スキップしてメイン コンテンツに移動

前方配備空母の追加で日本は戦略的な安全保障思考を得ることができるか


二隻目の空母前方配備の話題は以前もお伝えしましたが、このたび別のシンクタンクもその方向性を指摘した報告書を刊行し、米上院において検討されているようです。配備先に日本が最有力ですが、実施となれば国内感情の視点ではなく、インド太平洋の安全保障の観点から支持したいと思います。さらに中国を封じ込めるのではなく、同じ土俵で行動できる国に変えていくというのが米戦略の骨子になるかもしれません。中国がまず抵抗するのは目に見えていますが、長い目でみればこの選択が最大の利益を引き出すことを頭のいい中国人はきづいているのではないでしょうか。

Independent U.S. Rebalance to the Pacific Report Calls for Study of Second Carrier Based in 7th Fleet

By: Sam LaGrone and John Grady
February 3, 2016 7:22 PM • Updated: February 3, 2016 11:29 PM

USS Antietam (CG-54), right, steams alongside USS Ronald Reagan (CVN-76). US Navy Photo
USS Antietam (CG-54), right, steams alongside USS Ronald Reagan (CVN-76). US Navy Photo

WASHINGTON, D.C. – 太平洋への再バランス政策を検討していた独立機関による結論は西太平洋に二隻目の空母を前方配備すべしというものだ。作成者の一人は乗員軍事委員会で2月3日に要旨を発表している。提言したのは戦略国際問題研究所(CSIS)で委員長ジョン・マケイン上院議員の意見と通じるものがあり、昨年に続きこれで第七艦隊に二番目の空母を前方配備うするよう求める意見が出るのは二例目になった。
  1. CSIS報告書は空母配備を明確に提言していないが、さらに検討を続けるとしている。
  2. 「この件について明確な提言を避けたのは作戦上の課題があるため」とCSISのマイケル・グリーンはメイジー・ヒロノ上院議員(民、ハワイ)の質問に答えている。
  3. 二隻目の配備先で最も可能性が高いのはすでに空母用施設が整備されている日本の横須賀だが、航空部隊をどこに収容するかの問題が残る。
  4. 「空母を追加配備すれば航空隊の配置先が必要で、岩国海兵隊航空基地は拡張中だが受入国としての日本政府を助けることになる」
  5. CSIS報告書は先月刊行されたが、西太平洋に二隻目の空母を前方配備する構想は日本報道陣の関心を呼び、「反発はそんなになかったです。日本政府の高官や防衛関係者は大いに関心を示しました。構想を実現した際の意味と戦力の増加が理由でしょう」(グリーン)
  6. 「同盟各国の懸念に対応できます。第七艦隊の空母一隻の持つ意味は大きく、各国は太平洋軍の動向を注視しています。各国とも難易度が増え続ける地域で対応せざるをえませんから」
  7. その難易度を生んでいるのは中国の人民解放軍 (PLA) の戦力増加であり、南シナ海・東シナ海でプレゼンスを強化していることだ。中国政府は軍事リスクを受け入れる覚悟ができているとグリーンは見る。
  8. 「この緊張状態は今後5年から10年続く可能性が大で、理由としてPLAの作戦要領にこの考え方が埋め込まれており、戦力構成や指導原則でも同様です。中国の外務省はじめとする政府機関は軍の動きを止めることはできません」
  9. CSIS報告書では太平洋への再バランスで米政府の目標が一貫していないことも指摘している。ここをしっかりしないと中国や米側同盟各国に明確なメッセージが伝わらない。
  10. 「ネットワークを組んでの協力体制は中国にルールに沿って行動させるきっかけになり、フィリピンや小規模国家の当事者能力を整備すれば地震や津波が発生してもすぐに弱体をさらすことはなく、さらに貿易協定も当然考慮すべき内容です」
  11. 「以上の点を原則とすれば米政権は各国と共同して確固たる戦略方針を持ち、中国を封じ込めるのではなく、ルールに基づいた秩序を模索すること、これが同盟各国やその他国との関係で重要な原則になります」
  12. 退役海兵隊中将トーマス・コナントは太平洋軍副司令官を務め現在は同報告書の監修も行ったが米国には明確かつ簡潔に再バランスのもたらす効果を伝える必要があると発言した。
  13. 中国が主張を強めているのにはいくつか理由があるとグリーンは解説した。ひとつには習近平主席はかつての鄧小平のような中国の役割を世界の中で見る観点がない。またリーマンショックで米国が大打撃を受け、もはや大国の地位を維持できなくなったとの誤った理解をしていることもある。
  14. フィリピンやベトナムは中国の拡張主義を警戒しており、「もっと取られてしまう」と見ているとグリーンは発言。そこで米軍や日本艦船による巡航の定期的実施も有効だと提言している。これはすでにオーストラリアが実施しているのと同様だ。
  15. 「NATOと同様の選択的な安全保障枠組みはどの国にも歓迎されないでしょうし、これでは中国を望ましくない方向においやってしまうでしょう」
  16. 中国経済の成長率がかつての9パーセント台から3ないし4パーセントに減速してもグリーンは逆に中国が米国の力を見誤った8年前と同じ過ちをすべきではないと警句を鳴らす。経済減速の結果は「今よりつつましい中国」あるいは「今より国粋主義で不機嫌な中国」のいずれかがこれから5年以内に出現するとグリーンは見ている。
  17. 中国の軍事装備近代化に経済不振が与える影響についてコナントは海軍力については「減速傾向は全く見られない」と述べた。■

