スキップしてメイン コンテンツに移動

無人艦載給油機CBARSは攻撃機に進化するのか、それとも?



米海軍の次代機としてあれほど期待されたUCLASSが葬られ、代わりにタンカー構想が出てきましたが、この機体が同時に長距離攻撃任務にも使えるのでしょうか。あるいは実は別のプロジェクトがブラックの世界で進行しているのでしょうか。期待だけがふくらんでいきますが、その結果はあと数年すれば明らかになるでしょう。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

CBARS Drone Under OSD Review; Can A Tanker Become A Bomber?

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on February 19, 2016 at 1:58 PM
WASHINGTON: 米海軍の新型無人空中給油機CBARS構想を国防長官官房が精査中であるとBreaking Defense がつきとめた。
  1. 何を精査内容しているのかはわからないが先立つUCLASS構想の偵察攻撃無人機と重なる点がある。UCLASSも同じく長官官房が一年以上検討して結局中止に追い込み、そのためCBARS構想が浮上したのだ。今度の事業も同じ運命をたどらないと誰も断言できない。
  2. 前回の論点は要求性能だった。UCLASS空母運用空中偵察攻撃無人機の主任務は偵察なのか、比較的安全な空域を低速で飛行しそこそこの兵装を搭載するのか。あるいは攻撃に特化させ、防御固い敵地を長距離侵攻する重武装機なのかで論議が続いた。
  3. 後味の悪い論争の応酬が長官官房、海軍、議会の間で続き、2017年度予算ではどちらも否決された。かわりにそこまで大胆な性能を求めず、安価な空母搭載空中給油システムとしてCBARSが生まれた。CBARSの主任務はタンカーだが海軍によれば偵察能力と「限定的攻撃」能力も備えるいう。これでは偵察を主任務と想定したUCLASSに限りなく近いように聞こえる。
  4. そこでペンタゴン関係者にCBARSが想定する内容の説明を求めたが、きわめて丁寧にコメントはだれもできないというのだ。少なくとも官房による精査が終わるまでは。このことから証明はできないが、長官官房の誰かも同じ質問をしていると思われる。CBARSはUCLASSの軽量版なのか全く新しい構想なのか。
  5. 要求性能を正しく設定するのは不可欠だ。話を聞いた海軍航空関係のベテラン二名とも無人給油機は攻撃機にゆくゆくは進化するとみている。ただし今必要とされる空中給油だけが要求性能となれば二者択一式にCBARSがその他任務をこなす可能性が犠牲になる。
  6. 「無人給油機には長距離攻撃機に発展できる余地を残しておくべきでしょう」と語るのはジェリー・ヘンドリックス退役海軍大佐、現在は新しいアメリカの安全保障を考えるセンターに所属している。「発展可能性を残せばそれでいいと思います」
  7. 爆撃機転用は可能なはず、とヘンドリックスは言う。CBARSが別ミッション実施も前提に製造されれば。つまり目標への飛行途中で給油する「ミッションタンカー」にするのであり、空母周囲を飛行して単に給油を与えるだけの「リカバリータンカー」にしなければよい。「これまで20年の給油機は皆このタイプだった。他任務もこなせるタンカーはなかった」
  8. 「ミッションタンカーとして他機と一緒に戦闘空域へ飛ぶ機体になれば、遠隔地の敵空域でも空中給油は必要ですし、とくにS-400の脅威を考慮しなければ」とヘンドリックスは言う。高性能ミサイルが接近拒否領域否定の防空体制に配備されていることからその必要が痛感されるはずだ。このため比較的高性能の機体として兵装を燃料の代わりに積み、新型エイビオニクスとステルス塗装があれば爆撃機として運用できる。
  9. 「マッハ0.8で45千フィートを飛行できれば攻撃機と一緒に行動できる」とF/A-18E/FスーパーホーネットやF-35C共用打撃戦闘機を想定し、ヘンドリックスは見る。逆にCBARSが低性能偵察機になれば、攻撃任務実施は無理だろう。
  10. CBARSが将来の爆撃機の原型になるためには機体形状をクリーンにまとめておく必要がある。とくに搭載燃料は全部機内搭載とし、主翼にタンクを下げることは避ける。これでステルスを実現できるし、エンジン回りの設計は特に慎重にし、熱放射から赤外線探知される事態を防がないといけない。
  11. これまでの空軍の給油機は格好のレーダー標的で、民間機が原型のためだった。現在、一部F-18をミッションタンカーに転用しているが、ステルス性はない。
  12. CBARSを爆撃機に転用する前提だとタンカー性能が犠牲となり単価も高くなる。このため前海軍次官ボブ・マーティネッジ(戦略予算評価センター)は楽観視できないという。
  13. 「理論上はCBARSは侵攻型偵察攻撃機に進化する機体にできるでしょう」とマーティネッジは記者に電子メールで回答。「ただし、そのためにはタンカーの形状と推進系は攻撃機とほぼ同様に設定する必要があり、タンカーミッションが犠牲になります。これでは海軍提案と逆方向になります」「タンカーミッションに特化させれば主翼は高アスペクト比にし、主翼胴体から尾翼の形状、高効率エンジンが露出されることになり、これではステルス攻撃機には進化できません」
  14. 新型艦載給油機は二重の意味で有用だ。まずスーパーホーネットが給油任務から解放され、航空隊全体の運用距離が延びる。だがマーティネッジは「CBARSで解決できない問題がある。攻撃有効距離が不足しており、新しいネットワーク型のIADS(統合防空システムズ)を前に生存性が不足する問題だ。喫緊の課題は空母の作戦戦略上の威力を維持するためにも長距離侵攻可能な偵察攻撃機の確保だ」
  15. マーティネッジの推すのは「A-X」だろう。攻撃ミッションを主とする艦載機にはかつてはA-6イントルーダーがあった。無人機を一番要求が厳しい長距離攻撃任務用に設計しておけば、給油機にも転用できるはずだ。またCBARSを給油任務中心に定義したのちにステルス攻撃機型を別個準備するより費用は安くつくはずだ。開発期間も短縮できるとマーティネッジは言う。「A-Xを先に進めれば、その設計と技術内容から空母用給油機型をCBARSより先に公試、配備できるはず」
  16. マーティネッジが言う先行作業とは極秘の長距離空母運用型ステルス攻撃機のことかもしれない。この機体については今のところ誰も内容を知らないが、マーティネッジとCSBAで同僚のブライアン・クラークが予算の出どころをつきとめている。
  17. 「機体開発計画が別にあるか不明ですが、2016年度国防予算を見ると、議会が300百万ドルの追加予算をUCLASSに認めているのがわかります。これに対して海軍は同年度にUCLASS/CBARSに135百万ドルしか使うあてがないとして予算要求していました。DoDが別の300百万ドルを2016年度からどう使うつもりなのか見えてきません」
  18. もしペンタゴンが今もステルス長距離艦載爆撃機をブラック予算であるいはCBARSを進化させる形で構想しているとすれば、議会の有力筋には吉報だろう。議会は中国、ロシア、イランに対抗するには高性能が不可欠とみている。もし単なるタンカーを作れば、議会から鋭い質問が出てくるはずだ。■


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...