States エネルギー潤沢時代にあり米国の国力は強化される   Juergen Braunstein November 2, 2017 http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/how-the-new-energy-affluence-strengthens-the-united-states-23025 ドナルド・トランプ大統領はイランに対して制裁を発動させると先週発言して脅かした。イランはOPEC三番目の石油生産国で市場は迅速に反応した。中東で緊張が生まれるのか、外交政策とエネルギー市場の関連に関心が集まった。 ハーヴァード大教授メーガン・オサリバン  Meghan O’Sullivan  の新著 Windfall がこの点を真正面から取り上げ、米国が新たに手に入れたエネルギー自立から米国衰退論へ反論している。 外交政策をエネルギーの視点で研究する第一人者オサリバンは世界はエネルギー枯渇の恐怖からわずか数年でエネルギー潤沢状況に移行したと明らかにしている。新技術で原油は過剰生産となり、ここに天然ガスの過剰供給が加わる。水圧で岩盤を破砕するフラッキング技術のおかげで米国は今や世界最大の原油・天然ガス生産国だ。 オサリバンの主張は新事態で混乱が生じたのではなくマーケット構造の変化で国力影響力の行使方法が変わった国が多数生まれたというものだ。エネルギー供給過剰でロシア、ヨーロッパ、中国、中東の政治状況が変わった。OPECの原油価格統制機能が揺らぎ、米国の敵ロシアが弱体化した。エネルギー過剰により伝統的な提携関係が逆転し、新しい協力関係のきざしも中国中心に出てきた。 この本

インド、イスラエルとの価値観共有外交をアメリカは目指すべきだ

さすがシンクタンクの主任研究員となると構想が違いますね。論点は表記三カ国に限らず理念、価値観を共有しつつ自国利益を最大限する外交を展開することです。日本も今のところは仲間に入れてもらえる資格があると思いますが、国会が政治世界の思考水準を表すとすれば不安にならざるを得ません。思考の幅、奥行きがあまりにも島国の狭小さのままです。戦略思考、地政学をもっと学びましょう。 America's Future Is with India and Israel アメリカの未来はインド、イスラエルとともにある James Jay Carafano July 23, 2017 http://nationalinterest.org/feature/americas-future-india-israel-21629?page=show インド太平洋から地中海まで外交関係で変革が進行中だ。変化の風の出どころは北京ではなく、デリーだ。ドナルド・トランプ大統領に新しい勢力を束ねて米国の地球大指導力を進める好機がきている。 時代変化が進行中 ホワイトハウスは今年中に国家安全保証戦略構想を発表すると見られ、ブッシュ、オバマ前政権の戦略案と別の内容になるのは間違いない。ブッシュは力づくで問題解決を目指した。オバマは逆に各地の紛争にかかわらず正面からの競争を避けた。トランプは中間を目指しているようだ。政権転覆や国土再建策には関心がないが、重要な国益を守るため米国の影響力を強く推進することに積極的だ。 そのトランプ戦略の要点は大幅な不安定化を招きかねない武力衝突の可能性を国益影響度が最大の地域では減らすことにある。超大国間の衝突がアジア、ヨーロッパ、中東で発生するのは避ける。新戦略では中央アメリカに焦点を多くあてるのは国境を越えた犯罪網や不法移民で米国南部の国境地帯にストレスがかかっている状況に対応するものだ。 新戦略は米国の軍事力、外交力の強化をめざす政権の意向と対になっている。ジム・マティス国防長官が音頭を取り力を背景にした平和政策が進められているが、前政権下で劣化した軍の再建も狙う。いっぽうでレックス・ティラ-ソン国務長官はソフトパワー論に消極的で省内を驚かせている。ティラーソンは効率や効果だけを追求しているのではない。求

