AIIBの話題ではバスに乗り遅れるな、あるいは様子を見る、という状況にどううまく反応するのかという小手先の議論が中心になっていますね。覇権をめぐる争いは軍事量だけの話ではなく、ソフトパワーも重要な要素で一路一帯=AIIB=中国の考える新世界秩序につながっていくのですが、ばらばらな議論をしていては中国の思いのつぼです。Holisticに物事を見られないのは学校、職場、社会で教えられてきた要素還元主義の「科学的思考」の弊害ですかね。せめてこのブログの読者には発想を広げて大きな視野で物事を考えていただきたいですね。ご関心があれば「ブレイクスルー思考」で検索してみてください。
China's 'One Belt, One Road' Strategy
By Wendell Minnick4:53 p.m. EDT April 11, 2015
Modern-day Silk Road Effort Could Challenge US Influence in Asia, Africa, Mideast
TAIPEI — 中国の提唱する「一帯一路」政策が実現すれば中国は押しもされぬ地政学上の大国になるというのが専門家の多数意見だ。
- 構想ではアジア、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ新しい回廊を複数開発し、「新シルクロード経済通路」で中国とヨーロッパをむすぶべく、中央アジアの山岳地帯を直通する。「海のシルクロード」は中国の港湾部をアフリカ沿岸と結び、さらにスエズ運河経由で地中海に出る。習近平主席は3月28日海南島でのボアオアジアフォーラムBoao Forum でこの構想を公表。
- 「一帯一路構想は経済が出発点だが、政治的戦略的な意味もある」と上海交通大学Shanghai Jiao Tong Universityの国家戦略研究院副所長 庄建中Zhuang Jianzhongは解説する。「エネルギー安全保障では共同開発による互恵を目指す」
- 域内経済が向上すればテロリズムの根本原因が減るので米国も中央アジアや中東で同構想を安定化・平和の実現手段として歓迎すべきだというのが同副所長の主張だ。
- ただし専門家の多数意見は中国が新規開拓通商路の安全を維持できるのか疑問を呈している。それぞれ危険地帯を縫うように走るからで、アフリカ沿岸では海賊行為、中央アジアの「ワイルドウェスト」ではイスラム過激派が跋扈している。
- 各ルートには補給上の拠点が必要でその他通信インフラ、空港、鉄道、自動車道路、港湾の建設に加え軍部隊を配備しないと迅速な危機対応ができない。その場合は長距離戦略輸送機とともにマラッカ海峡・スエズ運河などに沿海戦闘艦船の配備が必要だろう。さらに病院船ほか各種装備で平時軍事作戦 Military Operations Other Than War (MOOTW)の実施を模索するだろう。
- 「一帯一路」はまだ構想段階と米海軍大学校で中国海事問題を専門とするジェイムズ・ホームズ James Holmesは言い、現時点では軍事上の意味はまだないが、「長期的には中国はアメリカをアジアから追い出し、わがほうの同盟国の切り離しを図るだろう」とする。
- 中国が目指すのはユーラシアに通商路複数を確保し、各国に対して中国式の制度がアメリカよりも上を行くと認識させることだが、そのためには実際に物資を輸送しなければならないとホームズは見る。「最終的に中国は仲間の各国へもっと多くを要求してくるはずで、米国が各国の港湾を利用するのを拒否するよう求めてくるでしょう。」
- ホームズは今回の構想は20世紀初頭のベルリン・バグダッド鉄道構想とは種類が異なると見ている。今回の構想は「経済開発に間接的な外交安産保障と軍事的意味を加えたもの」と見る。
- 新しいアメリカの安全保障を考えるセンターの主任顧問を務めるパトリック・クローニンPatrick Croninは「一帯一路で良くない結果が生まれる」と見るが、今のところはスローガンに過ぎず、現実になっていないと指摘。中国がソフトパワーで南シナ海、東シナ海での海洋領土問題を緩和させようとすると見る。
- クローニンはあわせて「米国もソフトパワーを発揮する絶好の機会なのに戦略的発想が欠けている」と批判する。
- 中国が提唱するアジアインフラ投資銀行は2013年に誕生しており、「一路一帯」の実現のため各種施設の建設が目的だが、これも中国のソフトパワーの一種であり、米国のアジア再配備に対抗するものとクローニンは指摘した。
- 専門家多数の見解ではAIIBは国際通貨基金・世界銀行・アジア開発銀行の既存体制へのあからさまな挑戦であり、中国は逆に既存体制は米国の支配下にあると見ている。
- 「中国が米国と各国の争奪戦をする気なら、目に見える恩恵を無理のない形で提供しくはずだ。これが中国式の発想の根本だ。中国王朝は贈り物を提供し代わりに中国への政治的服従を求めるのが常だった」(ホームズ)
- 現時点の構想では海上関係はまだ完成度が低い。人民解放軍海軍(PLAN)はMOOTW活動を近年頻繁に行っており、海賊対策はアデン湾で2008年から実施している。今月はじめにPLANはイエメンで民間人救助を実施しているほか、2011年にもリビア内戦で民間人避難にあたっている。.
- 2014年に胡錦涛主席がPLANに新歴史的ミッションNew Historic Missions (NHM)を与えていると国防大学校で太平洋問題に詳しいクリストトファー・シャーマンChristopher Sharmanが解説する。その中に国家経済発展の防衛が入っていた。これは中国軍にとって目新しい任務ではないが、「2012年国防白書で前面に出され、戦略的海上交通路の防衛を特記した」とし、現在の状況もこの戦略方針の一環で、「遠隔地海上防衛」が中国の海洋戦略の一部であることがわかる。
- シャーマンによれば中国海軍の戦力再編のあらわれが056型江島Jiangaoコルベットであり、大型艦船が遠隔地に派遣されることが多くなる想定で第一列島線付近の任務を十分こなす性能を盛り込んである。さらに遠隔海域での作戦を想定して新艦隊編成の可能性もある。
- 「海のシルクロードでがそのままPLAN艦船の遠隔海域展開すにはならないと見ていますが、段階的な艦船派遣拡大はありうるでしょう」とシャーマンはフリゲート、駆逐艦、潜水艦の動向に注意をはらうよう指摘している。
- 戦略面では中国海軍は「基地」ではなく「寄港地」の交渉に入るはずだ。今後もスリランカや東アフリカへのアクセスを求めるほか、インドネシアも視野に入れているはずとシャーマンは指摘する。
- シャーマンは国防大学校で論文"China Moves Out: Stepping Stones Toward a New Maritime Strategy"(「新しい海洋戦略に乗り出した中国」)を著しており、中国の空母二番艦が構想実現の大きな要素と見る。MOOTWの各種任務の実現とともに遠隔地で中国の軍事力を誇示するはず、というのだ。■
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