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★海はもう広くない。CSBAが示す近未来の海上戦の様相



CSBAからまた刺激的な論文が出るようです。双方が互角の装備を整備して接近不可能な海域が増えると海洋の広さはどんどん縮小するというのは、一見すると海軍水上艦艇に未来がないように見えますが、実は兵力投射のプラットフォームとしての可能性をあらたに整備する方向性をあんじしているのではないでしょうか。 その意味でUCLASSは積極的な攻撃能力手段につながるのではないでしょうか。また度々ご紹介しているレーザーやレイルガンの技術開発にも新しい時代へ対応すべく海軍の展望がみえかくれします。 そうなると短距離しか飛行できず、かつ安全な陸上機地ないと使い物にならないF-35が太平洋で何ができるのか疑問ですし、その整備に巨額の予算をつかうことが費用対効果で大きく疑問になってくるでしょうね。むしろこの論文が議論の口火を切ることが期待されますし、それが自由な意見を自由に主張できる米国の強みですね。

No Man’s Sea: CSBA’s Lethal Vision Of Future Naval War

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on April 13, 2015 at 4:25 AM
CSBA graphic of a future war at sea.
WASHINGTON: もはや海は広い舞台ではない。ミサイルが有効射程を伸ばし精密度を上げ、センサー類の感度が向上し艦船に隠れる場所がなくなってきた。「要塞に発砲する軍艦は愚か」とは昔からの海の諺だが、陸上基地は弾薬量や防御力で海上艦艇より優位と言う意味だ。艦隊を陸上配備兵器の射程範囲に近づけるのを喜ぶ司令官はいない。だが、米海軍は新世代の兵器が配備される中で何百何千マイルも離れた海上に残れるのか。
  1. これがアンドリュー・クレピネヴィッチ Andrew Krepinevich がまもなく刊行される研究論文Maritime Competition In A Mature Precision-Strike Regime.「成熟した精密攻撃態勢の下での海洋覇権」(Breaking Defenseはクレピネヴィッチから同論文の写しを事前に入手し、本人へ直接質問をすることができた)の中心課題だ。クレピネヴィッチが率いるシンクタンク戦略予算評価センター Center for Strategic and Budgetary Assessments (CSBA)はこれまで接近阻止領域拒否anti-access/area denial (A2/AD)やエアシーバトルのコンセプトを生んできた。これらは中国他の勢力を遠距離から抑え込むのが目的だ。新しい論文では従来の研究成果をもとに双方が広域ネットワークで同等のスパイ衛星、無人機、爆撃機、ミサイルを整備した世界を想定し、論文の題名である「成熟した精密攻撃態勢」の意味が出てくる。
  2. 海戦も大きく変わる。陸上装備が艦隊に大きな損害を与えるので、もはや海戦とはいいがたい。(そのため論文では海洋、の語句を使っている。) 第二次大戦ではミッドウェイで日米が空母部隊で索敵に広い太平洋で苦労した。地中海では枢軸側と連合国側の艦船は簡単に発見され、陸上基地からの爆撃で大損害を受けた。現在の技術で太平洋は地中海の大きさに縮小されるといってよい。
  3. 「第二次大戦の地中海ではこういう接近できない地帯が生まれ、水上戦の支障になった」とクレピネヴィッチは語る。「精密攻撃手段が成熟化し大洋は地中海の大きさに縮む」
  1. クレピネヴィッチ予測では接近阻止領域拒否地帯が大洋に広がり、アクセス不可能な領土や海域が増え、双方にとってこの地帯では深刻な損害を覚悟しなければならなくなる。これまでの海軍作戦では自由航行が当然だったが、海洋の大部分が事実上通行不可能な危険地帯になる。対立する諸国が極めて近接している例として、日本・韓国・台湾が中国に近く、湾岸諸国もイランのすぐそばにあるが、バルト海諸国もロシアに近く、小国だと国土全体が危険地帯に入る。米国の同盟国が封鎖を受け、直接攻撃を受けるか包囲される可能性を想定すると救援に駆けつける米軍部隊もさながら第一次大戦の西部戦線のような海洋上の最前線を突破しないと到着できなくなる。
  2. 「例えば台湾の援護が必要になり、十分な事前準備ができない場合は重要な利害対象国である台湾を失うか、自軍部隊に高い損耗を覚悟するかのどちらかになる」(クレピネビッチ)
  3. 危険地帯を無事に突破できるだろうか。第一次大戦の現場指揮官と同じく、各種の新規手段を組み合わせて(英軍の場合はタンク)、戦術も組み合わせ(ドイツは突撃部隊)、多様な方法が考えられるとクレピネビッチはいう。
  4. 一番簡単なのは現地派遣をあきらめることだ。逆に敵を封鎖し、敵を自軍が設定した危険地帯へおびき出す。巧妙に敵に協力させることだ。「オフショアコントロール」構想では中国の長大な貿易海上ルートに着目し、中国から遠く離れた地点を封鎖し、輸出をまひさせ中東産原油が中国に届かなくすればよいと海兵隊退役大佐T.X.ハマーズ T.X. Hammesがエアシーバトルの代替策として提唱している。時間があればこの構想はとても魅力的だとクレビネヴィッチも認める。しかし米国の同盟国が敵の有効な射程範囲で身動きが取れなくなった場合(例 日本)では遠隔地の封鎖をしたところで肝心の同盟国が長く持たない。