中国軍のジブチ基地新設の意味を考える

AP すでにお知らせしている話題をさらに掘り下げた内容です。ソマリア海賊対策は中国が各国と協調せず単独行動しているのですね。とにかく中国は戦略思考で次の手を打ってきますので対抗するためにはこちらも小手先の対応ではなく戦略思考が必要なのです。将棋に関心が集まっているのは良い兆候かもしれません。 Here's What You Should Know About China's New African Base  中国のアフリカ新基地で知っておくべき事項 Chinese forces in Djibouti are just the latest sign that the country wants to expand its military presence abroad. ジブチの中国軍部隊は中国が軍事プレゼンスの海外拡大を願目指す最新のあらわれ   BY JOSEPH TREVITHICK JULY 14, 2017 http://www.thedrive.com/the-war-zone/12482/heres-what-you-should-know-about-chinas-new-african-base いかに規模が大きくても自国外で長期間活動できない軍事力は国土防衛の域を越えられない。冷戦終結後の中国人民解放軍は世界規模のプレゼンス拡大に向け努力してきた。中国軍はアフリカの角を回り初の恒久的海外基地を手に入れ、アフリカ各地への展開の拠点にしようとしている。 2017年7月12日国営メディア新華社が同国初の「支援基地」があるジブチに向けた隊員装備の第一陣が出発したと報じた。中国は2015年に構想を発表し翌年から首都ジブチシティで施設建設を始めていた。 「支援基地は中国部隊によるアデン湾商船護衛任務、人道救難活動他国際責任の執行に役立つ」と新華社は述べ、中国外務省報道官 耿爽 Geng Shuangの発言内容を伝えた。「さらに同基地はジブチの経済社会的発展を推進し、中国によるアフリカ並びに世界全体での平和安定への貢献の一助となる」 確かに上記の機能は実現するだろうが、基地をよく見ると国際的な活動強化を進めるPLAの動きに一致する点が見られる。この基地は中東、欧州さらにその先に展開する中国の拠

★中国がTHAADの韓国配備に反対する本当の理由

筆者は釜山大学の米人教授だそうですが、なかなか本質をとらえた論評をしていると感心せざるを得ません。問題は同じ論調が韓国の皆さんから聞こえてこないことです。「空気を読む」のと「感情」を優先するあまり正論・異論は韓国では声に出しにくいのでしょうか。韓国の将来が心配です。       The Real Reason China Wants South Korea to Ditch THAAD THAAD撤去を韓国に求める中国の真の理由は何か The U.S. missile system has fallen victim to South Korea’s tough position between Beijing and Washington.  米中のはざまで苦悩する韓国で米ミサイル防衛装備が犠牲になっている   Robert E Kelly June 13, 2017 http://nationalinterest.org/feature/the-real-reason-china-wants-south-korea-ditch-thaad-21139?page=show 韓国の新大統領文在寅が運用先送りを宣言した米ミサイル防衛装備は米軍が長年にわたり韓国に導入を図ってきた高高度ミサイル防衛装備だ。韓国政府は中国を挑発したくないため消極姿勢になり、米韓双方で合意ずみのトラック1、1.5、2内容を無視した格好だ。朴槿恵前政権がTHAAD最終段階高高度広域防衛装備の導入を2016年に入り決定し、一部導入済みだ。 中国とTHAAD これに対し中国の反応は韓国向け経済金融措置として即座に現れた。韓国最大の貿易相手先が中国であり、この措置で国内経済に景気後退を生んだ。左翼政治家はTHAADは不要と言い始めた。北朝鮮のミサイル装備に対し過剰装備であるが、北朝鮮の韓国攻撃阻止には役立たないというのが理由だ。また北朝鮮と言えども同じ民族であり韓国を核攻撃をするはずがないとの主張だ。  左寄りの文が大統領に就任するや配備を停止または遅延させる力が出てきた。文は配備を阻止すべく二方面で策を講じている。立法面の承認手続きと環境アセスメントだ。ただしこの作戦には反対意見が広く生まれている。民主国

