なるほど面白い観点ですが、イスラムの宗派の違いを無視していますね。ただし、イスラムとはイデオロギーよりも実は実利を重んじる考えのはずなので、イランをカウンターバランスとして米国が重視する可能性も排除できません。イラク領土内でイラン空軍が作戦を展開している事実も(国内向けに)イランは否定しているようですが、意外に早く事態が急変するかもしれませんね。原油価格低下とともに米国としては中東湾岸地区の安定を早く回復したいと思っているはずなので。こうなるとイスラム国は一層孤立感を覚え自暴自棄になる、それで滅亡が早まる、と言うシナリオなのかもしれません。
Opinion: Iran — America’s Old/New Ally
By: Cmdr. Daniel Dolan, USN (Retired)
Published: November 24, 2014 4:14 PM • Updated: November 24, 2014 4:15 PM
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ジュネーブで本日、関係六か国はイラン核問題協議を7か月延長すると決定した。
ジョン・ケリー国務長官は各国の気持ちを代弁した。米国、中国、英国、フランス、ドイツ、ロシアとイランだ。「一年でここまで来たこと、特にこの数日での進展を見ると、ここで決裂しては元も子もない」
交渉先送りする間に米国はイランを巡り新しい国家戦略目標を探る時間がとれるだろうか。こんな仮説はどうか。イランをペルシア湾岸における主要な戦略関係国にもう一度復帰させるのだ。
今になって振り返るとペルシア湾岸地方で安定が失われたのは米国の同盟国としてのイランを失った1979年のパーレヴィ国王の退場以降である。その後の米国は新しい同盟関係の構築に走り、巨額の予算と国民の生命を犠牲にして新しい勢力構図を作ろうとしてきた。イランに制裁措置をしてきたが、歴史から見れば、3,000年の歴史と文化を有する国が相手なのだ。
一見、米イラン接近は非常識に見えるが、歴史と地理の教訓からこの発想が実は理不尽ではないことがわかる。
まずイランは第二次世界大戦終結から1979年まで米国の主要戦略同盟国だった。イラン革命が終止符を打った。地理と文化的条件からイランは地域内で主導的立場を数世紀にわたりとってきた。直近の34年間がいかに混乱していたとはいえ、もっと長期視点からすれば例外的な期間であり、イランの地理文化的条件を直視すべきだ。
シャーが国王の座にあった時代を思い返してみよう。1979年までのイランは地域内で突出した軍事力を保有していた。第二次大戦後は英国に代わり我々がイランを同盟国の地位に押し上げたのである。そのため、当時の先端装備、F-4、F-14、ホークやハープーンミサイルを供与してきた。
現在のアメリカがイランを語る際は底流にある文化面を無視している。イランの有利な地理条件、65百万人の人口、そして古代文化が同国の地位を重要にする要素だ。石油は問題ではない。
二番目に同地域で発生した三つの危機状況で、イランは米軍作戦を妨害していない。
ひとつめが砂漠の嵐作戦で、イランの宿敵イラクを相手とした米国はペルシア湾に4個空母打撃群を投入したが、イランは干渉しなかった。2001年9月11日以降はアフガニスタンのタリバン勢力排除にイランは協力している。さらに現在進行中の対イスラム国作戦でイランと米国は共通の利害関係を見出している。
米・イラン関係はとげとげしく、上記の三例をもってイランとの関係を単純化するつもりはない。だが、事例は米国、西側諸国が危機に直面した1991年、2001年、2014年のいずれにもイランは米軍作戦を妨害しなかっただけでなく、一定の範囲で米国を助けていたのである。
三番目に地域内の9・11以降に現れた敵に米国の同盟各国が資金、人員、イデオロギーをそれぞれ供給していたという事実がある。9・11実行犯19名のうち、15名はサウジアラビア、2名はUAE、残りはエジプトとレバノン一名ずつだった。イラン出身者は皆無、またイランが資金援助した事実もない。
現在進行中の対ISIS作戦は第三次イラク戦争と言ってよく、ISISに資金・人員を提供するのは地域内の諸国だが、ここにイランは含まれていない。
イランには独自の代理テロリスト集団があり、レバノンのヒズボラは1983年に米海兵隊退舎をベイルートで爆破している。
ヒズボラやイランのQudsのような遊撃隊が代理勢力になっていることが今後の問題となるが、イラン関係の正常化がすすめば非対称的なそのような脅威勢力は不要となるのではないか。また地域内の同盟各国はたとえ国民の一部が航空機をハイジャックし、米国内で力の象徴に突入させてもやはり同盟国だと証明している。そうなると米国が各国に寛容になる余地が出てくる。
イランに何が起こっているのだろうか。イランが各国との外交関係を構築しようとしてるのは自ら課した外交的孤立を終えようとしている証拠ではないか。いかにも脅威を与る姿勢を示してきたイランはとてつもない経済的犠牲、地政学的犠牲を払ってきた。とくにアフマディネジャド政権下がひどかった。今のイランはこの孤立を終える寸前にあり、米国や西側各国との信頼関係を再構築する寸前でもある。
核協議の延長が決まったことで、将来の米イラン関係はこの段階では先が読めず、これまでの経緯から筆者の仮説はいかにも先走りしすぎとの観を与えるかもしれない。
しかし最後に付け加えたい。過去の世代では日本とドイツがアメリカで最重要の同盟国になるとは想像さえできなかったはずだ。両国とは全面戦争しているが、イランとの対立は比較すれば一度は友人だった二人が頑なに反目しあっているようなものだ。歴史と地理を注意深く観察すれば、筆者はイランとの関係正常化が米国の目指す方向であると楽観視している。
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