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北朝鮮のケソン連絡事務所爆破は自暴自棄な心理の反映に過ぎない

北 朝鮮が6月16日に南北連絡事務所を爆破し、ソウルと連絡を断つ姿勢を強烈に示した。南朝鮮国防相は北が南に軍事行動を実施しても、配下の軍部隊は「強力な対応」の準備が整っていると強調。ただし北による今回の行動は侵攻を狙ったものではなく、自らが感じている恐怖と弱点を顕にした格好だ。 米政府は北の教条的態度に直接反応し「軍事オプション」を口にすべきではない。なんといってもこちら側陣営の通常兵力、核兵力は圧倒的に強力であり、北への抑止力になっている。 6月に入り、北朝鮮は挑発的な脅かしを繰り返している。南朝鮮との連絡を断絶したのは最新の動きだ。理由は明白だ。制裁が北朝鮮に苦痛を与えており、経済面で救援策を必死に求めている。南朝鮮の文在寅大統領は米韓両国の軍事力が圧倒的に強力で抑止力となり北による侵攻を食い止めていることがよくわかっている。 北のほうこそこの事実を承知しているはずで、金正恩は米韓同盟を相手に開戦するリスクを絶対に負いたくないはずだ。自身の生命があやうくなるためだ。といってワシントンの専門家は北朝鮮に関し警句の声をあげるのをやめるわけにいかない。北を警戒するのが米国の通常の態度だ。 2004年7月の上院公聴会でジェイムズ・ケリー東アジア太平洋問題担当国務次官補はこう発言していた。クリントン政権での「合意された枠組み」合意は北朝鮮の核兵器開発開始を止められなかった。ブッシュ政権で目標は検証可能かつ不可逆的な北朝鮮核開発の停止以外になかった。 ブッシュの政策は失敗に終わった。わずか二年後に北朝鮮が初の核兵器実験を行ったためだ。2016年9月には第5回目の核実験実施に踏み切り、「米国は北朝鮮を核兵器保有国家として絶対に認めない」とオバマ政権が出した声明文でも平壌を止めることができず、そのわずか一年後に第六回目で最大規模の実験が実施された。 トランプ大統領は2017年に初の国連演説でクリントン、ブッシュ、オバマの歴代大統領と同様の圧力を北朝鮮にかけ「非核化が唯一受け入れられる将来の姿」と述べるとともに、「必要に迫られたら」「北朝鮮を完全に破壊する」とした。その警告から3年が経つが、ワシントンは同じ目標を追い求めている。北朝鮮の完全非核化だ。 トランプは金正恩との首脳会談2回と非武装地帯でのミニサミット会談を

重武装機構想を巡り意見がまとまらない米空軍

今年1月にユタ試験場でMC-130JからのCleaver弾薬投下実験は成功した。Credit: U.S. Air Force 米 空軍の短期優先事項として「重武装機」が急浮上しているが、機材選定で結論がまとまらず、このままだと指揮命令系統やノースロップ・グラマンB-21事業にも影響が出てくる恐れがある。 空軍研究本部が新型Cleaver弾薬の実証実験に成功 「重武装機」試作作業の予算を検討中 ロッキードC-130、ボーイングC-17の母機から新型長距離弾を発射する案を空軍戦闘統合能力実現事業 (AFWIC) 室が短期解決策として提示している。 一方、空軍グローバル打撃軍団 (AFGSC)はミッションに最適化させた新型機の開発を主張している。 空軍協会のシンクタンク、ミッチェル研究所はともに支持しない。このたびAviation Weekは公表前の同研究所による資料を入手した。次期航空宇宙コンセプト性能評価部長のマーク・ガンジンガー退役大佐が編纂し、費用対効果が一番高いのはB-21の調達増と主張している。 B-21の最低100機調達では長距離打撃手段が不足するとの見解で関係部署すべてが一致している。B-21はノースロップB-2(20機)とロックウェルB-1B(62機)と交代し、ボーイングB-52(75機)と併用する。 「爆撃機部隊の規模をどこまで拡大しても、統合軍が必要する規模に達しないことはわかっている」とクリントン・ハイノート少将(AFWIC 副司令)は述べている。 空軍最新の爆撃機必要機数は最低220機の推定とAFGSC司令官ティモシー・レイ大将は4月に報道陣に語っていた。 ミッチェル研究所による分析では空軍の爆撃機数はB-2とB-1B退役に伴い、2032年に120機程度まで縮小となる。 元爆撃機パイロットのガンジンガーはB-21の発注規模は2040年までに120機と予測。75機のB-52とあわせても空軍が求める最小規模に30機不足する。この差を埋める策として現行輸送機に長距離弾を搭載する、新型機を開発する、あるいはB-21を追加発注するの各案があり、意見がまとまらないまま内部議論が続いている。 根底に費用対効果と能力のふたつがある。ステルス

