スキップしてメイン コンテンツに移動

★’16大統領選挙>サンダース当選の場合、国防予算はこうなる



米国が内向きになっているのは悲しむべきことです。今年の大統領選候補者を見ると今までなかった主張が堂々と述べられているのに驚かされますが、その最右翼は左翼のサンダース候補でしょう。当選の可能性はわかりませんが、こんな政策が実施されれば日本は相当防衛費を増やさないといけなくなるでしょうし、中国にとってサンダース候補が一番望ましい選択になってしまいます。

Feel The Bern! What A Sanders’ Military Might Look Like

By MARK CANCIAN on February 08, 2016 at 3:08 PM

Sen. Bernie Sanders
ひとつ思考実験をしてみよう。ヴァーモント州選出上院議員バーニー・サンダースが大統領に当選したらどうなるか。サンダースの国防政策はどうなるか。アイオワでの接戦で当選が確実になるものではない。党大会への道は険しい。だが国防の観点に絞れば検討する価値はありそうだ。
  1. まず国防予算は大幅に縮小する。同候補の掲げる社会対策に資金が必要だ。税率アップで費用を賄うが、当然ほかの予算が削られる。民主党討論会でサンダースはスカンジナビア各国の社会福祉制度に言及している。各国はGDP比1.3%を国防に使っており、これは欧州地域NATO加盟国の平均に近い。これに対して米国は2016年に3.1%相当を国防に使う。(ただしここには戦役継続予算を含まず) これを1.3%に削るとDoD予算は2,350億ドルになるが、それでも世界最大規模とはいえ、現行の5.350億ドルが半減する。サンダースはまだこの提言を公にしていないが、自身の考える政府の役割のあるべき姿では当然この方向に進む。ではこの予算で調達できるもの、犠牲になるものを考えてみよう
  2. この予算規模をCSISが作成した戦力経費モデルに投入すると興味深い結果が出た。まず戦力はおおよそ6割カットで調達の仕組みは大幅に変更となる。この予算規模では第二次大戦後ずっと守ってきた戦力構造は維持できない。また世界規模でアメリカが当然のごとく実施してきた戦略も実施不可能となる。その前にすぐ現れる予算上、事業での影響を見てみよう。
  3. サンダースはペンタゴンの「ムダ、不正、乱用」を一掃すると主張している。同意見のものは多い。議会内部には党派問わず同じ主張をする向きが多い。ただし実際に改善し、事業を効率化に向けるのは困難だ。国防の無駄を削るのは社会福祉の世界で「福祉不正受取者」を排除するのと等しい。確かにこの問題は存在しており、政府は毅然たる対策をとるべきだが、実施しても大きな節減効果は生まない。実際に予算を節約するには人員や装備を削るしかない。
  4. サンダースがまず手を付けるのは核戦力だろう。繰り返し予算が多すぎると主張し、今後10年間で1,000億ドル削減を公約している。サンダースが採用するのは「最小限抑止理論」で、破滅的な報復効果を発揮できるだけの核能力だけあればよいとする。このための弾頭数は300から400との見積もりがある。なお、新STARTでは上限は1,550発だ。ここまで弾頭数を削減すればICBMは全数使用終了とし、爆撃機も退役させ、ミサイル原潜も現行の14隻を6隻に削減する必要があろう。新型長距離打撃爆撃機(LRSB)は高価格を理由に打ち切りになるだろうが、LRSBはまず通常兵器運用から開始する想定なのだが。同様に国家核安全保障局(NNSA)も縮小されるだろう。同局は核兵器を開発、製造する部局だ。兵器開発研究施設でもローレンス・リヴァーモア(カリフォーニア)が閉鎖されるだろう。すべて実施すれば年間150億ドル相当の節約効果が生まれるが、まだ十分ではない。
  5. サンダースはミサイル防衛にも批判的だ。そのためここでも大幅削減となるだろう。だが実質的な節減効果は大きくない。ミサイル防衛庁予算は81億ドルで半分が国土のミサイル防衛、残り半分が戦域大のミサイル防衛だ。このうち戦域対象のミサイル防衛のTHAAD、AEGIS SM-3やペイトリオットがテスト結果では先行しており、国土防衛システムは遅れている。戦域防衛は海外展開中の米軍や同盟国の防御に役立つため,党派超えた政治的支持がある。そうなると年間節約効果は10ないし20億ドルにとどまり、やはり必要額に達しない。
  6. 実際に節約を生むのは以下の方策だろう。

