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あれから3年。USSコネティカットの海中衝突事故の真相を推理する。貴重な同潜水艦の現場復帰は2026年以降。

 


3隻しかないシーウルフ級のUSSコネティカットが海中の『山』に激突した事故から3年になりますが、その真相は今も闇の中です。入手可能な情報から状況を推理したThe National Interest記事からのご紹介です。海南島が一つのキーワードのようです。





シーウルフ級潜水艦「コネティカット」はなぜ海底山に激突したのか?


3年前、コネティカットは海南島の中国海軍潜水艦基地のすぐ近くを航行しながら、深海を徘徊していた。そして悲劇は起こった。



USSコネティカットは、米海軍が運用するシーウルフ級潜水艦3隻の1隻で世界で最も先進的な潜水艦だ。1980年代に設計され、1990年代に配備されたシーウルフ級は、ロサンゼルス級攻撃型潜水艦の後継艦となった。シーウルフ級は最先端の監視技術を搭載し、攻撃型潜水艦の域をはるかに超えた存在となるべく建造された。

 唯一の問題は、シーウルフ級が非常に高価だということだった。冷戦が終結し、ソ連が崩壊したことで、アメリカ議会はシーウルフ計画に当初の目的通り資金を提供する必要性を見いだせなくなった。

 その結果、海軍がこの驚くべき潜水艦わずか3隻しか調達できなかった。シーウルフ級は20年以上前の潜水艦にもかかわらず、世界で最も先進的な潜水艦であり続けている。シーウルフ級が配備されるときはいつも、状況をアメリカに有利に傾けるのに役立っている。

 シーウルフは、北極圏のような遠隔の敵地での活動に特に優れており、ミッション成功率は驚異的である。これらのシステムが一定期間運用を離れるたびに、その損失が海軍に大きな能力格差をもたらす。

 だからこそ、2021年10月2日に比較的浅い南シナ海の海底に沿う海底山に衝突したとされるUSSコネティカットが行動不能になったことは、海軍にとって危機な状況となった。

 3年前、コネティカットは海南島の中国海軍潜水艦基地のすぐ近くを航行しながら、深海を徘徊していた。

 だがUSSコネティカットは何をしていたのか?

 海南島にある中国海軍施設は、世界で最も洗練された施設のひとつと考えられている。その秘密施設に接近しスパイ活動を行うことは、アメリカにとって監視の大当たりであり、コネティカットが行っていたことは、まさにそれだったのかもしれない。

 コネティカットの事件にはいくつかの論争があった。海軍の公式見解は、同艦は国際水域を航行し、中国施設の近くにいたにもかかわらず、疑わしいことは何もしていなかったというものだった。

 一方、中国側はコネティカットが「無責任」な行動に出たと主張し、証拠もなくコネティカットが放射性物質を南シナ海に漏らした可能性を示唆した。

 USSコネティカットは少なくとも2026年までは海に戻れない。

 しかし、何が起こったのだろうか?

 このような場合、仮に何か不都合なことが起きたとしても、少なくとも数十年間は、一般市民が知ることはないだろう。そこでこの記事では、海軍の公式発表が真実である可能性が最も高いと想定する。


USSコネティカットに 何が起きたのか 

とはいえ、アメリカの潜水艦艦隊がいかに重要か、そしてアメリカの造船所がいかにみすぼらしくなっているかを考え、選択肢を探ってみよう。念頭に置いておいてほしいのは、これらが起こったと言っているわけでも、何か証拠があるわけでもないということだ。

 中国軍は、南シナ海や東シナ海、台湾海峡など、北京が切望する世界各地への米海軍による戦力投射を阻止するために、強力な対アクセス/領域拒否(A2/AD)能力を整備した。つまり、アメリカは潜水艦艦隊により大きく依存しなければならなくなる。

 中国海軍はこのことを理解しており、北京は現在、米潜水艦が中国海軍にもたらす脅威を軽減する能力を考案しようとしている。中国は、アメリカの潜水艦を狩るために、実に洗練された技術とテクニックに目を向けている。


1. 6Gテラヘルツ・トラッキングと高度な水中ドローン

中国科学アカデミーの福建省物質構造研究所の研究者たちが、「相当の距離から高度な潜水艦のかすかな痕跡も検出できる高感度潜水艦探知システム」を開発したと昨年発表した。

 中国が6G通信技術に投資したおかげで、科学者たちは、マイクロ波と赤外線の中間であるテラヘルツ周波数を使う方法を発見したと主張している。中国はさらに、この技術の実用化を主張している。

