B61核爆弾を搭載したF-15 ロシアのウクライナ侵攻でNATOの核抑止力が揺らいでいる 欧 米では何十年もの間、大国間の大規模戦争の力学や核エスカレーションの可能性をあえて考えるのは不要としてきた。だがロシアのウクライナ侵攻でこうした安全保障の感覚を打ち砕かれた。 ウクライナ侵攻は、プーチンの壮大な野望を明らかにした。プーチンは、東欧にロシア・ソビエト帝国を再建したいと考えている。ウクライナの合法性を認めないことで、旧ソ連のラトビア、リトアニア、エストニア、さらにはフィンランドやポーランドといった近隣諸国の正統性が不安になった。 プーチンは、ソ連崩壊を「今世紀最大の地政学的大惨事」と位置づけ、「何千万人もの同胞、同胞がロシア外で暮らすことになった」と嘆いている。プーチンは、ロシアが安全であるため、ヨーロッパのパワーバランスに修正が必要と感じている。この野心がロシアの外交政策を説明し、プーチンの非自由主義的、保守的な哲学の産物、ソ連崩壊後にロシア勢力圏を発展させたいとするプーチンの願望の説明とも一致する。 長期的に見れば、NATOがプーチンを抑止する最善の方法は、ロシアがラトビア、リトアニア、エストニア、ポーランドといった領土を奪う能力を否定できるだけの通常兵力を東欧に配備することである。しかし、NATOにはその能力が今はなく、整備に時間がかかる。その間の「脆弱性の窓」では、米国の核抑止力とNATOの戦術核が欧州の安全保障のバックボーンとなる。 抑止力の信頼性を確保するため最善の方法となるのが今回の戦争の結果だ。ロシアがウクライナで長期戦に陥る可能性が高くなれば、東欧のNATO諸国を攻撃して紛争を拡大する動機が生じるかもしれない。これを抑止するため、米国とNATOは、冷戦初期の核戦略家が提唱した瀬戸際政策を穏健な形で取り入れて核抑止力の信頼性を高めるべきだ。これは、米国とNATOの核態勢を変化させ、紛争早期で核兵器の使用を脅すことを意味する。ただし、この解決策は理想的ではないし、短期的な解決策と考えるべきだが、今日のヨーロッパの安全保障に、瀬戸際外交をある程度までNATOが受け入れることが必要となる。 バルト諸国のリスク 米国とNATO同盟国の目標は、ラトビア、リトアニア、エストニア、ポーランドなど東欧諸国をロシアの攻撃から守ることのはずだ。
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