日本も真剣に考えないといけない問題ですが、すでに中国は自衛隊が哨戒任務を南シナ海で実施することを警戒して予防線を貼っていますね。国際社会の一員として言論だけでなく日本も行動を検討すべきではないでしょうか。その場合に南シナ海をひとくくりにするのではなく、それぞれの海域でアプローチを変える特定解が必要ですね。
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Few Choices For US As China Militarizes South Pacific
WASHINGTON: 南シナ海に対空ミサイル配備した中国を共和党の有力議員が非難しているが、米国にどんな対抗策を打てるのだろうか。高性能HQ-9ミサイルがパラセル諸島にあるということは、ヴィエトナム、台湾も領有を主張するなかで中国が確実に太平洋に軍事力を拡充させる一歩になったのではないか、さらにこれで終わりではない。
- アメリカが中国の動きの把握に精いっぱいであるのに対し、中国は長期戦略を進めている。中国は南シナ海全域を自国領土と主張し、悪名高き九段線をその根拠とするが、これは実は1949年に大陸から追放された蒋介石政権が作成したものである。今では域内の実効支配を強め、米国の存在など眼中にないようである。
- パラセルは米海軍駆逐艦が航行の自由作戦(FONOPS)を先月実施し、中国の領有主張に真っ向から挑戦した場所だ。しかしこの実施が中国のミサイル配備につながったのか、あるいは単なる口実におわったのか。専門家は口実だったとする。
- 「中国は米軍のFONOPSとともに域内での演習の強化で米国を非難しています。都合のよい正当化ですね」と語るのは軍事面では中道寄りの安全保障国際問題研究センターのボニー・グレイサーだ。「中国が進める空域海域の実効支配強化の一部でしょう」
- 米軍による作戦実施や台湾での独立派政党の選挙勝利、開催されたばかりのASEAN東南アジア諸国連合のサミット(カリフォーニア州)が中国の動きのタイミングと戦術につながっているとみるのは保守派ヘリテージ財団のディーン・チェンだ。だが裏には南シナ海の支配を目指す長期戦略と並んで習近平主席が掲げる中国の国家意識向上がある。
- 政治面では米中間の地政学的対立よりも実は中国国内の政治情勢が重要な要素だ。「来年に共産党の党大会を控え、習近平が上席指導層の入れ替えを図っており、経済は減速中だ。習は弱腰と見られる余裕はないはずだ」(チェン)
- 「中国はパラセル諸島は固有の領土としており、単に言葉の上だけでなく軍事的にも裏付けをしようとしている。『欲しければ取りに来い』といっているようなものだ。南シナ海の支配確立をめざす中国の目標にも一致する』とチェンは言う。
中国の領有権根拠となる「九段線」
【パラセル諸島の軍事的意義】
- ではパラセル諸島にどんな軍事的意味があるのか。まず、中国本土ヘはスプラトリー諸島より近い。中国はパラセル諸島を1974年に当時の南ベトナムから奪い、さらに1988年にも共産ベトナムとも交戦している。二番目に、スプラトリー諸島の一部はフィリピンが実効支配中だが、パラセルはすべて中国が支配している。
- パラセル諸島は習近平が掲げる非軍事化の約束の対象になっていないのが中国にとって都合がよいとグレイサーは指摘する。対象はスプラトリー諸島で、グレイサーも『だからと言って習近平が将来スプラトリー諸島を軍事化しないとは言い切れない」と慌てて付け加えた。
- 「パラセル諸島の軍事化は長年にわたり続いている」とグレイサーは言う。「中国の装備が急速に向上し主権主張に追いついてきたのが新しい展開です」
- パラセル諸島ではウッディ島に軍用仕様の滑走路を建設し、格納庫を空爆に耐えるようにした。11月には米軍の航行の自由作戦に対抗して実際に戦闘機を展開した。高性能地対空ミサイル部隊二個をウッディ島に展開し、これまでの投資を守る姿勢を示している。
- 「S-300/HQ-9はいやな存在だ」とチェンは言う。HQ-9はロシアのS-300が原型だが中国は米国のペイトリオット技術を追加している。1990年代にイスラエルが中国に技術援助したためだ。
- 「このミサイルで防空空域が前方移動し、高性能戦闘機以外は侵入をためらうようになります」とチェンは言う。「動きが鈍いP-3やP-8なら当然そうなります」
- 元海軍次官補ボブ・マーティネッジはここまで心配していない、とりあえず今のところは。「孤立した状況ならウッディ島に配備されたHQ-9の作戦上の意義は限定的だ」と記者に語り、「紛争が発生しても付近の航空路には限定的な脅威にしかならず簡単にこちらが制圧し、無力化できる。平時には米軍偵察機はおよそ100マイルの距離をとって危機発生を防いでいる」
- だがミサイル配備の意味はそこにとどまらない。もっと大きな戦略の中で見る必要があるとマーティネッジも指摘する。「とくに今回の配備がこちらの動きを探る観測気球だったらどうなるか。長距離地対空ミサイルや対艦巡航ミサイルが多数南シナ海に持ち込まれた場合は安定を損なう結果になり、米国が有事に介入する引火点を下げることになる(または米国が介入を断念するかもしれない)し、作戦上の不確実性も増えるだろう」 拠点がばらばらのうちは対応しやすいが、連携されると一種の「接近阻止領域拒否」機能のネットワークとなり、マーティネッジが所属する戦略予算評価センターが前から警告している事態が発生する。