  • 陸軍正規部隊を25万名まで削減する。現在は47.5万名体制。そのかわり予備役はさほど削減させず、29万名を州軍および陸軍予備部隊に維持する。サンダースの主張では海外各国に駐留する米軍部隊の削減、特に裕福な欧州や日本で減らす。陸軍は前方配備よりも急派部隊に性格を変える。それでも戦力は相当のものがあり、戦闘旅団25個を維持できるが、海外派遣には時間がかかり、砂漠の嵐作戦の再来は無理だ。
  • 海軍は160隻程度に縮小し、空母(「冷戦時の遺物」)は5隻にする。ここまで縮小すると時間が相当かかるので、一部艦船は予定より早く退役させることになろう。米海軍は現有の艦船であと10年20年は生きながらえるだろう。しかし艦隊規模の縮小は海外プレゼンスの縮小につながる。太平洋を優先すると、欧州は全面撤退、中東も大部分撤収することになり、太平洋リバランスも想定より規模が縮小する。西太平洋諸国は撤退気味の米国より国力が伸びる一方の中国に依存することが多くなる。艦船建造の基盤産業力を維持するため、数隻の建造は続くだろうが、閉鎖に追いやられる造船所も現れる。まずカリフォーニアのNASCOとメインのバスアイアンワークスが消えるだろう。コネチカットのエレクトリックボートも存続が危うくなる。
  • 空軍では第五世代戦闘機としてF-35(「驚くほどの浪費」)の生産は既存機の耐用年数延長に切り替え、F-16やF-15の稼働を続ける。空軍には清算済みのF-35やF-22で構成する第五世代機の在庫があるが想定より相当縮小する。
  • 海兵隊は9万人(常備部隊)水準まで削減。これでも世界最大規模の陸戦隊といえるが、前方配備の維持は無理となり、第二次大戦終結後維持してきた体制が崩れる。

  1. 国防関係者がサンダース候補のキャッチフレーズ「バーン(=バーニー)の息吹きを感じろ」を実感すのは間違いないだろう。■
著者マーク・カンシアンはオバマ政権の予算管理局で主席国防予算アナリストを務め、現在は戦略国際問題研究所で国防アナリストを務めている。


コメント

このブログの人気の投稿

★★★★北朝鮮ミサイルが中国衛星で誘導されている可能性

中国も北朝鮮関連では叩けば埃がどんどん出そうですね。北京が見切りをつければ平壌の現政権など簡単に転覆させるでしょうが、中国国内にある北朝鮮とのしがらみ(おそらく共産党内部の派閥争い)と東北部の軍の非合法ビジネスの問題があり、米国といったん話がついても実施が難しいのでしょう。そのうちにしびれを切らした米国が単独行動に出るかもしれません。
Record China Is North Korea Using China's Satellites to Guide Its Missiles? 北朝鮮は中国衛星を使ってミサイル誘導をしているのか
Peter J. Brown May 23, 2017 http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/north-korea-using-chinas-satellites-guide-its-missiles-20810?page=show

北朝鮮がミサイル発射を繰り返し米本土を狙うICBM開発に走る中、ひとつ見落とされている点がある。ミサイルに衛星誘導を使っているのではないか。北朝鮮に衛星航法ネットワークはないため、中国衛星を利用しているとの観測がある。 2014年報道で北朝鮮技術者が中国国内で北斗Beidou衛星航法システムの運用を研修中とある。同年の別の記事で中国軍専門官から中国は北朝鮮による北斗の軍事利用を止められないと発言している。 北斗以外に北朝鮮の選択肢として米露両国のGPSがあり、ロシアはグロナスGlonasと呼んでいる。 「グロナスの可能性もありますが、ミサイル誘導に北斗を利用している可能性の方が高い」と小泉 悠(未来工学研究所特別研究員、ロシア安全保障問題)がメールで述べており、ロシアは北の核実験後に武器および軍事関連技術の北朝鮮向け禁輸措置を取っているがグロナスが対象かは不明と小泉は述べる。 北斗衛星群打ち上げは1994年に始まり、現在は東アジア以遠まで展開している。北斗は民生商業用途と軍用の両面で利用され、軍用では妨害を受けず正確にデータが利用できる。 北朝鮮が北斗の軍用機能を利用しているか不明だが、民生用機能で精密誘導兵器を運用しているとは考えにくい。というのは北斗の民生機能は日米韓の電子妨害に弱く有事の際に北朝鮮が利用するのは困難になるためだ。 「特別のチップならびに中国の協力がな…

