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日本の防衛産業が国際市場でプレイヤーになれるか試されている。防衛面の多国間協力を支える産業が真の国際化を迫られている。

 

iStock illustration


CHIBA, Japan — 

インド太平洋地域での中国へのヘッジとして、日米含む多数国が新たな夜明けを迎えており、軍事面で緊密化をめざす防衛協力が進む



言うまでもなく日米両国は第二次世界大戦後、米国が日本に空軍、海軍、海兵隊の基地を設置して以後緊密な関係にある。


しかし、日本は昨年末、自国の防衛でより積極的になることを明記した新文書を発表し、自衛隊予算は今後10年間で10倍になる予想がある。


政府は、新しい軍事技術多数を開発する意向を示し、それを支援するために国内外の請負業者に助けを求める。


日米両国軍はこれまで同盟関係を享受してきたが、両国の防衛産業はそうではない。


在日米国大使館の政治・軍事担当参事官ザッカリー・ハーケンライダーZachary Harkenriderは、最近千葉で開催されたDSEIジャパン展示会で、「国際的防衛企業が日本でパートナーを探すのに適した時期」と述べた。


日本の防衛装備庁の三島茂徳副長官兼最高技術責任者は会議で、日本が米国ならびに「同じ志を持つ同盟国」で協力を模索している分野を挙げた。


防衛省の最優先課題のひとつに、侵略を抑止する防衛システムの開発があり、極超音速機やレイルガンに対抗する統合防空・ミサイル防衛技術があるという。


抑止力に失敗した場合を想定し、日本は攻撃システムのアップグレードを求めており、12式地対艦ミサイルのアップグレード、中距離地対空ミサイル、極超音速兵器、島嶼防衛用の対艦ミサイルなどがある。


また、高エナジーレーザーや高出力マイクロ波放射技術など、ドローン群に対抗する指向性エナジー兵器も求めている。無人システムでは、水中と地上無人装備用のコマンド&コントロール技術を求めている。


新戦略の発表以来、最も注目されている防衛協力プログラムは、第6世代ジェット戦闘機を開発するイギリス、イタリアとの共同作業「グローバル・コンバット・エアー・プログラム」だ。


ハーケンライダー参事官は、日本の新しい国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛予算の増強は、「時代の課題に対応する歴史的な資源と政策の転換」につながると述べた。


しかし、数十年にわたる平和主義的な政策と、安全保障の傘を米国に依存してきた結果、日本の防衛産業はまだ足元を固めらていないと、会議の講演者は述べた。


三菱重工業川崎重工業、東芝など、日本の巨大産業への懸念ではなく、中小企業が多くのイノベーションを提供しても、米国他の相手と提携するツールや国際ビジネスのセンスに欠けていると、講演者は指摘した。


経済産業省製造産業局防衛産業・航空宇宙課の府川秀樹課長は、「中小サプライヤーは、海外取引の実績がない」と指摘する。


府川課長は、「日本の元請企業に部品やサービスを供給し、その元請企業が兵器システムを海外に販売することには長けていても、海外の請負業者と直接取引することになると、多くが迷う」と指摘した。「この関係は、日本市場に向けた一方通行であり、世界市場に向かっていない」。


一つの問題は、輸出規制に関する知識不足だという。デュアルユースアイテムが商用品として輸出できるのか、それとも防衛品として輸出できるのか、しばしば混乱が見られると府川課長は言う。


また、規格問題もある。「日本企業は認証の取得が遅れているため、高品質部品があっても、検討対象にすらならない」(府川)。


米国に本社を置くテレダイン・フリアー・ディフェンスTeledyne FLIR Defenseのアジア太平洋地域営業・事業開発担当シニアディレクター、ロバート・モスは、日本企業が規格に準拠すれば、ビジネスの円滑化で大きな意味を持つと語る。


「標準規格で物事がどのように適合していくのか理解することで、異文化の中であらゆるレベルのビジネス取引がより簡単に、より達成しやすくなる」(モス)。


目指すべき理想形は、米国とオーストラリアの産業関係だとモスは言う。両国は、ライセンスなしで相互取引できる条約を結んでおり、規制によるオーバーヘッドの多くを省略している、とモスは述べた。


「取引はより迅速になり、何が起こっているのか理解しやすくなり、2国間ビジネスがシンプルになります。日本とアメリカ、日本とヨーロッパ諸国、その他の取引したい国との間でも防衛関連物資の取引で標準枠組みができれば、素晴らしいことだ」と語った。