【中国は次にどう出るか】
- ではパラセル諸島へのミサイル配備は一歩に過ぎないとわかったが、次の展開は何だろうか。
- 「中国は次に三番目の手に出るはずでこちらも準備しなければ」とチェンは言う。南シナ海領有の裏付けとして中国は海南島に地域全体を管轄する県を創設した。この県の名前が三沙で、パラセルが西沙、スプラトリーが南沙、マックレスフィールドバンクあるいはミスチーフ環礁が中沙と呼ばれる。このうちパラセルとスプラトリーで滑走路ほかの施設が完成しており、残るは中沙というわけだ。
- 「マックレスフィールドバンクに建造物他ができるでしょう」とチェンは言う。「現時点で地図を見ると滑走路、SAM陣地他を設置済みの拠点が三角形になっているのが見えるはずです。南シナ海に簡単に侵入できなくなります」
- 「中国は南シナ海で防空識別圏(ADIZ)を設定してくるでしょう」とグレイサーもいう。その手始めがパラセル諸島だという。東シナ海では中国はすでにADIZを設定しており、尖閣諸島がその中に入っている。次に中国が南シナ海でADIZを設定するとすればまずスプラトリー諸島周辺で領有権の根拠となる「基本線」を宣言するだろう。パラセル諸島では設定済みで米国はじめ各国はやりすぎとみている。
【米国のとるべき次の手は】
- では米国は中国の動きにどんな対応ができるのだろうか。上院軍事委員会と下院シーパワー小委員会からそれぞれ提言が出ている。
- 「この瞬間にも中国は堂々と国際会議の席上で域内の安定を守ると主張しつつ、問題の島に武器を持ち込んでいる事実そのものが中国こそ地域を不安定にしている張本人と示すなにものでもない」と下院シーパワー小委員会のランディ・フォーブス委員長が声明文を発表。「米国は協力国とともに今後も航行の自由、上空飛行の自由を法による支配の一環として擁護していくべきだ」
- 上院のジョン・マケイン委員長はさらに先を行く。「中国の南シナ海での今週の動きは中国政府が軍事化と支配強化を引き続き希求していることのあらわれだ」と声明を発表し、「米国は中国がやすやすと行動できなくなるよう追加策を実行すべきだ。事態の変化を横目に航行の自由原則を堅持するという宣言だけでは足りない。ここまで事態が進展していることを米国は承服できないとし、中国がこれ以上の行動をとればリスクが発生するようにしなければならない」
- そのリスクとは何か。マケインは詳しく述べないが、アナリストは以下の見解を示してくれた。
- 「中国の意図は米国を挑発しエスカレーションを上げることで域内の安定を損ねようとしています」というのはジェリー・ヘンドリックス退役海軍大佐だ。「中国は米国に現状を受け入れさせ、抗議受けずに事を進めたいのです。しかし、これは受け入れがたく、またそのことを米国は明確に示しています」
- 「外交および政治チャンネルで中国に高いコストになるぞと伝えるべきです」とチェンもいう。「これまでは中国は自分の行動の代償を免除されています」とし、大型商談の取り消しや国際会議の締め出しは発生していない。中国は海軍のリムパック演習に招待されている。ペンタゴンは軍同士の接触があれば有事の際でも致命的な誤解を防げるとしており、政治的意図を理由から交流を中止すべきではないとしている。
- 「とりあえずFONOPSは中止すべきではない」とチェンは言う。「あそこが連中の領海だと認めることはできない。全く受け入れがたい。認めれば国際法の概念が無効になってしまう」
- 「理想的なのは友好国、同盟国と共同歩調をとることですがASEANは全く弱体です」とチェンは述べ、一部内陸国が海洋部での利害対立に無関心であり、中国の友好国も加盟していることを指す。「それでも危機感を共有する国とは連合ができるはず」とヴィエトナムやフィリピンに期待する。だがより中立的なインドネシアと慎重な姿勢のシンガポールも加盟できるはずだ。
- ただし各国を中国に対抗させようとすると「誰が猫に鈴をつけるのか」問題が発生する。各国が乗り気だとしても実際に実行してリスクを抱えることは遠慮したいところだ。「米国の主張や行動に賛同する国でも参加は嫌がるのではないか」とグレイサーは指摘する。「驚くべきことではない。中国を批判すれば代償を覚悟しなければならないとみんなわかっているから」と微笑しながら付け加えた。
- 現実はもっと悪い。航行の自由の主張も出ず、ASEAN共同宣言も出ず、ヘイグ国際法廷での係争案件にもなっていない。「いかなる手段をもってしても中国を抑制できないようですね」とグレイサーも認める。「域内各国は憂慮しており、米国が何をしても中国の軍事展開はパラセルだけでなくスプラトリーでも止められないのかと心配しているのです」■
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