ロシアや中国を相手の防諜活動への取り組み方の違いのため、米国が懸念を示すのは当然とはいえ、スイスにはスイスの言い分があるのでしょうが、やはり西側全体でみると標準化は避けて通れないのでしょう。かくいう日本にもスパイ防止法がないのは皆さんご承知のとおりです。The Aviationistの記事からお送りします。
The insets show where Hotel Rössli, in picturesque Unterbach, is located. (Image created by The Aviationist, using Google Maps, Hotel Rössli and USAF images)
スイスのウンターバッハにある100年以上の歴史を持つホテルが、スイス空軍のF-35A戦闘機の拠点となるマイリンゲン飛行場に近いことで、アメリカ諜報機関が懸念している
アルプスのウンターバッハ村にある築100年のログハウス、ホテル・レッスリは、雪を頂く山々や近くの滝の息を呑むような眺めを提供している。しかし、アメリカの諜報機関が注目したのは、ホテルの裏側からの眺めだ。わずか100メートル離れたマイリンゲン飛行場には、間もなくスイス空軍のF-35が駐機する。
This map shows where the Hotel is located compared to Meiringen runway (Image credit: Google Maps)
ベルナーオーバーラントのアルプス山脈に挟まれた標高570メートルに位置するマイリンゲン飛行場は、航空ファンに非常に有名な空港だ。近未来的な管制塔と、メイン滑走路脇の大きなエプロンに駐機しているヘリコプターがなければ、その存在に気づくことすら難しいだろう。
空港は、滑走路や誘導路への侵入を防ぐため飛行中に作動する踏切システムにがあり、時にはほとんど存在しないフェンスに囲まれている。実際、地元の道路は空港を北から南へ、東から西へと横断している。滑走路の横断は、航空機が離陸する数分前まで、信号で規制されている。基地は一種の大きな "オープンスペース "であり、地元に駐機している航空機はマウンテン・シェルター内に、整備用の格納庫はメインストリップ沿いの近代的な建物内にある。
滑走路の敷居や誘導路の近くを自由に歩いて、好きなだけ写真を撮ることができる。
要するに、この空軍基地は航空監視員たちのパラダイスであり、アメリカ諜報機関にとっては悪夢となる予定なのだ。
マイリンゲンで航空機にどれだけ近づくことができるかを示す写真(著者)
スパイ武勇伝
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、2018年から中国の王一族が所有するホテル・レッスリが昨年、スイス連邦警察の家宅捜索を受けた。米英の国家安全保障当局は、このホテルの絵に描いたようなファサードが、北京の諜報機関にF-35に関する情報収集の絶好の場所を提供したと主張した。
中国の諜報機関やロシアの諜報機関が第5世代航空機のデータ取得に熱心であることは周知の事実だが、ホテル・レッスリが北京に特権的なスパイ拠点を提供するために購入されたかどうかは定かではない。
F-35に対するスイスの関心が高まるにつれ、アメリカの情報当局者とスイスの外交官は、在ジュネーブ外交部を隠れ蓑に活動する中国の諜報員がF-35の情報を収集しようとしていると繰り返し警告した。バーゼル大学の中国専門家で北京語を話すラルフ・ウェーバーは、スイス連邦情報局には中国を専門とするスタッフが5人しかいないと指摘した。「スイスと中国の政策は、基本的に中国を刺激しないことを目的としています」と彼は付け加えた。
最終的にスイスは2022年、F-35に60億スイスフラン(61億8000万ユーロ)を支出することを約束した。しかし、米政府関係者は、スイスが飛行場周辺の安全保障に十分に取り組んでいないと感じている。
王夫妻は、スパイ活動にホテルを利用することは否定し、単なる旅行者の施設だと主張したが、欧米の諜報機関が懸念する理由はいくつかあった。王夫妻はスイスの食習慣に不慣れで、現地の労働力は高コストであるため、休暇のピークシーズンを含め、頻繁に中国に帰国していた。ホテルの経営が悪化し、中国から新たな労働者がやってきたが、その中には滞在許可証のない者もいた。
王一家の経歴にも疑問があり、王仁は外交官の息子としてドイツとスイスで育ったと主張している。
米政府関係者は、2017年の中国の国家安全保障法に基づき、北京から要請があれば王一家は情報収集に協力せざるを得ないと主張している。
証拠なし
米国の懸念にもかかわらず、スイスの情報当局はスパイ活動の具体的な証拠を発見しなかった。警察の手入れと軽微な違反に対する罰金の後、王夫妻はホテルを売りに出し中国に戻った。多くの地元住民は、この事態を過剰反応とみなした。元オーナーのカスパー・コーラーはスパイ活動の有効性自体を疑っていた。
ウンターバッハ飛行場委員会の地元卵生産農家、シモン・ツムブルンによれば、スイス人一家がこのホテルを購入しようとしたが、ローンが組めなかったという。彼は中国の家族は無実だと信じている。
昨年、オンライン広告にこのホテルが180万ドルで売りに出されていた。1月、ウンターバッハ飛行場委員会は、スイス軍という買い手が見つかったことを知った。購入条件は明らかにされていない。■
Swiss Hotel In Espionage Row: U.S. Fears Chinese Spy Plot Near F-35 Base - The Aviationist
May 17, 2024 China, F-35, Troubled Areas
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