コメント

このブログの人気の投稿

フィリピンのFA-50がF-22を「撃墜」した最近の米比演習での真実はこうだ......

  Wikimedia Commons フィリピン空軍のかわいい軽戦闘機FA-50が米空軍の獰猛なF-22を演習で仕留めたとの報道が出ていますが、真相は....The Nationa lnterest記事からのご紹介です。 フ ィリピン空軍(PAF)は、7月に行われた空戦演習で、FA-50軽攻撃機の1機が、アメリカの制空権チャンピオンF-22ラプターを想定外のキルに成功したと発表した。この発表は、FA-50のガンカメラが捉えた画像とともに発表されたもので、パイロットが赤外線誘導(ヒートシーキング)ミサイルでステルス機をロックオンした際、フィリピンの戦闘機の照準にラプターが映っていた。  「この事件は、軍事史に重大な展開をもたらした。フィリピンの主力戦闘機は、ルソン島上空でコープ・サンダー演習の一環として行われた模擬空戦で、第5世代戦闘機に勝利した」とPAFの声明には書かれている。  しかし、この快挙は確かにフィリピン空軍にとって祝福に値するが、画像をよく見ると、3800万ドルの練習機から攻撃機になった航空機が、なぜ3億5000万ドル以上のラプターに勝つことができたのか、多くの価値あるヒントが得られる。  そして、ここでネタバレがある: この種の演習ではよくあることだが、F-22は片翼を後ろ手に縛って飛んでいるように見える。  フィリピンとアメリカの戦闘機の模擬交戦は、7月2日から21日にかけてフィリピンで行われた一連の二国間戦闘機訓練と専門家交流であるコープ・サンダー23-2で行われた。米空軍は、F-16とF-22を中心とする15機の航空機と500人以上の航空兵を派遣し、地上攻撃型のFA-50、A-29、AS-211を運用する同数のフィリピン空軍要員とともに訓練に参加した。  しかし、約3週間にわたって何十機もの航空機が何十回もの出撃をしたにもかかわらず、この訓練で世界の注目を集めたのは、空軍のパイロットが無線で「フォックス2!右旋回でラプターを1機撃墜!」と伝え得てきたときだった。 戦闘訓練はフェアな戦いではない コープサンダー23-2のような戦闘演習は、それを報道するメディアによってしばしば誤解される(誤解は報道機関の偏った姿勢に起因することもある)。たとえば、航空機同士の交戦は、あたかも2機のジェット機が単に空中で無差別級ケージマッチを行ったかのように、脈絡な

日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

  iStock illustration CHIBA, Japan —  インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む 言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。 しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。 政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。 日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。 在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。 日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。 防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。 抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。 また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。 新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。 ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。 しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。 三菱重工業 、 川崎

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックIIAとSM