2016年2月20日土曜日

クルーズ候補の国防政策提言は極めて健全かつ現実的な内容


今のところ予想が立てにくい大統領候補の乱立ですが、次第に淘汰されていくはずです。その際に決め手となるのが政策内容で、いよいよ各候補が考え方を示す時期が来たという感じですね。その中でクルーズ候補の国防政策は根拠がある内容になっているようですが、経済成長の加速が前提で、インフレを招きかねません。とはいえ、これまでの中では傑出した内容のようで、同候補に注目の価値はあるようです。クルーズ候補はカナダ出生のため国籍問題を攻撃されていますが、本人は米国人から生まれたので自分も米国人と主張しています。
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Cruz Wants $750B For Defense: Boost Services, Not Special Ops

By MARK CANCIAN on February 19, 2016 at 4:01 AM

Ted Cruz the family version 2016 presidential election
テッド・クルーズが一部世論調査ではドナルド・トランプを抑え共和党候補のトップになっている。同候補は詳細な国防政策案を今週発表している。CSISの国防予算アナリストであるマーク・カンシアンが早速その内容を精査しクルーズ構想の数字、前提をCSISの国防戦力計算ソフトに入力した。その結果は以下のとおりである。編集部
共和党大統領候補のテキサス州選出上院議員テッド・クルーズが国防政策の具体的提言を発表した。これまでの選挙戦では国防の拡充や海外の脅威など言葉が先行していたが、各候補もいよいよ具体策を提示すべき時期だと認識しているようだ
提言骨子は以下の通り。
  • 陸軍正規部隊は525千名とし「訓練を積んだ完全装備の兵員」とする。【現行の目標は450千名である。】
  • 海軍は空母打撃群12個体制と「最低でも350隻体制を維持」する。【現行は空母11隻、合計308隻。】
  • 空軍では「最低で6千機で、うち少なくとも1,500機の戦術戦闘機」だが、無人機の配備数とISRパイロットを増やす。【現行の目標は5,500機、うち戦闘攻撃機が1,100機。】
  • 海兵隊を拡充し、海兵隊から要求が出ている「戦闘部隊への女性隊員の配備要求を免除する」を検討する。(クルーズ陣営スタッフに一言。この提言を行った司令官が現在の統合参謀本部議長で、現在の司令官はオバマ政権方針に従う意向だ)
  • 総兵力は150万人体制 【現行の目標は127万名】
  • 特殊作戦部隊には変更なし
  • 核三本柱には必要予算全額を充当し、近代化を進める 【現行案でもこれをめざすが、2020年代に必要となる巨額資金投入の必要性は無視している】
  • ミサイル防衛能力を引き上げる 【予算は実質的にこの数年横ばい】
正確を記すと、クルーズ議員は他人のアイディアをそのまま利用するタイプではない。昨年10月にカーリー・フィオリーナが国防政策案を発表していたがほとんどすべてはヘリテージ財団の提言そのものだった。クルーズは自ら考える提言を発表した。
提言内容に大きな現状から逸脱はなく、アナリストや専門家多数と事前検討をすませているのは明らか。とくに昨年その前年の現状を反映している。つまりイラク、アフガニスタンの後に平和な時代が来ると思ったが中国の強圧的態度、ロシアの横暴さ、ISILが戦闘に勝利を収めて一挙に期待を裏切られた事態だ。
ただし提言にある陸軍、海兵隊を拡充するが、特殊作戦部隊はそのままという内容は比較的新奇といってよい。クルーズは「特殊作戦部隊は通常部隊の不足への回答にならない」と主張する。ヘリテージ財団のジェイムズ・カラファーノも同じ視点を主張している。特殊作戦部隊は具体的な行動を実施する部隊で、特別な標的の殺害や拉致がその例だが、通常の陸上部隊でこれを実施するのは適任ではない。政治家が特殊部隊を好むのは能力の高さや特定の戦略目標の実施を最低限の部隊投入で実施できる点を買っているのだが、実際には単独で効果を出しているわけではない。