F/A-18スーパーホーネットの新型ブロックIIIが初飛行

Boeing ボ ーイングはF/A-18スーパーホーネットの新型ブロックIIIの初飛行を実施した。 ボーイングはYoutubueの自社チャンネルに映像を公開し、複座のF/A-18F (F287)の初飛行を示した。 飛行テスト用二機が米海軍に近日中に引き渡される。パイロットがブロックIIIに習熟したあとで空母運用テストがはじまる。実戦用機材は2021年から引き渡し開始となる。 ブロックIIIの初飛行と入れ違いにF/A-18E/FブロックII仕様の最終引き渡しが4月にあった。 ブロックIIIの改良点に機体構造、センサー能力向上、データスループットの拡張、新型赤外線探索追跡センサー、一体型燃料タンクがあり、後者は飛行距離を拡大するがF287機体には未装着だ。 2019年3月にボーイングはブロックIII仕様のスーパーホーネット78機の製造契約を40億ドルで交付された。作業は米海軍のブロックII機材をブロックIIIに改装するもので、耐用期間を6千時間から1万時間に延長する。作業は三年で完了する。 オーストラリアでもスーパーホーネットブロックII24機が供用中だが、ブロックIII性能改修は未決だ。 ボーイングはクウェイト向けスーパーホーネット28機の製造契約を4月に受注した。ドイツはF/A-18E/Fを30機調達し、核兵器を搭載させる。ドイツは同機の電子戦用途機材EA-18Gグラウラーも15機導入する。 スーパーホーネットはカナダ、フィンランド、インドでも戦闘機選定の候補に残っている。■ この記事は以下を再構成したものです。 ​ Block III Super Hornet conducts maiden sortie By Greg Waldron 11 June 2020 https://www.flightglobal.com/fixed-wing/block-iii-super-hornet-conducts-maiden-sortie/138787.article

歴史に残らなかった機体17 ノースロップF-89は核武装の全天候迎撃機だった

全 天候双発機のノースロップF-89スコーピオンは航空防衛軍団専用に設計された初のジェット迎撃機だった。▶直線翼で複座の同機にはレーダー操作員がパイロットを誘導し、昼夜問わず敵機を捕捉撃破する構想だった。▶アリソンJ35エンジン(推力8千ポンド)にアフターバーナーを付けた。巡航速度は465mphでアフターバーナーを作動させ630mphを出し、航続距離は1千マイル、実用上昇限度は45千フィートだった。▶ F-89の初飛行は1948年8月で米空軍向け納入は1950年7月に始まった。▶合計1,050機が製造され、1960年代末まで現役だった。▶迎撃機としてソ連の核爆撃機が米国本土に侵入する前に撃墜する役目だった。 ▶F-89には当時最先端の兵装が搭載され、はじめて機関銃を全廃した戦闘機となり、ヒューズ製ファルコン空対空誘導ミサイルを採用した。▶ミサイルは敵機にレーダー照準を合わせると自動発射する仕様だった。 F-89Jでさらに威力を高め空対空核兵器を初めて搭載した機体となった。▶これがジーニーロケットで、1957年7月にネヴァダ試験場上空で核弾頭付きジーニーを試射している。▶MB-1ジーニーはその後AIR-2Aに改称され、「ディンドン」の愛称がつき、全長3メートルの本体に1.5キロトンのW25を弾頭に付けた。▶ジーニーはその後、対地攻撃用通常兵器に改装された。▶ただし、改装作業が完了した時点でF-4ファントムはじめ新鋭機がF-89スコーピオンにかわり供用開始していた。▶それでも1960年代初頭にスコーピオンはジーニーとの組み合わせで供用中だった。 F-89Jは350機がそろい、航空防衛軍団で初の核装備迎撃機となった。▶1950年代末から州軍へ移譲が始まり、核兵器は撤去され、最後の機体の退役は1969年7月だった。■ この記事は以下を再構成したものです。 Northrop F-89 Scorpion–The First Combat Aircraft Armed with Air-to-Air Nuclear Weapons June 13, 2020   Topic: Security   Region: Americas    Blog Brand: The Buzz   Tags: Military