中国提唱の一帯一路、AIIBの本質を見抜け

AIIBの話題ではバスに乗り遅れるな、あるいは様子を見る、という状況にどううまく反応するのかという小手先の議論が中心になっていますね。覇権をめぐる争いは軍事量だけの話ではなく、ソフトパワーも重要な要素で一路一帯=AIIB=中国の考える新世界秩序につながっていくのですが、ばらばらな議論をしていては中国の思いのつぼです。Holisticに物事を見られないのは学校、職場、社会で教えられてきた要素還元主義の「科学的思考」の弊害ですかね。せめてこのブログの読者には発想を広げて大きな視野で物事を考えていただきたいですね。ご関心があれば「ブレイクスルー思考」で検索してみてください。 China's 'One Belt, One Road' Strategy By Wendell Minnick 4:53 p.m. EDT April 11, 2015 Modern-day Silk Road Effort Could Challenge US Influence in Asia, Africa, Mideast http://www.defensenews.com/story/defense/2015/04/11/taiwan-china-one-belt-one-road-strategy/25353561/ (Photo: Parker Song-Pool/Getty Images) TAIPEI — 中国の提唱する「一帯一路」政策が実現すれば中国は押しもされぬ地政学上の大国になるというのが専門家の多数意見だ。 構想ではアジア、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ新しい回廊を複数開発し、「新シルクロード経済通路」で中国とヨーロッパをむすぶべく、中央アジアの山岳地帯を直通する。「海のシルクロード」は中国の港湾部をアフリカ沿岸と結び、さらにスエズ運河経由で地中海に出る。習近平主席は3月28日海南島でのボアオアジアフォーラムBoao Forum でこの構想を公表。 「一帯一路構想は経済が出発点だが、政治的戦略的な意味もある」と上海交通大学Shanghai Jiao Tong Universityの国家戦略研究院副所長 庄建中Zhuang Jianzhongは解説する。「エネルギー安全保障では共同開発による互恵を目指す」

★主張:イランは米国の同盟国に復帰できる

なるほど面白い観点ですが、イスラムの宗派の違いを無視していますね。ただし、イスラムとはイデオロギーよりも実は実利を重んじる考えのはずなので、イランをカウンターバランスとして米国が重視する可能性も排除できません。イラク領土内でイラン空軍が作戦を展開している事実も(国内向けに)イランは否定しているようですが、意外に早く事態が急変するかもしれませんね。原油価格低下とともに米国としては中東湾岸地区の安定を早く回復したいと思っているはずなので。こうなるとイスラム国は一層孤立感を覚え自暴自棄になる、それで滅亡が早まる、と言うシナリオなのかもしれません。 Opinion: Iran — America’s Old/New Ally By: Cmdr. Daniel Dolan, USN (Retired) Published: November 24, 2014 4:14 PM • Updated: November 24, 2014 4:15 PM http://news.usni.org/2014/11/24/opinion-iran-americas-oldnew-ally . ジュネーブで本日、関係六か国はイラン核問題協議を7か月延長すると決定した。 ジョン・ケリー国務長官は各国の気持ちを代弁した。米国、中国、英国、フランス、ドイツ、ロシアとイランだ。「一年でここまで来たこと、特にこの数日での進展を見ると、ここで決裂しては元も子もない」 交渉先送りする間に米国はイランを巡り新しい国家戦略目標を探る時間がとれるだろうか。こんな仮説はどうか。イランをペルシア湾岸における主要な戦略関係国にもう一度復帰させるのだ。 今になって振り返るとペルシア湾岸地方で安定が失われたのは米国の同盟国としてのイランを失った1979年のパーレヴィ国王の退場以降である。その後の米国は新しい同盟関係の構築に走り、巨額の予算と国民の生命を犠牲にして新しい勢力構図を作ろうとしてきた。イランに制裁措置をしてきたが、歴史から見れば、3,000年の歴史と文化を有する国が相手なのだ。 一見、米イラン接近は非常識に見えるが、歴史と地理の教訓からこの発想が実は理不尽ではないことがわかる。 まずイランは第二次世界大戦終結から1979年まで米国の主要戦略同盟