もう一つ興味をそそられる提言内容がある。「【サイバー】報復政策を宣言し、必要なら強烈な反撃を加える」としている点だ。クルーズの主張は米国にはサイバー抑止力の整備を核抑止力と同様に検討する必要があるとする。これはサイバー専門家の間で議論を呼びそうだ。なぜならサイバー空間を「軍事化」すること、極秘戦時能力が明らかになってしまうからだ。だが防衛体制が機能していない現状を見ると議論の必要は感じられる。
新規装備や部隊整備はすべて相当の予算が必要だ。クルーズ候補もこのことは認めており、米国は現状のGDP3.3パーセント相当の国防予算を4.1パーセントに引き上げる必要を提言する。この数字で国防予算は7.500億ドル相当になるが、DoD予算だけでなく戦闘継続予算(OCO)やエネルギー省所管の核兵器関連予算以外にFBIはじめとする各省庁の国家安全保障関連予算も全部含めるのだろう。そこで提言内容を戦略国際問題研究センター(CSIS)の国防経費計算ソフトウェアに入力し、提言にある表現(「高い即応性」など)を数字に置き換えると、確かにその予算規模になった。若干低くなるが、他の候補とは一線を画しているのは確かで、クルーズ提言が意図的に数字を低く見積もっているとは言えない。(これだけの仕事をしたクルーズ陣営のスタッフに金星を進呈したい)
総額7,500億ドルというと2017年度用にオバマ政権が設定した予算が6,100億ドルで1,400億ドルも増える計算になる。これは現行の予算規模からみれば大きな増額だ。2012年時点のDoD試算よりさらに500億ドル国防に上乗せすることになる。当時の国防長官ロバート・ゲイツが考えた最低源の要求水準が2011年予算管理法でその後10年にわたり数千億ドル分カットされてしまった。反面、冷戦時代を思えばこの予算規模でも経済は圧迫されないといえる。当時の国防予算はGDP比で6から7パーセントだった。
もちろん問題はこれだけの予算をどうやって確保するかだ。クルーズ議員の提言では「アメリカ経済を5パーセント成長に乗せる」のを「税制、規制改革を通じ、支出を削減し、連邦資産等を売却する」事で実現するとしている。果たしてこの提言が成功するのかはエコノミストの判断に任せたい。
クルーズとバーニー・サンダースが一つ共通している内容がある。ペンタゴン内部の無駄と不要事業の削減だ。両議員は「ペンタゴン監査法案」の共同提案者である。前回のサンダース提言の分析で記しているが、無駄や重複の排除は考え方として健全とはいえ、実施は相当困難だ。真の改革は基地閉鎖(BRAC)で可能だが、総じて一方で不要な事業は他方で必要とするものがあるのが通例で、例として退役軍人向けの健康保険は大盤振る舞いで無駄なのか、国に尽くしてくれた1%の国民に何もしない残り99%が与えるべき恩典なのか。効率を追求し予算を節約することは無駄の排除ではなく何かを交換して実現できるものだ。
共和党候補がおしなべてオバマ政権が一方的に兵力を削減し国防予算を減額してきたと主張しているがこれには抗議すべきだ。近年の大きな削減は2011年予算管理法によるもので、この法案を成立させたのは下院に成立した共和党多数派だ。たしかにオバマ大統領は法案に署名したが、すべては共和党が作り、支援してきたからこそ継続してきたのだ。
ではその他の大統領候補への課題を伝えよう。共和、民主両党の候補者ともに国防政策に関して具体策を提示してほしい。それでこそ陳腐な言葉の羅列ではない真の議論が成立する。今から一年後にはいずれかが大統領になっている。国民ならびに首都の『評論家部隊」には世界で最も強力な軍事力をどうするつもりなのか各候補に聞く権利がある。■
記事を書いたマーク・カンシアンはオバマ政権の予算管理局で国防予算アナリストを務めた経験があり、現在は戦略国際問題研究センターで国防アナリストを務めている


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