地球温暖化でアラスカの地政学的意義に注目

ア ラスカがニュースに出る頻度が増えている。ほぼ毎日のように北米空域に向かうロシア爆撃機に米空軍戦闘機がスクランブル出撃している。太平洋地区で初のF-35共用打撃戦闘機飛行隊はアラスカのイールソン空軍基地で今春運用開始した。サウスダコタからB-1Bランサーがベーリング海ヘ飛びカムチャツカ半島をかすめる経路をとり、日本領空まで超長距離飛行した。その他事例もあり、実ににぎやかな状態だ。 空軍は一連の動きをペンタゴンの目指す「動的戦力展開」“ dynamic force employment ” モデルの一環とし、通常は本国近くにある部隊を予想を超えた頻度で遠隔地に派遣する構想で、米軍が大規模戦力を遠隔地点へ展開する能力を有するのを敵想定国に示す意味がある。平時の戦略競合は他のドメインでも展開している。情報、サイバー、経済の各分野だ。 戦略競合関係とは軍事力で相対的な強み弱みを会話するようなものだ。双方が戦略的に優位だと示し、有事には勝てないと他方に信じ込ませようとする。パンデミックが一段落し競合が復活する中、戦略競合は相手を動揺させる言葉の応酬に似ている。 アラスカは太平洋と北極海の交わる一等地であり、超大国間の言葉の応酬の舞台となっている。その手段が空軍力と海軍力である。そのためこの地区の重要性が増している。 地政学者ニコラス・スピクマンが指摘するのは地政学上の地域区分が地理上の区分けと異なることだ。地理はほぼ固定しているが地政学では時に応じ変化し、競合国の衰亡に左右される。北極海方面では物理面政治面で同時進行で変化している点で他と異なる。地球物理上で文字通り姿を変えつつある。米海軍の海洋学予測では温暖化で毎年数週間だけ新しい海上航路が生まれその後再び氷結すると見ていた。北方水路はロシア沿岸に2025年まで毎年6週間にわたり通航可能となるというのが海軍の予測だ。北西通路がカナダ北方からアラスカ沿岸に伸び、通行可能となるのは間欠的だ。驚くべき変化は年間二三週間だけだが北極点を通る北極横断通路があらわれることだ。 海上交通で新しい可能性が生まれると経済面軍事面で意味がある。気温上昇の経済効果はすぐ現れる。北極海を経由すれば東アジアと西欧で所要日数が4割短くなる。海上移動の費用が減ればサプライチェーン全体に朗報だ。ロシアにとって

