スキップしてメイン コンテンツに移動

★日本の安全保障の対象領域はどこまでなのか 思考を広げよう



日本にとっての安全保障の範囲はどこまでと考えるべきなのでしょうか。これまで思考停止していたツケを今払わされている感じがします。先回の国会論議を聞くと国境線と利益線は違うとすでに明治時代に力説していた陸奥宗光の言葉が重く感じられますね。国際社会の場で意見を堂々と発言すべしなどと威勢のいいことを吹聴する傾向がありますが、まず自分の言葉でしっかりと考えなければ。英語力だけでは中身のある意見になりません。改めて「あるべき姿」を根本から考えて、既成事実にとらわれなく創造的な思考の必要性を感じる次第です。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

Panel: Japan Concerned How U.S. Will Keep Sea Lines Open if Simultaneous Crises Occur in Asia, Middle East

By: John Grady
February 17, 2016 6:34 PM

中東と東シナ海あるいは朝鮮半島で同時に有事発生の場合に米国がどう動くのか、日本への原油輸送は維持できるのかと日本の政治指導層がこれまでにまして問いかけていると日本人講演者がブルッキングス研究所開催のフォーラムで紹介している。

  1. ㈱外交政策研究所の代表宮家邦彦は会場の質問に答えて「中国が本当に現状維持を欲しているのか、それとも変えようとしているのかが問題の核心だ」とし通商交通路を南シナ海とインド洋で維持することに言及した。
  2. 原油の8割が中東依存の日本の視点を宮家他の日本側講演者が紹介し、日米で現地で発生中の事態で関心事が違うと指摘した。日本は第七艦隊に母港を提供し、一部費用負担もするが、日米は「費用分担以上」をめざし、中国の軍事力経済力の進展に共同で対応すべきとした。
  3. 宮家のプレゼンテーションでは「中国は今や陸上国境線は確保ずみ」とし、中国にとって「脅威は海にあり」沿海部の工業地帯や金融機能防衛を重視し、日米安全保障同盟は脅威に写ると紹介。2011年の津波災害の直後に米国が空母二隻と揚陸強襲艦一隻を日本に派遣し災害救難活動を展開したのは有事の軍事力展開例と中国はとらえている。これに対して米国の視点は中国の歴史上で現在は海軍力、海洋力を発展させる二回目の時期に来ているとする。
  4. 中国も自国の交易エネルギー確保のため海上交通路の維持に配慮していると指摘するのはセントアンドリュース大の宮城由紀子だ。太平洋及びインド洋から眺めると日本の政策目標は「中東の情勢を平穏に維持する」ことだが日本の中東政策は「ジグザグの繰り返し」とし、アラブ・イスラエル紛争、イラン核開発問題、米国のイラク対策での例を挙げた。
  5. 宮家は歴史的にみて日本は中東で主要な役割を演じておらず、自衛力は増強したとはいえ、中東への兵力投射は日本には無理とし、中国が日本の周囲で影響力を増やしている事実を指摘する。またこの現実を受け入れて「中東と東アジアは一つの作戦戦域になりつつある」と日本や中国含む各国のとらえ方を紹介。「太平洋で大国の地位を確立するためには中東でも大国である必要がある」
  6. 中国がこの動きに出ていると指摘するのは中東を専門とするブルッキングス研究所のタマラ・ウィッツで、中国がアフリカの角で展開中の海賊対策を例示した。
  7. 米軍のイラク侵攻(2003年)とその後の「アラブの春」(2011年)を経た中東の情勢は極めて不安定とウィッツは指摘。「現在進行中の戦いは国家の本質を問うもの」でシリア、リビア、イエメンで内戦状態が進行しているところに域内の大国イラン、サウジアラビアがからみあうとともに外部からロシアが入っている。
  8. 「内戦でテロ集団が生まれる。テロ集団が内戦を悪化させる」と指摘したのはブルッキングスで中東政策を研究するダニエル・バイマンだ。外部からの介入が暴力を助長させると述べた。
  9. では米国に解決策があるのかが「大きな疑問、検討対象」だ。域内の協力国と米国が常に意見を共にしているわけではない。サウジアラビアはじめスンニ派国家はイランの核交渉結果を国益に反するととらえ、中東の優先事項はイスラム国の壊滅なのかイランの野望を食い止めることなのか、自国の政治システムを開放すべきなのか反対に縮小すべきか迷っているという。
  10. 米国がめざすイラク・シリアのイスラム国(ISISあるいはISIL)の撃破は単なるテロ集団の壊滅よりずっと規模が大きい目標で、アルカイダのような小規模集団が相手と全く違うとバイマンは指摘。イスラム国がパリやサンバーナディオ襲撃事件のようなテロ攻撃を中止しても依然として一大勢力のままだ。イスラム国のやっていることの95%は「昔ながらの国家建設であり、領土を奪取し、徴税すること」で秩序を確立しようとしているとバイマンは述べた。
  11. バイマンは日米が協力できる分野は多いと指摘した。中東各国のの国境警備隊の訓練やトルコやヨルダンへの支援でシリア難民の適正な処理に当たらせることを例示した。
  12. 会場の質問に宮家は日本の実業界トップは中東やイランをかつては石油供給の中心地と見ていたが、今や不安定の中にもあらためて権益を見つけていると指摘し、「機会だと見ればあなたも投資たくなるのでは」と述べた。
  13. 宮城は日本はイラン投資に相当慎重になるとの見方を紹介している。日本が建設した石油精製施設をイラン政府が接収した前例のためだ。ただし、「日本人の働き中毒ぶりはとても有名」なので中東のビジネスへの態度がとても異なることで「文化摩擦」の発生は必至と微笑しながら述べている。■


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...