オーストラリアの求める潜水艦は大型かつ長距離運航を前提としていますので、日本の三菱-川崎共同提案はかなり有利なはずなのですが、どうなりますやら。どちらにせよオーストラリアは日本にとっても重要な同盟国であるのは明らかです。
---------------------------------------------------------------------------------------
New Australian Long Range Defense Plan Has Maritime Emphasis
By: Mike Yeo
February 25, 2016 10:30 AM
オーストラリアが2016年度国防白書を発表し、海軍力整備に大きな重点をおいている。中国の存在がインド太平洋地区に大きな影響を与え域内安定度も左右しかねない中、オーストラリアの国防予算は拡大している。
- 25日発表の白書では初めて国防統合支出計画 Defence Integrated Investment Program (DIIP) も含み、今後10年間で国防力整備に必要な支出規模を明示した。
- DIIPでは10年間でおよそ1,950億オーストラリアドル(1,396億ドル)を国防力整備にあて、従来予測より299億オーストラリアドル(214億ドル)上回り、GDP比2パーセントとしてきた支出規模を2020年に突破させる。
- 海洋国家としてのオーストラリアを考えれば、海軍装備に重点が来るのは驚くにはあたらない。
- 白書では「オーストラリアはインド太平洋国家として経済的に大きく変容しようとしている」とし、域内が平和で安定している状況は米国のプレゼンスがこれまで70年間裏付けてきたが、「近隣が不安定化すればオーストラリアにも戦略的な影響が生じる」とし、域内最高の装備による軍事優越性が必要と主張する。
- 白書の大きな論点がコリンズ級潜水艦の後継艦調達事業だ。白書では「域内で優越性を発揮でき、米国と高い水準の相互運用性のある潜水艦」を12隻取得し、供用開始を2030年代に設定している。
オーストラリア海軍のコリンズ級潜水艦HMASシーアン (SSG-77) RAN Photo
- 12隻を整備するとオーストラリア潜水艦部隊は一気に倍増となるが、既存艦と順次交代させて戦力ギャップが生じないよう配慮する。さらに2050年代にその後に整備すべき潜水艦を開発する。この時点で12隻の建造が終わっている前提だ。12隻のうち何隻をオーストラリア国内で建造するか方針は未定だが、今年後半の選定結果発表時に公表するとみられる。
- 現時点でディーゼル電気推進式潜水艦三案が検討対象で日本のそうりゅう級、フランスからDCNS-タレス連合のショートフィン・バラクーダブロック1A案、ティッセン・クルップマリタイムシステムズ(ドイツ)の216型がある。相互運用能力でジェネラルダイナミクスのAN/BYG-1戦闘システムおよびマーク48 Mod 7魚雷(米豪共同開発中)が搭載される見込み。
- 白書ではロッキード・マーティンP-3C哨戒機の後継機にも触れており、現在8機調達予定のボーイングP-8Aポセイドンを2020年代末までに15機に拡充する。オーストラリアの捜索救難水面は世界最大規模でP-8の滞空時間、航続距離が長大な利点が生かせる。また敵潜水艦、水上艦にも十分な攻撃能力を発揮できる。
- またノースロップ-グラマンMQ-4Cトライトン高高度長時間飛行UAVを7機2020年代初頭から導入する。P-8と共同運用し、トライトンは連続海上哨戒飛行や情報収集監視偵察(ISR)任務に投入する。これまでトライトンの取得方針は掲げられていたが、機数・導入時期の明示は今回初めてだ。
MQ-4Cトライトン無人機が米海軍パタクセントリヴァー海軍航空基地から初の米本土横断飛行を実施した。Sept. 18, 2014. US Navy Photo
- P-8の追加調達とトライトン導入もオーストラリアが海洋面を重視するあらわれだ。国際戦略研究所アジアのティム・ハックスレー博士はUSNI Newsに対し「P-8を15機、2020年代末までに整備するのはオーストラリアが海洋での安全保障を重視しているあらわれであり、MQ-4Cの7機導入も同様」と解説した。「両機種の導入で従来を上回る海洋哨戒警戒能力が実現する」
- 白書ではISR能力も取り上げている。2015年末にオーストラリアはガルフストリーム550を2機、有償海外援助制度で調達しており、空中情報収集監視偵察および電子戦 (ISREW) 機材として運用する。白書では同型機は最終的に5機に増勢し、2020年代初頭から戦力化すると説明。各機は電子戦で支援を各部隊に提供し、ここでも米軍との共同作戦能力がカギとなる。
- 米国の主要同盟国としてオーストラリアは安全保障上の利害を共有しつつ強力な装備を維持しており、域内の安全の上で根幹的存在だ。今回の国防白書を関係各方面は好意的に受け止めており、これまで国内政治が不安定で予算上の制約のため明確にしていなかった国防政策の方向性を明示されている。■
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。