 この探知方法に無人水中ビークルを組み合わせれば、アメリカの潜水艦の脅威を抑止する上で、中国は大きなアドバンテージを得ることになる。そして、中国海軍はすでに超大型(XL)UUVシステムを開発している。

 Asia TimesのGabriel Honrada記者によると、衛星画像から、中国のXLUUVのうち2機が海南島の三亜海軍基地にあることが確認されたという。

 三亜に停泊しているXLUUVプラットフォームの1つは、小型UUVを搭載し、海底機雷を展開できるHSU-001 UUVに接続されていると考えられている。Honradaの評価では、このXLUUVは"(中国の)有人水上艦艇や潜水艦を危険にさらすことなく"敵潜水艦を積極的に捜索・追跡することができる。

 これらのプラットフォームがすでに三亜で稼働していたとすれば、近くの国際水域から基地を偵察しようとしたコネティカットが探知され、このシステムに追い払われ、最終的に探知を避けようと急ぐあまり、誤って近くの海山に墜落した可能性がある。


2. レーザーによる米潜水艦の追跡

2021年、上海光学精密機械研究所は、水面下160メートル(525フィート)以上の物体を探知できるレーザーをテストしたと発表した。マイケル・ペックによれば、これは既存の装置の2倍の深さだという。同研究所は、グリーンビームとブルービームのレーザーを使い、このシステムが機能することを証明したと述べた。さらに中国チームは、潜水艦から水中の動きを検知するセンサーを構築したと主張した。

 さらに重要なことは、中国が何年も前から、米潜水艦を水中で追跡できるレーザー発光器を搭載した人工衛星を持っていると言っていることだ。彼らがそのような技術を持っていると信じるに足る根拠がある。 

コネティカットの問題は、このいずれかが原因なのだろうか?何とも言えないが...。


3. 合成開口レーダーと極超音速魚雷

中国はここ数年、電子偵察衛星「耀冠」数基を地球周回軌道に投入している。同衛星は、合成開口レーダーシステムを搭載し、中国の対潜水艦戦能力を大きく前進させる。

 地上からの電波を傍受し、その電波で海上の艦艇の位置を三角測量するために使われる。中国は「耀冠」衛星コンステレーションを重視しており、米国の対衛星兵器による攻撃から衛星を守るため、軌道上に「ボディーガード」衛星も配備している。

 2年前、長沙にある国立国防科技大学の李鵬飛は、彼の研究チームが空中に発射され、マッハ2.5で移動し、終末期には海に潜り、魚雷になる「クロスミディアム」超音速兵器を開発したと発表した。李はこの兵器について、「既存のいかなる艦船防御でも防ぐことはできない」と胸を張った。

 未検証のこの超中速超音速兵器が、前述の追跡システムのいずれかの次世代機能と組み合わされれば、狙われた米潜水艦に破滅をもたらすかもしれない。


脅威の克服

 米海軍は窮地に立たされる。幸い中国海軍は、アメリカの水上艦隊を阻止するA2/ADシステムと同程度で米潜水艦の脅威を後退させる能力の実現は進んでいないようだ。中国は明らかに、北京が支配を目指すインド太平洋地域への米海軍のアクセスを遮断することに専念している。

 国防総省は、潜水艦隊に対するこうした新たな脅威に対抗する準備をしなければならない。 コネティカットは少なくともあと2年間は復帰できない。海南島で活動する中国軍による敵対行為の結果であろうとなかろうと、これは平時の事故だ。

 中国が、米海軍が南シナ海や東シナ海、台湾海峡などの紛争地域に、潜水艦を阻止するために、どのような手段を取るか想像してみてほしい。海軍のプランナーと国防総省の調達部門は、中国の水中A2/AD脅威への対抗策を開発し、米潜水艦の殺傷力を維持する必要がある。■


Why Did Seawolf-Class Submarine USS Connecticut Slam Into an Underwater Mountain? | The National Interest

by Brandon J. Weichert

April 26, 2024  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: USS ConnecticutSeawolf-ClassSubmarineMilitaryDefenseU.S. NavyNavy


コメント

  1. レーダーにせよレーザーにせよアクティブセンサーなら捜索されていることはわかりますが対抗手段はどうするべきか?量子レーダーのようなブラフなら良いですが。
    潜水艦は探知されづらいことが唯一と言って良いとりえなので、対潜センサーが発達すれば無価値化しかねません。

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