やはり無害通航では中国の論理の罠に入ってしまうというのが識者の指摘です。逆に考えれば中国軍艦が尖閣諸島を無害通航すれば日本の勝ち、ということになるのでしょうか。(中国の領有権主張が崩れるから) しかし現実には中国艦船が侵入すれば逆の行為をする可能性が高く、だからこそ日本は必死になって尖閣周辺のパトロールをしているのですね。南シナ海が落ち着けば次は東シナ海から沖縄までが中国の主要活動舞台になるのではないでしょうか。
McCain, Forbes Praise New Navy Challenge To China In Paracel Islands
WASHINGTON: 太平洋軍司令官ハリー・ハリス大将が南シナ海対応で対中強硬策を取ると発言したわずか二日後に駆逐艦USSカーティス・ウィルバーがトライトン島から12カイリ以内の航行を実施した。同島は中国、台湾、ベトナムがそれぞれ領有を主張するパラセル諸島の一部で、中国は1974年に当時の南ベトナムから奪取し実行支配している。その際はベトナムに少なくとも70名の死者が出た。パラセル諸島は石油・ガスの埋蔵が期待されており、人工島ではなく自然の島嶼である点も重要だ。
- 上院軍事委員会のジョン・マケイン委員長および下院シーパワー小委員会のランディ・フォーブス委員長はともにオバマ政権が太平洋の友好国同盟国の目の前で中国の横暴なふるまいを許していると批判的だったが、今回の実施は称賛している。ただし、マケインは渋々といった感じだったが。
- 「米海軍が航行の自由作戦を南シナ海パラセル諸島トライトン島付近で行ったと聞いてうれしい。今回の作戦は米国他各国に国際法で認められている権利と自由を制限しようとする過剰な海洋上の主張に挑戦するものだ」(マケイン)
- 「トライトン島の周りを航行することで、USSカーティス・ウィルバー乗員の男女は米国の対アジアならびに法の支配に対するよどみのない力の入れ方が強く伝えたはずだ。島嶼部分の帰属で紛糾していても周囲の上空飛行、航行、作戦実施は違う。この権利の行使、示威を通常の形で実施できるようになり喜ばしい。現政権には今後も航行の自由作戦の継続を強く求め、海洋を共有する各国には立ちあがり、権利を分かち合い、自由に権利を行使するよう訴えたい」(フォーブス)
- 米国は南シナ海の島嶼、環礁、岩礁の帰属はどの国なのかを明確にしないという点で一環しているが、中国が各種地物、人工島から12カイリを「領海」と主張し、主権の及ぶ領土だとすることに反発している。だがペンタゴンは12カイリ以内での軍艦や航空機を通行は2012年以来実施していないと昨年明らかにしていた。
- 数々の公式発言、混乱、遅延の末、昨秋ついにUSSラッセンがこの三年間にわたる「航行の自由作戦」の凍結を破り中国が実効支配するスビ環礁の12カイリ以内を航行した。中国へは事前通告せず、また許可も得ないことで中国の解釈する国際法を破った。しかし、国際法の解釈上の多数意見によればラッセンは「無害通航」を行ったことになる。紛糾中の海域を直進し、軍事活動を展開していない。無害通航は各国が他国領海で自由に行える。
- 他国の領海内で禁じられているのは純然たる軍事行動で、ヘリコプターを発艦させることや照準レーダーを稼働するのもその一部だ。批評家はこのような軍事活動を12カイリ以内で行えば(米国の視点から)同海域は中国の領海ではなく、「公海」としていかなる国家も好きなように行動できることを明確に示すことになると指摘。
- ペンタゴンは声明文で「USSカーティス・ウィルバー(DDG-54)は無害通航としてトライトン島から12カイリ以内を航行した」とするが、つまりいかなる軍事行動もとっていないということだ。では中国の主張に対して今回の作戦はどこまで有効なのか。新しいアメリカの安全保障を間ゲルセンターでアジア太平洋部長のパトリック・クローニンは記者に「中国はアメリカは真剣ではないと受け止めており、アメリカは自ら問題を複雑にしている」と語ってくれた。
