オバマ政権が最後に編成する国防予算が数年先に望ましい結果を生むことを祈るばかりです。研究開発関連では長官が発表した以外のプロジェクトがあるはずですから期待しましょう。F-35調達が犠牲になりそうですが、ますます機体価格が上昇しそうですね。それにしても大国対応と同時並行で戦闘員への対抗策さらに同盟国防衛のコミットメントまで米国の国防政策は大変ですね。日本はじめとする同盟各国への期待や要求が高まるのも当然ですね。カーター長官はオバマ政権としては優れた人事だと思います。
Carter Unveils Budget Details; Pentagon Requests $582.7 Billion
By Aaron Mehta 9:31 a.m. EST February 2, 2016
WASHINGTON — オバマ政権による2017年度予算法案では国防に5,827億ドルを計上し、うち714億ドルを研究開発、75億ドルはイスラム国集団への対応、潜水艦に81億ドル、18億ドルを弾薬類調達に使うとアシュ・カーター国防長官が2月2日に表明した。
予算案公表を次週に控え、カーター長官は開発中の新技術で国防総省にとって「大局的な観点」が必要となる長官のいうところの「大きな変曲点」に対応すると紹介した。
予算案では5つの視点がある。二大大国としてロシア、中国それぞれの台頭、北朝鮮が米国・太平洋同盟各国へ脅威となっていること、イランの湾岸諸国への「悪影響力」、イスラム国集団への戦闘の継続の5つである。
「敵対勢力が一つだけというぜいたくな環境にはないし、現在の戦闘と将来の戦闘の区別もできない、ともに今対応する必要がある」とカーター長官は述べ、「そのための予算案を作成した」
言い換えれば、予算案はペンタゴンが直面する脅威の二面性に対応するものだ。米国とほぼ同格のロシア、中国へは新開発技術で対抗し、同時に対戦闘員作戦にも対応する。
「そのためにカギとなるのがもっとも強力な競争相手を抑え込むことだ。有力な敵対国が挑発的な行動に出るのをあきらめさせるため、または実行した場合に深く後悔させるだけの大きな対価を支払わせる必要がある」とカーター長官は述べ、さらに「この意味でロシア・中国が我が国にとってもっとも重要な競争相手だ」と付け加えた。
カーター長官は以下数字を列挙した。
- ISISには2016年予算より50%増の75億ドルを計上
- 18億ドルを2017年に支出し精密誘導弾45千発以上を調達する。これはISIS対応予算とは別扱い。長官は言及しなかったがこれは海外有事作戦(OCO)勘定になるとみられる。
- A-10退役は2022年まで先送りとする。それまでにF-35Aが第一線に投入される前提。A-10で議会は空軍が同機を早期退役させるようとこれまで二年度予算にわたり働きかけた。2022年まで先送りし、さらに後年度国防計画Future Years Defense Program (FYDP)からも外すことで、オバマ政権は同機退役の決断を次期政権に委ねる格好だ。
- ヨーロッパ諸国向け安全保障再保証構想(ERI)は2016年の789ッ百万ドルから一気に4倍増の34億ドルに増やす。これはロシアのウクライナ侵攻(2014年)を受けて各国を支援するための事業だ。
- 81億ドルを潜水艦に支出する他、今後5年間で400億ドル以上を出す。これでヴァージニア級攻撃潜水艦9隻を調達し、既存のヴァージニア級にもペイロードモジュールを追加装備する
- サイバー分野では70億ドルを計上し、今後5年間で350億ドル程度の規模を支出する
- 宇宙関連では長官は数字を挙げていないが、ペンタゴンは昨年を上回る支出をすると発言している。昨年は50億ドルとしていた。
- 二年度連続で研究開発勘定を増額し、2017年は714億ドルとする
最後の点がペンタゴンが進めるいわゆる第三の相殺の技術開発でカギだとフランク・ケンドール副長官が述べている。「もしR&Dをしないと何も生産できなくなる」とケンドールは述べ、「これは固定費用だ。R&Dをなくせば未来はなくなる」
予算案は新規プロジェクトでの開発について、カーター長官は2012年に新設した戦略技術室により「DoD、情報各機関、民間技術を再定義しそれぞれに新しい役割並びに画期的な能力を与え、敵対勢力に挫折感を与える」と述べている。
カーター長官がまず紹介したのは爆弾誘導技術で「スマートフォンで利用されているのと同じ小型カメラとセンサーで小口径爆弾の命中率を上げる」ものだという。その目標はその他の搭載物にも応用できるモジュラーキットの開発だ。
二番目は自律無人機の多数同時運用だ。
「空の分野ではすでにマイクロドローンを開発済みで高速かつ回復力が高い。強風下でも飛行でき、マッハ0.9で飛行中の戦闘機から放出することに昨年アラスカでの演習で成功しており、イラクの砂漠で陸軍隊員が放出することも可能だ。水中でも自律潜航艇を開発しており、ネットワーク環境で作動し艦艇防御から接近偵察までこなすことができ、人工島だろうと天然の島だろうと周回しても人員の生命を危険にさらすことはない」
次に電磁レイルガン用に開発した発射体があり、これは既存兵器にも搭載可能で、「海軍駆逐艦が搭載する5インチ砲や陸軍のパラディン迫撃砲にも応用できる」とし、既存の火砲をミサイル防衛用に転用できる。カーターはパラディンで新システムを先月に実験し成功したという。
最後にカーター長官は「大量武装機」 “arsenal plane”の概念を紹介した。これは空軍の旧型無武装機材を「すべての通常搭載物の空飛ぶ発射台に転換する。実現すれば同機は巨大な飛行武装機となり、ネットワークで第五世代戦闘機の前方センサーとなり、同時に目標補足情報の中心となる。すでに実用化している各種システムを統合し全く新しい機能を実現する」ものだという。
カーターが言及しなかったのはF-35で、優先順位が高い他事業のため同機の調達は削減される見込みだ。また海軍のUCLASSを空中給油機CBARSに転用する案も口にしなかった。これは2月1日ににDefense Newsが初めて伝えたニュースだ。■
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