ハーケンライダー参事官は、日本政府は輸出規制の改革を進めており、お役所仕事の削減を模索していると述べた。


「日本の防衛輸出政策の見直しは日本政府に委ねるが、同盟関係を強化し、インド太平洋の平和、自由、安定を維持する人々との関与の強化へつながる政策であれば歓迎する」と述べた。


さらに、異文化の問題もある。モスは「これは両極端な問題だ」と指摘する。


「残念ながら、米国企業特に防衛関連企業は、米政府や国防総省に持ち込むのと同じ規範や考え方で、米国外でビジネスを展開している。日本のような国ではそれは通用しません。インドでもうまくいきませんし、多くの場所で通用しません」。


逆に、日本企業は「アメリカ企業やヨーロッパ企業の思考プロセスや規範を理解する必要がある」という。


文化的規範を理解しないと、「ビジネスを円滑かつ効率的に進めることや、そのビジネス文化に歓迎されることを阻むポイントになる」とも述べた。


早稲田大学経済学部の藤堂康之教授は、ウィルソン・センターのウェブキャストで日米安全保障協力について議論し、「地理的に多様な知識ネットワーク」が国内ネットワークより革新性や生産性が高いことが研究で明らかになったと語った。


「国際協力の成果は国内協力よりもはるかに優れている。残念ながら、日本の国際研究協力は活発ではありません」。


また、同教授の研究によれば、国際的なサプライチェーンが国内サプライチェーンより強固であることが分かった。中国から製造業を引き取り、日本や米国に戻す「オンショアリング」は良い傾向だが、さらに良いのは、信頼できる同盟国間で国際サプライチェーンを構成する、いわゆる「フレンドショアリング」である。


オンショアリングでのトレンドの中心は、コンピュータチップ製造を米国に戻すことだ。


ウィルソン・センターの地球経済学・インド太平洋事業部長でアジア・プログラム副部長の後藤志保子は、経済的関心と国家安全保障上で利益の収束が進み両国がより緊密になる可能性はないかと問題提起した。「それとも、実際には協力の絶頂にあり、これから乖離が大きくなるのか」。


両国の保護主義的な傾向が勝つ可能性もあると後藤は付け加えた。「自国の重要な技術開発を促進する産業政策や、保護主義的な施策が台頭し、同じ志のパートナー同士でも協調に逆行する可能性がある」。


中曽根平和研究所の大澤純上級研究員はウェビナーで、サプライチェーンを強固にするため両国が協力すべきとし、知的財産を盗む中国のハッカーから狙われているサイバーセキュリティも、両国の協力分野だと指摘した。


「日米両国は、国家安全保障と経済活動の基盤である重要インフラを守るため協力すべきです。これらのインフラをサイバー攻撃から守らなければならない」と述べた。


藤堂教授は、日米両国が物資や原材料の中国への依存度を下げる中で、日米防衛協力を活発にする政策提案を3点行った。


まず、日米両政府はオンショアリングより「フレンドショアリング」を推進すべきだ。


2022年5月に来日したジョー・バイデン大統領が提案した「繁栄のためのインド太平洋経済枠組み」The Indo-Pacific Economic Framework for Prosperityは、国際協力とフレンドショアリングを促進する良いきっかけになるという。日本とともに、オーストラリア、ブルネイ・ダルサラーム、フィジー、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムが同枠組みに参加している。


この枠組みでは、各国政府はどのような技術が必要なのか、情報共有する必要がある。それによりビジネスの不確実性が減るという。


また、パートナー国はこのフレームワークを利用しビジネスマッチングもできるという。


また、この枠組みは、国際協力を伴う研究助成の手段にもなり得るという。


藤堂教授は、日本政府が半導体産業に関し米国や台湾との国際協力を支援していることを評価し、「しかし、こうした政策は半導体産業限定ではなく、幅広い産業に提供されるべきだ」と付け加えた。


経済産業省製造産業局は、パートナーシップを積極的に推進する意向だと府川課長は発言し、今秋にワシントンDCで日本の中小企業との交流会を開催する予定だという。


ハーケンライダー参事官は言う:「日本の防衛産業の成長が競争的ではなく、協力的に現れることを期待しています。この地域にはパートナーのニーズが膨大にあり、各国の企業間でウィンウィンのコラボレーションができる余地がたくさん残されています」。■



Topics: International, Global Defense Market


Japan Pushing Its Tech Companies to Partner with U.S. Defense Industry

6/2/2023

By Stew Magnuson


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