スキップしてメイン コンテンツに移動

★大変悩ましい次期長距離爆撃機開発企業の選定(米空軍)



一方が採択されれば他方は業界に生き残れないとは厳しい状況です。極秘予算の話も後半に出てきますがなんとか高度技術を散逸させない配慮が求められます。日本の産業政策をあれだけ批判していた米国が自ら防衛産業の基盤維持を図る政策を展開せざるを得ないとはなんとも皮肉な話です。LRS-Bという呼び方がLRSBに変わっていることに注目です。2020年というのはもうすぐですが、予算上は大変な時期になりそうです。

Tough Choices For DoD On Long Range Strike Bomber

By COLIN CLARKon April 02, 2015 at 4:30 AM

An artist's concept for a stealthy future Long-Range Strike Bomber.ノースロップ・グラマンのLRSB概念図
WASHINGTON:  でペンタゴンはあと数ヶ月で長距離打撃爆撃機(LRSB)の契約企業を選定するが、興味深い結果になるだろう。ボーイング=ロッキード・マーティンが選定されるとロッキードが高性能ステルス機の設計をほぼ独占することになる。逆の場合だとノースロップ・グラマンがステルス爆撃機を独占する。
  1. 結果は米国の産業基盤にも重大な影響を与えるが、問題が山積していた空中給油機選定の比ではない。
  2. 「この十年間で新型戦闘航空機の開発契約は皆無だったが、これからの十年も同様だろう」とリチャード・アボウラフィア( Teal Group の航空宇宙分野主任アナリスト)がフォーブス誌で解説している。「言い換えればLRS-Bに絡むは大手三社のうち、次の戦闘航空機開発に生き残れるのは二社だけだ。ロッキード・マーティンはF-35のおかげで心配の必要はない。残る二社は今回受注できなければ業界に残れなくなる。つまり2030年ごろに就役予定の次世代戦闘機開発の競合に参入できない。」
lockheed boeing long range strike bomberロッキード=ボーイングのLRSB概念図
  1. ボーイング主導のチームの主張はボーイングがこれまで大型機多数を予定通りに生産しており納得の行く価格で実現した実績を基にしている。ただしKC-46では困難に直面しているが。
  2. 「ボーイングは大量の大型機生産でずばぬけた実績を持っています」とアボウラフィアは記者に語った。「ただし同社もつまづくことがあります」とウェッジテイルの例とやや規模は小さいがKC-46の例を示唆した。両機種とも民間商用機を軍用に改装して、軍用機を完全新設計した場合に発生する諸問題を回避するはずだった。
  3. もしボーイングチームが敗退すれば、米国は「重要な生産能力を失い」、雇用も喪失する。「反対にロッキード・マーティン=ボーイング案が採用となれば、ノースロップ・グラマンが軍用機から撤退しそれもつらい結果になる」
  4. ペンタゴン調達部門のトップ、フランク・ケンドールからは産業基盤の配慮は選定で大きな要素にならないと発言があった。採用企業はあくまでも提案内容により選定規程に従って決まるという。ケンドール副長官が設計チームの選定を今後も守るべき大切な存在と表現していることから意味深長ながらもあきらかに意図を伝えようとしている。
  5. 空軍は機体単価550百万ドルで100機調達にこだわっているが、これとは別に研究開発段階で200億ドルが必要であり、これを見るとボーイングに有利に働く。というのは機体生産では技術の革新性よりも現場の生産活動が重要に働くからだ。
  6. またボーイング、ロッキード組には議会からの支援も期待できる。というのは両社とも規模が大きな企業で倒産させるわけにいかないからだ。しかし両社は予算縮小の影響を受けやすい。2020年に予算不足が発生したらロッキードはF-35を諦めてLRSBに集中できるだろうか。ボーイングがKC-46で譲歩するだろうか。ともに実現の可能性は薄く、新型爆撃機だけに専念できるのはノースロップ・グラマンである。
  7. ノースロップのステルス機設計技術を維持してロッキードだけに独占させないためにもアボウラフィアは「設計能力を温存させてきた秘密予算の世界が存在してきた」と指摘する。ノースロップが契約受注に失敗すれば同社が爆撃機を組み立てることはないが、ペンタゴンとしては同社の高度技能を有し情報に通じた従業員を高度の秘匿事業に関与させたいと願うだろう。こういった事業は予算書には姿を見せない。
  8. アボウラフィアもB-2の製造、保守管理を通じて得た同社の技術水準が重要と考える。
Over the Pacific太平洋上空を飛行するB-2
  1. それでもアボウラフィアでさえどちらが受注するのか直感でもデータでも答えられないという。
  2. ボーイングが受注の場合はロッキードが重要な設計工程を受持つが知的財産をボーイングと共有することは皆無と言ってよい。ボーイング=ロッキードチームには航空機生産で信用実績があり、ロビースト多数を送り、豊富な資金で議会に影響を与え、予算危機が今後発生しても事業の温存を図るだろう。
  3. もしノースロップが受注すれば、米国にはステルス機設計能力を有する企業が二社となる。
  4. 宇宙分野は技術や産業基盤の議論とずれるが、高性能技術の要求で共通要素がある。ボーイングが自社では十分な技術的知見を有しない高性能情報集衛星の受注に成功したが、結果として事業費の超過日程も大幅に狂う損失が数年にわたりつづき、事業が終了された事例(将来画像アーキテクチャ事業)がある。選定委員会が正しい判断を下すことを祈ろう。■


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...