  5. 反対にもっと積極策が考えられる。米軍の弾薬備蓄は長く維持できないかもしれない。ハイテク装備を有する敵との交戦はミサイル、無人機、有人機を消耗する。当然人員の損害も想定する必要があり、損耗率はこれまでのリビア、アフガニスタン、イスラム国相手の場合よりはるかに高くなる。いまでさえ米軍司令官は精密兵器の在庫が少ないことに危機感を持っており、米国では高性能兵器を迅速に生産できない。
  6. 「中華人民共和国と交戦した場合は弾薬類の補充生産はおろか主要装備品の増産は不可能だ」とクレビネヴィッチも認める。「そこで中国の立場で見れば、石油数カ月分の備蓄を前提に作戦立案すればよい。長期的視野にたてば中国は備蓄をするかパイプラインを陸上に構築すればよいことになる」
  7. 石油備蓄の方が精密兵器の備蓄よりずっと容易だ。もし中国等敵性国家がわが方の弾薬を使い果たすことに成功できるのなら、逆にわが方も相手の備蓄を使い果たすことができるのではないか。IPhoneの時代の技術で高性能ミサイルも低価格化できるはずだとクレピネビッチは指摘する。ただし長距離兵器ではそうはいかない。大国といえども強力な兵器の配備数には限りがあるということだ。
  8. 敵の武器備蓄を使い果たす方法としてむだな発射をさせることがあり、おとり、電子戦、敵ネットワーク侵入でありもしない目標を生み出す。反対に実目標に敵が発射してきたら飛んでくるミサイルを撃ち落とすのが効果的だ。これはミサイル防衛の課題であり、高価格の迎撃手段を有する艦船も搭載可能ミサイル数はごくわずかだ。レーザー兵器あるいは電磁レイルガンなら安価にミサイルに対抗でき、敵に高価なミサイルを使い果たさせられる。
  9. 長距離ミサイルだけが貴重な装備ではない。長距離センサーも目標探知に必要だ。衛星はどんどん脆弱化しており、直接攻撃手段としてのレーザー目くらましや関節攻撃としてのハッキングで地球へのダウンリンクが狙われる。あるいは小型爆発物で地上の管制施設が狙われるかもしれない。宇宙がだめなら、高高度飛行無人機を偵察と通信中継に使えばよいとクレピネビッチは説く。だがこの無人機も高レベルの自律性能で飛行できないと長距離データリンクが敵に狙われるとクレピネビッチは指摘する。
  10. 総じて無線ネットワークが大きな標的になる。サイバー諜報活動はかつてのナチや日本の暗号解読(ウルトラおよびマジック案件)の事例のように重要になるかもしれない。サイバー攻撃で偽データを配信するとか敵の中核システムを大事な時に使えなくさせることができよう。しかしこの種の戦闘には多くの不確定さがついてまわるのでクレピネヴィッチも注意するよう発言。
  11. 「ある程度までサイバーは20年代あるいは30年代の航空戦力と同じ位置づけです。重要だとわかっていても実際にどのように重要なのか誰も理解できていなかったのです」
  12. ただし航空戦力の場合は実際に撃ち合いが始まれば不確実性は急速に消えた。撃墜される機体が目に見えるし、都市は火に包まれた。サイバー戦や電子欺瞞作戦では攻撃する側、防御する側ともに目には見えない。敵が長距離ミサイルの発射を中止した時点で備蓄がなくなったのかわが方のサイバー電子攻撃で発射できなくなったのか、あるいはわが方がもっと近寄るのを待って発射しようとしているのか見極められない。
  13. 最終的に米軍部隊は接近せざるを得ない。ただし敵が長距離兵器を使い切った場合に限るが。では21世紀の危険地帯で生き残りができる部隊とはどんなものなのか。クレピネヴィッチはステルスは依然として重要だと見るが、今後もセンサーの性能向上とビッグデータの解析で挑戦を受けるだろう。潜水艦や陸上配備爆撃が中心的な精鋭部隊になるだろうとする。その補強に長距離陸上発射ミサイルが使われる。
  14. ということは水上艦艇には大きな役割は期待できないということで、現時点でも航空母艦は大きな目標にすぎないといする。潜水艦より目だち、脆弱性もあるが、水上艦のペイロードあたりの建造コストは低いが強力な火力を提供する。だが重要な問題点はそのペイロードだ。クレピネヴィッチも空母から反撃できないほどの長距離から空母を狙う巡航ミサイルを潜在敵国が発射できると指摘している。(この場合空中給油は危険すぎ選択肢に入らない) そこで長距離空母艦載機(有人である必要はない)で海軍の主力艦の威力を保つことになるのだろう。
  15. クレピネヴィッチは軍事上の革命的な進展は末端から始まることが多いと指摘し、従来通りの装備が大部分の中で最新鋭装備は少量ではじまることがあるという。これは軍の予算とも関連がある。電撃戦を展開したドイツ軍も当初は戦車よりも軍馬が引く車両のほうが多かったのだ。1941年12月7日時点の米海軍では戦艦の方が空母より多かった。攻撃を生き残った戦艦には対空砲を追加装備し、その後は空母を護衛する役割にまわった。新技術は比較的わずかでも新戦術に応用されると決定的な違いが生まれる。ここでもどの新技術、新戦術を重視するのかということだ。
  16. 議論に火がつけばクレピネヴィッチとしても嬉しいという。
  17. 「現状はバージョン1.0という段階」と報告書に記述。「いまのところこれが最良の予測であり、現在の傾向をもとにしたもの」というが、変動要因は非常に多く、これまでの軍事史上で経験がないほどの多さだという。とはいうものの、「それでもこのほうがよい。なぜなら今のまま未来に突入するよりも何かを失った方がよい」
  18. これは「対話の始まりを示すものであり、終わりではない」とクレピネヴィッチは指摘した。



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