NGADとデジタルセンチュリーシリーズ、画期的な機体開発を目指す米空軍の新しい動向

  ボーイングが発表した空軍向け次世代戦闘機の構想図。 (Boeing) 米 空軍は次世代戦闘機開発事業の仕様を今夏に決定する。空軍調達トップが明らかにした。結果次第で事業の推進あるいは中止が決まる。 空軍は次世代戦闘機開発を大幅に方向転換する。次世代制空機(NGAD)と知られる同機は、空軍調達を統括するウィル・ローパーが「デジタルセンチュリーシリーズ」と呼んでいる。 昨年9月、ローパーは事業の最優先事項は調達戦略にあり、デジタルセンチュリーシリーズを技術的に実施可能なのかを実証することだとDefense Newsに対し説明。従来型開発手法より安価に実施できる構造の確保も必要と述べていた。 企画はほぼ完成したと、ローパーは今週火曜日にミッチェル航空宇宙研究所主催のイベントで述べた。 「NGADをデジタルセンチュリーシリーズに組み込んだ調達案が今夏に完成する。ここで大日程等は詳しく語れないが前例のない動きとなるのは確実だ」 デジタルセンチュリーシリーズは空軍が当初想定した第6世代戦闘機構想の侵攻制空機材(PCA)と大きく異なり、ネットワークでつないだ各種システムの一部として、無人機、センサー類、他機材を10年かけて試作化する構想だ。 デジタルセンチュリーシリーズの事業モデルでは新技術を応用した新型戦闘機を防衛産業複数社に数年で完成させる。空軍は契約企業を絞り込み、少数生産させ再び同じ工程を開始する。各社には新型機の設計製造の機会が常時保証される。全て実施しても5年とかからないとローパーは述べた。 昨年10月にはデイル・ホワイト大佐が高性能機材開発室長に任命され、NGADとあわせデジタルセンチュリーシリーズ調達構想を統括することんあった。同室は今年6月に戦闘機・高性能機材事業推進室に改組され、ホワイトは准将昇進が内定している。 空軍は2021年度予算に10億ドル要求し、NGAD事業を進める。前年の予算実績は9.05億ドルだった。だが、今後予算は増加の気配がある。 ローパーはデジタルセンチュリーシリーズで同機開発を進めた場合は既存手法より経費増を予想している。複数企業が同時並行で設計、試作機製作を短時間ですすめるためだ。ただし、機材の維持経費や回収経費は低く抑えられると見ている。. 調達効果が理論通りに実証されれば、議

次期空軍参謀総長ブラウン大将はどんな人物? インド太平洋の知見が豊かで対中国戦略に最適

Gen. Charles Brown 新 空軍参謀総長チャールズ・ブラウン大将は太平洋地区で経験を積んでおり、これが空軍のみならず国防長官周辺にも貴重な財産となるはずだ。国防総省は仮想敵国をこれまでのロシアから中国へ変更しているといわれる。 「中国が脅威だと改めて伝えている」と内部筋はブラウンが太平洋空軍司令だったことに触れている。上院はブラウン人事を98対0で承認した。▶「戦士であり指導者として深い知見をインド太平洋地区で有している。歴史上重要なこの時期に空軍参謀総長に就任したのは完璧な人事だ」とミッチェル研究所で空軍戦力の専門家であるマーク・ガンジンガーが評した。 ブラウンは空軍入隊は1984年で戦闘機パイロットとして受勲した。2018年にPACAFトップに就任したが当時から中国を「確実に増強している脅威」と評していた。▶共同作戦の意義を深く理解しており、空軍を共同運用に適応させてきたと別の評がある。▶「共同作戦の意義をどの司令官より深く理解していると思う。空軍組織内を変革し、効率と効果を重視した形で共同作戦に適合させていくだろう」と同上筋は評す。 初の黒人参謀総長を迎える空軍だが、ブラウン人事が上院で全会一致で承認されたことも強いメッセージを送ったと見ている。時あたかも人種間で騒擾状態が広がっている。今回の騒動は5月25日にジョージ・フロイドがミネアポリス警察の手で死亡したのがきっかけだ。▶興味を惹かれるのはブラウンの父はヴィエトナム戦に若輩士官として参戦しており、その時期にも社会は人種対立をめぐり不安定となっていた。▶ブラウンはツイッターに感動的な映像を掲載し、フロイドの死と自身の人種偏見について語っている。「人種問題を考えると自分自身の経験では単純に自由と平等を祝えない」という。▶米軍は全体としては全国平均より遥かに人種的に多様な構成になっている。国勢調査では人口の13%がアフリカ系国民だが、DoD統計の2018年版では現役隊員の17%が黒人である。ただし将校は9%に過ぎない。 複数筋からブラウンは多数が尊敬する人物との声がある。「本人に背景説明したことがある者...によれば好奇心豊かで知性的で質問を返してくるが威圧的な態度はない」▶「空軍、宇宙軍のみならず各軍の諸氏とともにブラウン大将、シャリーン夫人に祝辞