- 「実は米国は中国の主張に挑戦しておらず、逆に無害通航をすることで中国を助けているのです。これはいかなる国の領海でも12カイリ以内で認められている権利です」と語るのはブライアン・クラークで、かつては海軍作戦部長のトップ補佐官であった。「もし米国が中国やその他国の主張に真っ向から挑戦するのであれば、『軍事行為』を艦に行わせるはずで、レーダーを作動させたり、ヘリを運用するはずですが、今回はこれを行っていません」「興味深いことに台湾とベトナムは抗議していませんね。これは両国が無害通航がUNCLOS(国連海洋法)で認められている権利であり、たとえ自国の領土でも認めるべきものだからです」 抗議の声を上げたのは中国だけで、その根拠は歴史上での領有の記録であり、自国の領土所有を国際法の下でかなり自由に解釈していることだ。
- 今回のウィルバーの運航は基本的にラッセンの時と同じだ。「これではラッセンのFONOPから進歩がない」と言うのはボニー・グレイサー(戦略国際研究センター、中国国力プロジェクト部長)だ。「これは2012年より前に行っていたFONOPSの再開にすぎない」
- 「掛け金を上げるべく、米国のFONOPはミスチーフ環礁周囲で実施すべきです」とグレイサーは述べる。米国による国際法解釈ではミスチーフ環礁は領海の根拠となる陸塊ではなく、単に「引き潮時に出現する地点」であり、満潮時には完全に水没するので500メートルの安全地帯を構成するだけだ。さらにミスチーフは南シナ海で中国が実効支配する地点で唯一ほかのいかなる地物から12カイリ以上離れており、つまりいかなる領海の外側に位置する。対照的にスビ環礁を昨年ラッセンが通航したが、「岩石」と分類された地物の12カイリ以内に位置し、この岩石を起点とする領海内に位置している。
- 「したがってもし米国がミスチーフ環礁付近で航行の自由を示そうとするのなら、『無害通航』ではだめで、軍事活動としてレーダー作動やヘリ発艦を12カイリ以内で実施する必要があるのです。中国が急速にミスチーフ環礁上に施設建設を進めており、軍事利用の可能性もあることからFONOPの次の対象はここにすべきです」とグレイサーは言う。
- ハリス海軍大将やホワイトハウスがこの助言に耳を傾けるか注視しよう。ペンタゴンが公表している詳細情報はわずかしかない。
- 「本作戦は過剰な権利主張で合衆国含む各国の権利や自由に制限をかけようとする者への挑戦であり、地物の領有権主張を対象にするものではない」と発表したのは国務省だ。「合衆国は南シナ海で自然に形成された地物に対する関係国間の主権をめぐる主張に組する立場をとらない。合衆国はすべての国家に保障されている海洋、上空をめぐる権利、自由、合法的な活用方法が保護されるべきであり、すべての海洋上の主張は国際法に従うべきとする点で強固な立場をとる」
- 中国が米国を非難したのは驚くにあたらない。
- 「米海軍艦船は中国法に違反し中国領海に侵入した。中国は同艦の動向を監視し、法に従って音声で警告した」と中国外務省報道官は述べている。「米側には中国の関連法規を尊重するとともに遵守するよう求め、二国間の信頼関係を改善し、同時に域内の平和と安定を実現するよう求めるものである」
- クラークは「中国の反応は国粋主義的な熱狂で自国の海洋主張への挑戦に対抗させるための国内向け広報の一環だ。中国はこの問題を話題にしても決してこの問題が『本末転倒』となり本当に米国に軍事対抗せざるを得なくなる事態は避けたいはずだ」
- 「国際法では他国による自国領土の侵犯にどう対処するかが重要だ」とクラークは続けた。「侵犯された側が抗議しないと、その領土はもともと主張した側に属さないことになる。したがって中国は今後も繰り返し抗議の声を上げて自分たちの主張を正当化してくるはずです」■
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