★★★破損機材二機からF-15を再生したイスラエル空軍の実力に脱帽

すごい。やはり国家の存続がかかった緊張状態を毎日続けて70年になる国は違いますね。イスラエルを敵に回したくないものです。 Meet the Israel Air Force unit that frankensteined a totaled F-15F-15二機の使用可能部分をつなぎ合わせて一機再生してしまったイスラエル空軍 By: Barbara Opall-Rome, May 15, 2017 (Photo Credit: Photo by Heidi Levine) http://www.defensenews.com/articles/meet-the-israel-air-force-unit-that-frankensteined-a-totaled-f-15
TEL NOF AIR BASE, Israel – ボーイングやロッキード・マーティンなど米企業がさじをなげたことをイスラエル空軍第22補給処が普通にやりとげてしまった。 2011年の事故でボーイングが喪失扱いと断念したF-15Bアローヘッドが飛行再開している。来月で事故から6年になる。事故は離陸直後にペリカンを空気取り入れ口に吸ったことで大火災が発生した。乗員2名は緊急着陸に成功したが、機体後部は完全に焼け落ち修理不可能と判定された。 その後三年余り、機齢35年の同機の処遇で議論が続いていた。機体の前方部は無傷なのでコックピットとエイビオニクスは予備部品にすればよいという声が出た。そこに第22補給処が前方部分と20年間も「機体の墓場」に放置されたままの単座型F-15の後部と接合する提案をしてきた。 「その案が出たのでボーイングに実施可能か照会したが、答えは返ってきませんでした」と第22補給処の指揮官マキシム・オルガド中佐がDefense Newsに語っている。「再度同社に聞くと、冗談と思って真剣にしなかったと判明したのです」 第22補給処は事故機の前方部分と20年間も「機体の墓場」で放置されていた別の機体の後部を接合した。 Credit: Photo by Heidi Levine ボーイングは声明文で第22補給処との協力関係は40年続いており、イスラエル空軍F-15の即応体制維持の一助となっている「同部隊のプロ意識や能力の高さには敬意を払っており、教えられることもあり相互に恩恵が生まれている」と述べた。 第…

★★★イージスアショア導入でミサイル防衛体制強化を目指す日本

LEAH GARTON—MISSILE DEFENSE AGENCY

防衛大綱にまで記述している以上イージスアショアの導入は固いところです。が、文中に指摘あるように対外有償軍事援助=販売として許認可を持つのは米政府ですので、今後の米中関係など他の影響も考慮すべきでしょう。ただし、中国の反対意見は無視するとしても、中国が沖縄と同様に国内反対派に火をつけることのほうが怖い気がしますが。
Japan May Acquire Aegis Ashore To Defend Itself From North Korean Missiles日本がイージスアショア導入を検討中。北朝鮮ミサイル防衛を目指す。The system is especially well suited for Japan's strategic needs, but China would not be pleased with seeing it setup on Japanese shores.日本の戦略的ニーズにぴったりだが、導入されれば中国がたまっていないだろう。BY TYLER ROGOWAYMAY 5, 2017 http://www.thedrive.com/the-war-zone/10012/japan-may-acquire-aegis-ashore-to-defend-itself-from-north-korean-missiles
日本がイージスアショアミサイル防衛装備の導入で北朝鮮弾道ミサイル脅威に効果的対応が可能になるか検討を急いでいる。 THAAD導入も検討したがイージスアショアの有効距離が大きいことで日本の地理条件に合い戦略上の狙いにも合致すると判断した。またイージスアショアが日本のミサイル防衛能力装備の水上艦と相互運用性がありセンサー、発射装置、迎撃体、運用方法を共通化できることも好条件だ。 価格も問題だ。ジャパンタイムズは「THAAD一個部隊は1,250億円で全土防衛に6隊が必要だ。イージスアショアは800億円程度で二個編成で同じ面積をカバーできる」と伝えている。イージスアショアはPAC-3ペイトリオット部隊と陸上配備ミサイル防衛の二重構成とし、短距離、中距離弾道ミサイルが大気圏再突入後に迎撃する。 イージスアショアはルーマニアのデヴェセルに導入済みだ。AP 日本の地理条件…